京大など スパコンのシステムに不正侵入12月18日 12時24分
京都大学と筑波大学にあるスーパーコンピューターの認証システムがことし10月に相次いで不正侵入され、延べ800人の研究者がスーパーコンピューターを使って計算していた最先端の素粒子物理学や宇宙物理学などの研究データが勝手に消されたり持ち出されたりするおそれがあったことが分かりました。
被害を受けたのは京都大学基礎物理学研究所と筑波大学計算科学研究センターにあるスーパーコンピューターの認証システムで、いずれもことし10月にインターネットから不正侵入されたということです。
京都大学のスーパーコンピューターはおよそ600人、筑波大学のものはおよそ200人の研究者が利用していて、合わせて延べ800人が研究していた最先端の素粒子物理学や宇宙物理学などのデータが勝手に消されたり持ち出されたりするおそれがあったということです。
2つの大学は問題が発覚したあとで被害の調査と安全対策を取り、データが流出するなどした形跡はなかったとしていますが、いずれもシステムで使われていたソフトウエアの欠陥が狙われたということです。
コンピューターを並列につなげて超高速で計算を行うスーパーコンピューターは最先端の科学技術研究や産業競争力の強化に欠かせないとして全国各地の研究機関に設置されていて、文部科学省情報化推進室は2つの大学に対してセキュリティ対策を徹底するよう求めました。
京都大のスーパーコンピューター
今回、不正アクセスを受けた京都大学基礎物理学研究所のスーパーコンピューターは、3年前に導入されたもので、素粒子物理や宇宙物理などさまざまな物理学の計算に幅広く用いられています。
スーパーコンピューターはおよそ600人の研究者が利用しているということで、不正侵入が発覚してからシステムを停止し、セキュリティー強化をしたうえで今月13日に運用を再開しています。
京都大「再発防止に努める」
不正アクセスを受けた京都大学基礎物理学研究所は、「スーパーコンピューターのセキュリティにぜい弱性があったと言わざるをえない。利用者にご迷惑をかけたことを深くおわび申し上げるとともに、今後、セキュリティを高め、再発防止に努めたい」と話しています。
筑波大のスーパーコンピューター
茨城県つくば市にある筑波大学の計算科学研究センターには2台のスーパーコンピューターがあり、このうち「T2K-Tsukuba」と呼ばれるスーパーコンピューターの認証システムが不正侵入されました。
このスーパーコンピューターは、平成20年に運用が開始され、審査に通れば筑波大学以外の研究者もインターネットを通じて利用できます。
現在は素粒子物理学や宇宙物理学、さらに気象学や生命科学まで幅広い分野の研究者、およそ200人が利用しています。
物質を構成する最も基本的な粒子「素粒子」の性質や、宇宙の成り立ちをコンピューターシミュレーションにより明らかにする研究のほか、観測された気象データを基に、スーパーコンピューターを使って台風や局地的な大雨のメカニズムを解明したり予測したりする研究が行われています。
筑波大「初めてのケース」
今回の不正侵入について筑波大学計算科学研究センターの梅村雅之センター長は「センターでは20年間、計算機の開発と運用をしてきたが、こういうケースは初めてで、緊急対策本部を設けて対応した。今後はセキュリティを可能なかぎり最高のレベルに上げられるよう努めていきたい」と話しています。
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