医療法人「徳洲会」グループから5千万円を受け取っていた東京都の猪瀬直樹知事(67)が18日、辞任の意向を周囲に伝えたことが分かった。現金授受の目的や経緯について説明が二転三転し、都議会が百条委員会で追及する構えをみせていた。都知事選は来年1月以降に実施される見通し。

 猪瀬氏は都知事選前の昨年11月6日、徳洲会の徳田虎雄前理事長と面会。同月20日、衆院議員会館で徳田毅衆院議員から5千万円を受け取った。東京地検特捜部が今年9月17日、公職選挙法違反容疑で徳洲会に強制捜査に入った直後の9月25日、徳洲会側に5千万円を返した。

 朝日新聞の報道で一連の経緯が明らかになった11月22日、猪瀬知事は資金提供について「選挙資金ではなく、個人の借り入れだった」と説明。26日には自ら「借用証」を公表した。

 しかし、現金授受について「名目は特段ない」と語るなど一連の経緯を十分説明しなかった。「5千万円はすぐ貸金庫に入れ、手を触れていない」と述べたが、実際は別の貸金庫に移動させていたことなど、虚偽答弁が次々に判明した。

 18日には、虎雄前理事長との面会の際に東京電力病院(新宿区)の取得を目指す考えを伝えられていたのに、都議会では「話題になっていない」と答弁していたことが発覚。都議会議会運営委員会は同日、強い調査権を持つ「百条委員会」の設置を決めていた。

 猪瀬氏は作家として「ミカドの肖像」で1987年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。小泉純一郎元首相の下で道路公団民営化に関わった。07年から副知事を務め、昨年10月に石原慎太郎前知事が辞意を表明すると「後継」に指名された。昨年12月の都知事選では、史上最多の約434万票を獲得して初当選した。