損保会社各社においては反社会的勢力(便宜上ここでは「反社」と、記述する)を排除する動きが10月以降、加速している。
11月21日には損保協会理事会で「反社会勢力の排除に向けた取組みの強化」といった決定がなされた。
弊会では、善良なる被害者救済の立場からもこの決定を撤回するように強く要請してきたが、「ご意見として聞いておく」と、木で鼻をくくった返答に終始してきた。
今般、損保協会に要請文を発送した。文中にもあるように、これを受け取った二宮雅也会長は「反社排除」という決定の危険性を充分に認識した事になる。
今後、不幸なる交通事故の被害者が発生した際に、その責任は二宮会長に帰する。
反社に限らず誰しも事故を起こそうと思って加害者になるものではない。しかし、現代社会では日常において1トン以上の重さの鉄の塊が時速数十キロの速度で、歩行者の横を擦りぬけていくのである。
不幸にして事故が起きる事を想定するからこそ、所有者は任意保険に加入するのである。
車を所有する反社に対して今後の対応策を伝授しておきます。
任意保険に加入する意志を示し加入申込書へ必用事項を記入する事。
その結果、損保会社から拒絶されたという事実を証明するために申込書は常に携行すること。
弊会が発送した「要請書」の写しも一緒に携行する事。
不幸にして事故の加害者となってしまった際は、誠心誠意被害者に謝罪する事。
その上で、自分の意思に反し任意保険に加入できなかったので、満足な賠償をする事ができないと、二点の書類を提示する事。
被害者の怒りの矛先の一端を損保会社に差し向けること。
NOP法人「交通事故後遺症被害者の会」等々を巻き込んで、損保協会と損保会社を社会的に糾弾の矢面に立たせる事。
一般社団法人 日本損害保険協会
二宮雅也会長(日本興亜損保社長)
〒101-8335東京都千代田区神田淡路町2−9
電話:03−3225−1844
要請文
平成25年11月21日、貴理事会における決定、「反社会勢力の排除に向けた取組のみ強化」を即刻撤回することを要請する。
上記、決定の内容としては貴協会に加盟する損保会社においては、貴職が認定するところの反社会勢力の構成員(以下、「反社」と言う)に対しては、自動車任意保険の契約を行わない。すでに契約済みであれば解約を行うというものと理解している。
この決定は日本国憲法第14条 1、すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
以上の条文に違反するものである。
同乗者及び一般通行車両や歩行者など、広くは全日本国民及び外国人居住者・外国人短期滞在者を対象として、万一の事故に際し被害者への救済を目的に車の所有者が任意保険への加入を希望する以上、反社と言えども保険会社が加入を拒むことは損害保険制度の趣旨から、逸脱した許されない行為である。
任意保険は自賠責保険では補償しきれない高額な死亡・後遺障害・傷害保険に加え、被害車両への賠償金も填保されている。
ここは百歩譲って、仮に契約者である反社の所有車両への修理代金等を補償する車両保険が不適用であることは認めるとしても、被害者への死亡・後遺障害・治療・休業補償等、そして被害車両への修理代・休業補償・代車費用等補償の契約が締結されない状態となれば極度の社会不安と混乱を惹起せしめる結果となることを警告する。
反社が所有・運転する車両が加害者となり、第三者に被害を与えたと想定する。貴職の考えとしては、加害者である反社が被害者に対し直接賠償を行えば良い、との見解である。
しかしながら、現実には保険加入と同等の補償を行う経済的余裕があるとは限らない。経済的に不安定な状態にあれば、賠償する意思はあったとしても、賠償金を支払う事は不可能である。
被害者としては、保険会社が介在しない以上、直接に反社である加害車両所有者と交渉を持つことになる。
支払交渉が難航すれば裁判所に提訴することになるが、軽微な物損事故において手付金だけで50万円からの金員を支払い、代理人弁護士を選任して民事裁判を起こす事は現実的ではない。
民事裁判によって反社である加害者に支払命令が発せられたとしても、財力がなければ賠償は実行されない訳であり、結果としては被害者が泣き寝入りすることになる。
また、多額の賠償請求が降り掛かることを恐れ、事故現場から逃走する恐れもある。
貴職は、弊会がこの要請文を社会に公表する重要性を思い知るべきである。
貴職の決定によって、上述の如き日本社会には不安と混乱が生じるのである。
配達証明郵便を以って、貴職に警告しているのであるから、重大な結果が生じた際に、「知らなかった」「そういう事態を想定していなかった」とは、言えないのである。
本要請文は今後、車を所有する反社においてその存在を認知されることとなる。任意保険への加入を断わられた反社が交通事故の加害者となって賠償責任を追及された際には、貴職が社会的責任を負うこととなるのである。
賠償請求を受けられなかった被害者から責任を追及される事になるのである。
断っておくが弊会は反社の代弁者でも代理人でもない。
貴職が「反社排除」というお題目を以って、本来の損保会社の使命を忘れ、社会不安を助長し、不幸な被害者を創出するといった反社会的行為を糾弾するものである。
平成4年に施行された所謂・暴力団新法以来、昨今の暴排条例に至り、社会の一定の枠からはみ出した人々および団体への差別・排除が著しく加速している現状は認識している。
そういう流れの中でディーラー系販売店が反社に対し新車の販売を拒絶していることも認識している。これに対して反社は独立系ディーラーから購入するなり、中古車を購入することで代替措置を講ずることは可能となる。
しかしながら善良なる第三者を救済するための任意保険への加入を全ての損保会社が拒絶したのでは、車を運転するな、所有するなと言っているも同然である。
サウナ風呂や健康ランドといった入浴施設では身体に刺青・タトーを入れた者は入場禁止となる。しかし、公衆浴場(銭湯)では分け隔てなく入湯できる。
これは銭湯はレジャー施設と違い、公衆衛生上万人に必用不可欠な施設だからである。
人間である以上、一般道を歩いたり、電車等公共交通機関を利用し他人と接する機会はある。刺青を入れていることで、入浴を拒まれたのでは、臭気や汚れ又は疫病・伝染病の蔓延により周りにいる人間が迷惑を蒙るからである。
これは自動車任意保険加入にも通じることである。
善良なる第三者である日本国民等の安全を守り、日本国の治安と安寧を堅持するためにも、「反社会的勢力の排除に向けた取組みの強化」を撤回することを強く要請する。
平成25年12月13日
政経調査会 代表 槇 泰智