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2013-11-17 消費税増税使途にみる財政危機とデフレ このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 来年4月、消費税が5%から8%に引き上げられます。
安倍首相はその使途を社会保障費に限定すると約束しました。
ただ、実際の使途をよくみると、財務省財政危機を演出しているに過ぎないことや、日本の消費税はなぜ日本をデフレに導くかがみえてきます。


安倍首相の約束
安倍首相消費税を8%に上げる決断を下すにあたり、消費税の使途は、「社会保障に全額使う」と明言しました。

    安倍首相が4月引き上げ正式表明 「最後の最後まで悩んだ」  産経ニュース2013年10月1日


 ❏消費税増税による負担増は8.1兆円
 報道によれば、消費税が8%に引き上げられることにより、家計の負担増は6.0兆円、企業の負担増は2.1兆円、合計8.1兆円に上るとされています。

 消費税8% 見えぬ賃上げ 低所得者負担重く Sankei Express 2013年10月2日


❏実際社会保障費に回るのは1.6兆円
安倍首相消費税増税を全額社会保障費に使う、と明言しましたが、実際には同額社会保障費を増額する訳ではありません。高齢化により社会保障費は毎年1兆円の自然増がありますが、これは増税してもしなくても一緒です。*1

実際に消費税増税に伴って増額されるのは増税額の1/5とされています。つまり3%増税段階では1.6兆円に過ぎません。

  財務省 社会保障税の一体改革 資料4 4ページ


消費税率が増えれば輸出戻し税も増える
消費税の一部は、輸出企業に実質輸出奨励金となる輸出戻し税として支払われます。これは輸出比率の高い企業では税支払額を超えますので、例えばトヨタなどはまだ消費税は実質的には払ったことがなく、貰う立場です。
輸出戻し税消費税5%で総額3兆円とされていますので、消費税が更に3%増えれば戻し税も1.8兆円増えます。
  

 戻し税 −どこか腑に落ちない輸出企業への消費税の還付  President Online 2013年2月4日号


❏ひっそり報道された公務員給与引上げ
国家公務員給与復興財源を捻出するため、12年度から2年間、特例として平均7.8%減額されていました。報道では年間約3000億円の財源を生み出していたとされています。その公務員給与の引下げが予定通り2年で打ち切られ、元通り給与が上がることが決まりました。

  国家公務員給与の特例減額、14年度は延長せず  日本経済新聞 2014年11月7日

国家公務員給与に限定すれば、財源への負担増は3000億円に過ぎません。
ただ、国家公務員64万人の給与は、間接的には地方公務員290万人の給与や、その他公務員に準ずる立場の272万人の給与の基準ともなりますので、実質的には推定2.4兆円の負担増となります。*2

❏残りが国債費に消える
ここまでに述べてきた実際の使途に使われなかった2.3兆円は国債費に消えると考えられます。

消える、と表現しているのは、国の債務を無理に返済することが日本経済には全くプラスの意味がないことによります。
財政再建にも全く役には立っておらず、消費税により、総税収は却って減っています。

自ら名目GDPを減らす不思議の国・日本 - シェイブテイル日記 自ら名目GDPを減らす不思議の国・日本 - シェイブテイル日記

以上を図示すれば図表1のようになります。

安倍首相消費税全額を社会保障費に回すというが実際は1/5だけ
f:id:shavetail1:20131117135021j:image:w420
図表1 消費税増税使途
データ出所:本文参照。
安倍首相は「想定使途」のように全額社会保障費に使うと明言したが、
現実には「実際使途」のように社会保障費拡充には1/5しか使われない。

消費税の使途を全額社会保障費に回す、というのは財務省による言葉のトリックに過ぎません。
残念ながら、そこが分かっていない安倍首相はトリックに引っかかって誤った決断をしてしまいました。

また、財務省が「日本の財政状況が危機的」といいながら、実際はどう考えているかを示すのが、公務員等の人件費の大幅増額です。 破綻しかかっているどこの組織が、元々他所より高い給与を更に大幅増額などするでしょうか。*3
要するに財務省財政問題を演出しているに過ぎず、実際には全く問題にはしていないからこそお手盛り増額できるのです。

社会保障の充実策部分は、税金を支払った国民に還付されます。
しかしそれ以外の、輸出企業の内部留保に消えてしまう輸出戻し税高所得者で消費性向が小さい公務員給与の更なる増額、国債費と、日本の名目GDPにプラスとなりにくい使途が並んでおり、なぜ日本の消費税が日本をデフレに導くかも分かるでしょう。

*1:いわゆる埋没費用

*2:筆者計算根拠:労働運動総合研究所資料によれば、公務員等626万人の年収累計が34.7兆円。同資料から国家公務員の一人当たり平均給与は600万円、財務省資料から人件費は同900万円と見られることから、公務員等の人件費総額は50.7兆円。国家公務員の特例減額幅は対人件費△4.7%とかんがえられることから、特例減額が公務員等全体に与える影響は50.7兆円✕△4.7%=2.4兆円。

*3民間給与平均が400万円、公務員平均給与は600万円、人件費としては一人当たり900万円。

janclojanclo 2013/11/17 20:51 http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0IC03J20131022
経済をインフレ方向に向けるためには、企業の資金需要を増やすべきですが、円安によって製造業の大企業向けは改善しても、中堅・中小企業向けは悪化しているのが現状です。
中堅・中小企業が借入を増やさないのは、投資リスクを恐れているからで、彼らのリスクを減らすためにも、政府は彼らの収益性や安全性を改善させる政策(長期的な需要創出策・信用保証枠の拡大など)を行うべきです。

消費税という名の売上税の税率を上げていては、企業のリスク回避志向を強めるだけです。

また、公務員への賃金アップにしても、家計は基本的に(特に日本で)は、企業・政府と比べて大きな借入をしないですから、そのお金を企業へ向けた方が、信用創造が促され、インフレへ向きやすくなるはずです。


>これは輸出比率の高い企業では税支払額を超えますので、例えばトヨタなどはまだ消費税は実質的には払ったことがなく、貰う立場です。

輸出戻し税ですが、輸出先では、商品に消費税をその国の税率分(ドイツなら19%、イギリスなら20%)上乗せして販売するはずです。
そして、その国の消費者から預かった消費税をその国に納めるわけですから、負担していないわけではないのではないでしょうか?

伊勢の水源伊勢の水源 2013/11/18 08:14 原稿5%の消費税でも、輸出企業への戻し税は総額3兆円だそうです。それがこんどの8%でそうがく4.8兆円になります。これらは輸出大企業にとって、下請けに転嫁できる或はしてきた金額ですから、大変に消費税はおいしいのですね。

▽・x・▽▽・x・▽ 2013/11/18 17:02 結局、低所得者を支援したところで、国として成長出来ないから、外国からお金を貰える企業を支援しよう。ってことなのかなと理解しました。
中小企業からみれば、残念ですが、国の意思としては、そう進んでいるんですね。

janclojanclo 2013/11/18 21:36 伊勢の水源 さん
>下請けに転嫁できる或はしてきた
以前はそう言ったこともあったのでしょうが、今後はそのような行為は取締の対象です。詳しくは以下のサイトをご覧ください。
○消費税転嫁対策特別措置法
http://www.cao.go.jp/tenkataisaku/

どうもこの「輸出戻し税」、共産党発の企業陰謀論(大企業は輸出戻し税で利益を得ている)のような気がしますが、大企業が消費税増税に賛成している理由は、財務省の天下りが多いからではないでしょうか?

伊勢の水源伊勢の水源 2013/11/18 23:48 janclo さま、

○消費税転嫁対策特別措置法
http://www.cao.go.jp/tenkataisaku/
↑これはH25年10月1日施行です。上手く機能すれば良いですね。
ところで、2010年の輸出戻し税総額は、政府予算書によれば3.3兆円とのこと。一方、2010年度輸出総額は、67.4兆円です。という事は輸出額の5%の戻し税です。これは政府による輸出大企業へのかなりの大盤振る舞いだと思います。
消費税の仕組み。→http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/koho/kurashi/html/01_3.htm

janclojanclo 2013/11/19 01:26 伊勢の水源 さま

>政府による輸出大企業へのかなりの大盤振る舞いだと思います。

しかし、輸出先ではその国の税率分課税されるわけですから、税還付がなければ、二重課税となりませんか?
取引でいえば、仕入80、売上100、国内課税5%、海外課税20%で、税還付のある場合(A)と無い場合(A')を比較すると

仕入 外国売上 還付 外国売上時の課税 課税額(国内+海外)
A 80+4 100 -4 20 20(0+20)
A' 80+4 100 20 24(4+20)

となり、海外へ売り上げた場合、国内と海外で二重課税となります。

また、JETROによると、この措置は、以下のように国際的に認められている慣例のようです。
http://www.jetro.go.jp/world/japan/qa/export_03/04J-120102
>輸出品の付加価値税は、世界貿易機関(World Trade Organization:WTO)の
>加盟国間で、輸出入の両国での二重課税を避けるため、一般的には輸入国で課
>税するものと定められています(仕向地主義)。

従って、輸出戻し税は輸出大企業への大盤振る舞いが目的ではなく、二重課税を避ける為のものだと思います。

また、仮に輸出品の課税を輸出地主義で行えば、企業は税率の低い国を経由させようとし、法人税の問題と同じような現象が生じてしまうのではないでしょうか?
(この場合は、日本が有利になると思います。)

janclojanclo 2013/11/19 01:28 あと、先ほどのA社に納品している会社をB社として、消費税をそれぞれ、5%時(B)と8%時(B')で比較すると
仕入 売上 納付する税 利益
B 50+2.5 80+4 1.5(4-2.5) 30[{(80+4)-(50+2.5)}-納付する税]
B' 50+4 80+6.4 2.4(6.4-4) 30[{(80+6.4)-(50+4)}-納付する税]
となり、納付する税だけが変わり、利益は不変です。
また、B社が輸入業者であっても、税は仕向地主義なので、上のやり取りは不変です。
さらに言えば、A社に還付があろうとなかろうと、B社にとっては、納品時に代金がきちんと支払われていれば問題はないです。

結局、この輸出戻し税の問題は、企業のパワハラ問題であると、共産党も主張を変えてしまいました。
結果、薄利多売的な産業が多い日本には不利な税制である、という本来の問題から逸れてしまい、法改正で対応しましたよ、と増税推進派を勢いづけてしまったのです。
また、派遣などの外注費は課税で、人件費は非課税という問題も、納税額は変わるが、利益は不変だろ?、と論破されてしまったわけです。
参照:http://agora-web.jp/archives/1448626.html

消費税の問題とは、「"売上-仕入"がプラスなら、赤字でも"現金で納税"」であり、企業に納税用の現金積立を促し、信用創造能力を弱める愚策なのです。

実際、以下のサイトの手元流動性/流動負債のグラフで中小企業の上昇傾向であることからも、そういった傾向は読み取れます。
(もちろん上昇の背景には、金融危機や金融庁の検査強化などもありますが)
http://blogos.com/article/37299/

伊勢の水源伊勢の水源 2013/11/19 07:24 janclo さま、

http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/koho/kurashi/html/image/01_4.jpg
↑この図で行きますと輸出業者とは小売業者に当たりますね。という事は輸出なら、輸出売り上げ額に対し納税行為を1円もしていない消費税ということになります。払ってもいない輸出戻し税を受け取っていることになりませんか?
だからもし、消費税転嫁対策をするなら、一般消費者は別として、売る側でなく、購入側が政府に対し消費税を払うようにすべきだと思いますが如何でしょうか?

伊勢の水源伊勢の水源 2013/11/19 11:19 結局輸出戻し税の問題は二重課税輸出競争力のこともあり、消費税増額分を大企業が下請けに転嫁させないようにするにはどうすればよいかに尽きそう。下請けが利益を出せなければ税収も伸びないわけですから。

janclo janclo 2013/11/19 19:18 追記。
消費税の問題点として、国内総支出が一定である場合、増税分国民の可処分所得が減少します。
利益率の高い企業であれば、売上単価を下げればよいですが、利益率が低い、もしくはマイナスであれば、労働力(仕事の発注や人員、給与)削減の必要がでてきます。


伊勢の水源 さま

小売業者は外国の業者または人に売った場合、同率の税ならば、その図の通りとなります。
どういうことかというと、小売業者の図を「売上」と「仕入れ」に分離すればわかります。

つまり、図の「仕入れ」側は国内、「売上」側は海外です。
国内と海外の税率が同じという前提のもと、以下で計算していきます。

まず、国内に限定すれば、仮受消費税の?がなくなります。
この時、納付税額は−?、つまり−3500となるわけです。
「−」という事は、還付、つまり戻し税となるわけです。

しかし、外国で売り上げた場合、仮受消費税の?が発生します。
この時、納付税額は?、つまり5000となるわけです。

これらを通算すれば、-3500+5000=1500。結局納税額は変わらないという事になるのです。

これは、消費税は最終消費者のみが負担するのであって、中間業者は、預かった消費税と支払った消費税の差額を納税するだけだからです。
つまり、輸出業者は消費者ではなく、中間業者なので、還付を受けているのです。

>消費税転嫁対策をするなら、一般消費者は別として、売る側でなく、購入側が政府に対し消費税を払うようにすべきだと思いますが如何でしょうか?

その方法はいいと思います。ただ、還付の場合、つまり、「売上-仕入」がマイナスの場合、どうするのかといった事態にどう対応するのか、といった課題もでてきそうです。

janclo janclo 2013/11/19 19:29 文字化けしたようなので修正します。


まず、国内に限定すれば、仮払い消費税[2]がなくなります。
この時、納付税額は−[2]、つまり−3500となるわけです。
「−」という事は、還付、つまり戻し税となるわけです。

しかし、外国で売り上げた場合、仮受消費税の[3]が発生します。
この時、納付税額は[3]、つまり5000となるわけです。

伊勢の水源伊勢の水源 2013/11/20 11:47 janclo さま

「消費税の仕組み」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/koho/kurashi/html/01_3.htm

この図だと、輸出業者は卸売業者と見るのが妥当のようです。
そうならば輸出業者は、輸出戻し税のおかげで無税の商品を売ることが出来ることになりますが、輸出先の国の競合商品は税金を払っているだろうから、輸出戻し税を貰った企業のほうが価格的に有利になりそうですが、この点はどのように考えられますか?

janclojanclo 2013/11/20 23:51 伊勢の水源 さま

卸売業者にしても、小売業者の時の説明と変わりません。
輸出戻し税は、上記で説明した通り、国内販売では無くなった結果、マイナスが発生した為、還付しているだけなのです。

輸出業者が仮に、自国で製造したものについて、還付を受けていたとしても、販売国が外国であれば、「仕入税額控除」はありません。
貴殿の示された「消費税の仕組み」の製造業者と同じ位置になるだけです。
従って、輸出戻し税で輸出企業がメリットを得ることはないのです。

また、輸出先の国の競合商品についても、価格が同じなら、消費者は同じ消費税を支払い、企業はその消費税を納税しています。
輸出戻し税によって、「商品原価」が変動するようなことはないのです。