以前からご指摘受けていました字下げや「…。」について、先日まとめて修正しました。
また誤字脱字等ありましたら、ご指摘下さい。
ちょっと短いんですが……次話早めにアップします。
俺は仕事終わりに馬車に揺られ、騎士団の駐屯地に向かっていた。
「……あれ、まだ着いてないよな」
急に馬車が止まった。
「トムさん、どうしたんですか?」
「ああ、商隊の荷物で道が塞がっていてね」
トムさんは、シュテルン家専属の御者だ。いつも俺の送り迎えをしてくれている。
俺は小窓から顔を出して、前方を確認した。
荷物が横倒しになっていて、しばらく通れそうも無い。
トムさんは、回り道する為に馬首を方向転換させようとしたが、すぐ後ろに別の馬車が詰めてきしまった。
その時、馬が突然暴れ出した。
「どう、どう! こら、落ち着け!」
「うわ、わ、わ」
荷台が激しく揺れ、俺は荷台の床にへばりついた。
トムさんがなだめているが、馬は言う事をきかない。
「あ、君! 危ないから下がって!」
「大丈夫だ! よしよし、落ち着け!」
聞いた事のある声が響き、しばらくして馬は落ち着きを取り戻した。俺は馬車を降りて、声の主を確認する。
「やっぱり、アリスさん!」
「ノアじゃないか。 大丈夫だったか?」
俺は頷いた。
なぜ彼女がここに?
あの事件の後、とにかく一度実家に戻ると言っていたはずなのに。
「お知り合いの冒険者ですか? いや、助かりました」
俺は馬車の中で何があったのか分からなかったので、トムさんが説明してくれた。
足元に突然何かが転がって来て、馬は驚いてしまったようだ。
トムさんが馬をなだめ様としていた所に、アリスさんが来て、あっという間に大人しくさせてしまったらしい。
「そうだったんですか。 アリスさん、ありがとうございました」
「馬の世話は昔からしていたから、大した事じゃない。 それよりノア、私の事はアリスと呼んでくれ」
「はい、分かりました」
「かしこまった話し方も止めてくれないか? 私の方こそ、君に返しきれない恩がある」
あれは俺だけの力で解決した訳ではないし、最終的に頑張ったのは彼女である。そう伝えたが、アリスの言い分は変わらなかった。
結構頑固だよな。
「これが転がって来たみたいだ」
アリスが馬の足元から拾い上げたのは、商隊の積み荷の一部のようだった。
「先程積み荷が崩れた時、私もすぐ側にいたんだ。 危うく下敷きになる所だった」
危ないな。
きっと持ち前の反射神経で回避したに違いない。無事で何よりだ。
しかし、何で突然荷物が転がって来たんだ?
荷物を取りに来た商人の部下が、申し訳なさそうに頭を下げた。
商品を放り投げたりはしない。しかし、確かに自分達の荷物であるし、道を塞いでしまった事も重ねて申し訳ないと謝られた。
アリスさんが事故に巻き込まれかけた後、商人から話を聞いたそうだが、詳しい事は分からなかった。
積み荷を縛る紐は、強度や緩みを何度も確認しているはずなのだが、と本人達も首を傾げていたと言う。
「悪い人達では無いみたいなんだけどなぁ」
「ああ。 その時も、とても丁寧に謝ってもらったよ」
特に怪我人はいなかったようだ。
俺はアリスに、何となく王都にいる理由を聞いてみた。
「実は、旅費を盗られてな。 一文無しになったんだ」
「盗られたって、一体どうして?」
アリスは旅の準備を整え、門に向かっていた。
彼女は道端に倒れ込んだ少女に気をとられ、手持ちの荷物を地面に置いて介抱に向かったらしい。
その隙に荷物を足の速い少年に盗まれたと話した。
「その倒れていた少女もグルだったよ。 追いかける気にならなくて、諦めたんだ」
幸い、ギルドカードや必要最低限大事な物は身に付けていたらしいが、現金化していた旅費や消耗品を失ったそうだ。
何というか、運が悪い。
弟を亡くしたり、詐欺にあったり、旅費を盗まれて帰れなくなったり。
「人が善いと言うか、不運と言うか……」
苦笑いした俺に、少し恥ずかしそうな、諦めたような顔でアリスさんは言った。
「昔からよく言われる」
そうこう話している内に、とりあえず積み荷は道の脇に寄せられ、馬車が通れる道が出来た。
「あれ、ノアじゃん!」
「ノアさん、こんにちはっス!」
後ろから声を掛けてきたのは、いつもの見習い三人組だった。見回りからの帰りらしい。
彼らがいるなら、歩いて駐屯地まで向かおう。アリスも騎士団を見学してみたいと言う。
俺はトムさんに、先に行って下さいと頼んだ。
フランが早速アリスに声を掛けている。と言うか、挨拶もそこそこに肩に手を回して、叩き落とされた。
「馴れ馴れしい」
「何だよ堅い野郎だな。 ノアの友達なら俺の友達だろ?」
「フラン、アリスは女性だ!」
そう言うと、フランだけで無く、他の二人も驚いていた。
確かに顔は中性的だし、旅装束で体のラインは見えないが。
一度知ると女性にしか見えないので忘れそうになるが、半年の間誰にも女性である事を悟られなかったのだ。パッと見た感じだけだと、彼女は男性の冒険者に見える様だ。
謝り倒すフランと、気にするなと言うアリスを連れて、俺達は駐屯地に向かって歩き出した。
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