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短いですね。元からですけど!
王都編は時系列そのままに少しずつ進行するので、改訂する時に多少まとめます。
第三章【騎士団編】
訓練場

 次の日の朝、トリスタンと大広間で顔を合わせる。

「おはよう」

「ああ」

 昨日の事は気にしていないのだろうか。無反応である。
 本当に照れ隠しだったのか?

 朝食を二人きりで頂く。
 トリスタンの妹は、体調等を理由にいつも自室でとるらしい。と言うことは、トリスタンはいつも一人で食べているのか。この豪勢な食事を。

 俺の場合家族はいない。
 しかし、宿舎に住んでいた時は食堂に行けば誰かがいた。
 城にいた頃も、おじさんは皆で食事するのが好きだったから、孤独感はあまり感じた事は無い。
 貴族と一口に言っても食事のとり方ひとつ違う。
 トリスタンが常に無表情なのも、こういう環境が関係してそうだな。

 今日はメンシス騎士団の駐屯地を見学させてもらい、午後は二の郭を見て回る予定である。
 トリスタンに、堂々と見学なんてして大丈夫なのかと聞いた。
 騎士団には、貴族の子弟がたまに見学に訪れるそうだ。
 中には、騎士見習いもいるので、騎士団以外の者がいても訓練に支障は無いとトリスタンは言った。
 トリスタンとだけしか接触しないでいる訳にもいかないし、一度ちゃんと紹介して貰った方がいいのかな。

 駐屯地に着くと、既に若い兵士達が走り込みを行っていた。
 上半身ほぼ裸みたいなやつ、タンクトップ一枚のやつ、キッチリ着込んでいるやつ、タイプは色々いる。
 何にしろ、男ばかりでムサい光景である。
 これは参加自由の自主訓練らしい。
 非番の者から、これから警備の勤めに向かう者もいると言う。
 遠征組は、今日は非番になっているらしいが、チラホラ見知った顔がある。熱心だな。
一日でも動かないと、体が鈍るのだろうか。

 今まさに訓練場に入ってきて、トリスタンの姿に気付き、ピシリと固まったやつもいる。
水色の髪をしている。すごく目立つな。
 団長がここに顔を出すのが珍しいとかか?

「団長、おはようございます。 ノア君もおはようさん」

 目立つ髪の男の後ろから現れたバルド副団長が、その男の首根っこをを引っ張っりながらこちらに向かって来た。

「ああ」

「おはようございます」

 水色の彼、苦しそうだけど、大丈夫か?

「ほら、ソル。 お前も団長と団長のご友人に挨拶しろ」

「え! 団長の友人?」

 そこかよ!
 バルドが同じ事を言いながら、ソルと呼ばれた水色の彼の頭をはたいた。
 ソルは、凄い衝撃を受けてよろめいている。はたいたってレベルじゃない。
 ソルはやっと団長に向き直り、挨拶をした後、こちらに顔を向けた。

「初めまして。 ノア・イグニス・エセックスと言います。 今日は訓練を見学させて貰いに来ました」

「ええ、エセックス?」

 またバルドにしばかれている。
 短い水色の髪を掻きながら、こちらにペコリと頭を下げた。

「自分は、ソル・ケラーと言います」

「自主訓練ですか?」

「は、はい。 今日は非番で、他にする事も無いので……」

 正直すぎる気もするが、真面目でいいやつそうだな。

「ノア君、こいつを案内役に付けるから、午後は街を見て回るといい」

「えええ! 俺ですか?」

「嫌か」

 トリスタンの一言に、ソルが固まる。
 騎士団のツートップに言われたら断れないだろうな。
 ソルには申し訳ないが、半日付き合ってもらおう。

「昨日王都に着いたばかりで、全く勝手が分からないんです。 案内お願いできますか?」

「は、はい! お任せ下さい!」

 良かった。
 さすが副団長だな。一人でフラフラもしにくいし、どうしようかと思っていたが。
 バルドのさり気ない気遣いにお礼を言うと、気にしなさんな、と豪快に笑った。


「全員、集合しろ!」

 バルド副団長の掛け声で、訓練場にいた兵士達が集まってくる。

「今日はお客人がいるから、皆気合い入れて訓練する様に。」

 バルドに促され、俺は先程ソルにした様に自己紹介をした。

「名前で分かるだろうが、ノア君はエセックス卿の身内だ。 既に知っている者もいるだろう。」

 遠征組が頷いた。

「わけあって、団長の屋敷に留まる事になった。 これからも、こちらに顔を出す事があるだろう。 ここにいない者に説明しとけよ!」

「「「はい!」」」


 おお、見事に揃った返事だ。
 これで終わりかと思ったが、バルドがトリスタンをチラリと見た。

「ノアは私の友人だ。 何か困っている事があれば助力してやれ」

 一瞬の沈黙の後、イエッサーみたいな返事が兵士達から帰ってきた。
 ソルの反応から見て、トリスタンは普段、友人とか言わない人なんだろうな。
 薄々感じてはいたが、先王もなかなか無茶な設定をする。

 一時解散して、兵士達は訓練に戻った。
 トリスタンはこれから城へ向かい、遠征の報告を行うそうだ。
 俺はと言うと、ソルとソルの友人二人に囲まれていた。

「ソル、お前案内役頼まれたんだって?」

「お前一人で大丈夫か?」

「うっ……」

 なんだ。不安なのか。
 ソルは微妙な顔をしている。
 二人の男が、それぞれ自己紹介してくれた。
 背の高い赤毛がフランで、がっしりした体つきの金髪がジェラード。
 ソルも含め、三人共騎士見習いという立場らしい。

「こいつに案内して貰っても、つまんないですよ?」

「まあ、旨い飯屋も知らないだろうしなぁ」

「ううう……」

 チクチク言われて、ソルが情けない顔をしている。
 この二人はソルの頼りない部分が気になって、なんとなくフォローしてくれているんだろうな。

「ならお前達もついて行け!」

 どこからかバルドが現れて、フランとジェラードの肩を叩く。
 この人体デカいのに、気配を全然感じなかったんだが。驚いた。

「了解です副団長!」

「任せて下さい!」

 二人は大きな声で快諾した。
 思っていたより騒がしい午後になりそうである。

2013/04/23 修正


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