短いですね。元からですけど!
王都編は時系列そのままに少しずつ進行するので、改訂する時に多少まとめます。
次の日の朝、トリスタンと大広間で顔を合わせる。
「おはよう」
「ああ」
昨日の事は気にしていないのだろうか。無反応である。
本当に照れ隠しだったのか?
朝食を二人きりで頂く。
トリスタンの妹は、体調等を理由にいつも自室でとるらしい。と言うことは、トリスタンはいつも一人で食べているのか。この豪勢な食事を。
俺の場合家族はいない。
しかし、宿舎に住んでいた時は食堂に行けば誰かがいた。
城にいた頃も、おじさんは皆で食事するのが好きだったから、孤独感はあまり感じた事は無い。
貴族と一口に言っても食事のとり方ひとつ違う。
トリスタンが常に無表情なのも、こういう環境が関係してそうだな。
今日はメンシス騎士団の駐屯地を見学させてもらい、午後は二の郭を見て回る予定である。
トリスタンに、堂々と見学なんてして大丈夫なのかと聞いた。
騎士団には、貴族の子弟がたまに見学に訪れるそうだ。
中には、騎士見習いもいるので、騎士団以外の者がいても訓練に支障は無いとトリスタンは言った。
トリスタンとだけしか接触しないでいる訳にもいかないし、一度ちゃんと紹介して貰った方がいいのかな。
駐屯地に着くと、既に若い兵士達が走り込みを行っていた。
上半身ほぼ裸みたいなやつ、タンクトップ一枚のやつ、キッチリ着込んでいるやつ、タイプは色々いる。
何にしろ、男ばかりでムサい光景である。
これは参加自由の自主訓練らしい。
非番の者から、これから警備の勤めに向かう者もいると言う。
遠征組は、今日は非番になっているらしいが、チラホラ見知った顔がある。熱心だな。
一日でも動かないと、体が鈍るのだろうか。
今まさに訓練場に入ってきて、トリスタンの姿に気付き、ピシリと固まったやつもいる。
水色の髪をしている。すごく目立つな。
団長がここに顔を出すのが珍しいとかか?
「団長、おはようございます。 ノア君もおはようさん」
目立つ髪の男の後ろから現れたバルド副団長が、その男の首根っこをを引っ張っりながらこちらに向かって来た。
「ああ」
「おはようございます」
水色の彼、苦しそうだけど、大丈夫か?
「ほら、ソル。 お前も団長と団長のご友人に挨拶しろ」
「え! 団長の友人?」
そこかよ!
バルドが同じ事を言いながら、ソルと呼ばれた水色の彼の頭をはたいた。
ソルは、凄い衝撃を受けてよろめいている。はたいたってレベルじゃない。
ソルはやっと団長に向き直り、挨拶をした後、こちらに顔を向けた。
「初めまして。 ノア・イグニス・エセックスと言います。 今日は訓練を見学させて貰いに来ました」
「ええ、エセックス?」
またバルドにしばかれている。
短い水色の髪を掻きながら、こちらにペコリと頭を下げた。
「自分は、ソル・ケラーと言います」
「自主訓練ですか?」
「は、はい。 今日は非番で、他にする事も無いので……」
正直すぎる気もするが、真面目でいいやつそうだな。
「ノア君、こいつを案内役に付けるから、午後は街を見て回るといい」
「えええ! 俺ですか?」
「嫌か」
トリスタンの一言に、ソルが固まる。
騎士団のツートップに言われたら断れないだろうな。
ソルには申し訳ないが、半日付き合ってもらおう。
「昨日王都に着いたばかりで、全く勝手が分からないんです。 案内お願いできますか?」
「は、はい! お任せ下さい!」
良かった。
さすが副団長だな。一人でフラフラもしにくいし、どうしようかと思っていたが。
バルドのさり気ない気遣いにお礼を言うと、気にしなさんな、と豪快に笑った。
「全員、集合しろ!」
バルド副団長の掛け声で、訓練場にいた兵士達が集まってくる。
「今日はお客人がいるから、皆気合い入れて訓練する様に。」
バルドに促され、俺は先程ソルにした様に自己紹介をした。
「名前で分かるだろうが、ノア君はエセックス卿の身内だ。 既に知っている者もいるだろう。」
遠征組が頷いた。
「わけあって、団長の屋敷に留まる事になった。 これからも、こちらに顔を出す事があるだろう。 ここにいない者に説明しとけよ!」
「「「はい!」」」
おお、見事に揃った返事だ。
これで終わりかと思ったが、バルドがトリスタンをチラリと見た。
「ノアは私の友人だ。 何か困っている事があれば助力してやれ」
一瞬の沈黙の後、イエッサーみたいな返事が兵士達から帰ってきた。
ソルの反応から見て、トリスタンは普段、友人とか言わない人なんだろうな。
薄々感じてはいたが、先王もなかなか無茶な設定をする。
一時解散して、兵士達は訓練に戻った。
トリスタンはこれから城へ向かい、遠征の報告を行うそうだ。
俺はと言うと、ソルとソルの友人二人に囲まれていた。
「ソル、お前案内役頼まれたんだって?」
「お前一人で大丈夫か?」
「うっ……」
なんだ。不安なのか。
ソルは微妙な顔をしている。
二人の男が、それぞれ自己紹介してくれた。
背の高い赤毛がフランで、がっしりした体つきの金髪がジェラード。
ソルも含め、三人共騎士見習いという立場らしい。
「こいつに案内して貰っても、つまんないですよ?」
「まあ、旨い飯屋も知らないだろうしなぁ」
「ううう……」
チクチク言われて、ソルが情けない顔をしている。
この二人はソルの頼りない部分が気になって、なんとなくフォローしてくれているんだろうな。
「ならお前達もついて行け!」
どこからかバルドが現れて、フランとジェラードの肩を叩く。
この人体デカいのに、気配を全然感じなかったんだが。驚いた。
「了解です副団長!」
「任せて下さい!」
二人は大きな声で快諾した。
思っていたより騒がしい午後になりそうである。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。