ソニー:ヒットは黒子役-アップル、サムスンスマホに電子の目
(第5段落の世界総出荷量を39億個に訂正します)
8月29日(ブルームバーグ):ソニー には今、大ヒット中の製品がある。ライバルの米アップル や、韓国のサムスン などがこぞって仕入れている。
その正体はウォークマンでもプレイステーションでもない。タブレットやスマートフォン(多機能携帯電話)に搭載されるカメラで電子の目の役割を果たすCMOSイメージセンサーだ。SMBC日興証券の白石幸毅アナリストによると、アップルの「アイフォーン5」「アイフォーン4S」や、韓国サムスンの主要モデル「ギャラクシーS4」がソニー製CMOSセンサーを使用している。
平井一夫社長は、エレクトロニクス事業の再生を最優先課題に挙げた上、イメージセンサーを含むイメージ関連事業を重点領域の一つと位置付けている。広報担当の竹田将人氏によると、CMOSセンサーの8月の生産能力は前年比で4割増えており、CCDセンサーを含むイメージセンサー全体は生産の8割が外販向けという。
ドイツ証券の中根康夫アナリストは、ソニーの4-6月期のデバイス事業の営業利益の大半がCMOSセンサーから得たものだと推測する。中根氏は「30年間やっていたから、映像技術で差別化ができている」とソニーの優位性を指摘した。
テクノ・システム・リサーチ社の調査によると、CMOSセンサーの世界市場規模は2012年に76億ドル(約7400億円)に達した。このうちソニーは約3割のシェアを握っている。世界総出荷量は13-15年の3年間で60%伸び、39億個になるとテクノ社は予想している。
スマホ市場調査会社ガートナーによると、世界スマホ販売上位はサムスン、アップル、LG電子 で、3社が市場シェアの50%超を占める。ソニーのスマホ販売は国内で好調に推移しているものの、世界市場ではまだベスト5に入らない。調査会社ストラテジーアナリティックスによると、スマホの世界出荷台数は4-6月期に前年同期比47%伸びて2億3000万台となった。
アップルのウェブサイトには、ソニーがサプライヤーとして名を連ねているものの、ソニーからどんな製品の供給を受けているかは明らかにしていない。ブルームバーグ・ニュースの取材に対し、アップルとサムスンの広報担当は、イメージセンサーのサプライヤーについていずれもコメントを避けている。
ソニーは、スマホやタブレット向け需要の拡大に合わせてCMOSセンサーの生産体制を増強している。長崎と熊本で製造、海外でもタイに後工程の組み立て工場がある。国内2拠点には2010年以降、累計2200億円の設備投資を発表している。
「サムスンにまねできない」テクノ社調べによると、CMOSセンサーの12年の年間売上高シェアはソニーが31%で首位、2位のオムニビジョンは14%、サムスンの13%に差をつけている。
一眼レフカメラからスマホまで搭載されるCMOSセンサーは、サイズや価格に大きな違いがあるものの、テクノ社の出荷数と売上高シェアをベースに計算した単純な平均単価は、ソニーが7.3ドル(約730円)でサムスンが1.9ドル(約190円)。テクノ社の大森鉄男シニアアナリスは「価格だけ見ればソニーは良くないが、技術は先行している」と述べ、「サムスンにはまねできない」とみる。
一方で、スマホ市場が成熟に向かうにつれ値下げ圧力が出てくる懸念があると、UBS証券の桂竜輔アナリストは指摘する。ソニーのCMOSセンサーはスマホの中でディスプレイに続く高額部品で、「今秋にも廉価版アイフォーンの発売が噂される中、CMOSセンサーへの値下げ圧力も大きくなる可能性がある」と指摘した。
ソニーの株価 は年初から倍以上に上昇。29日終値は前日比ほぼ変わらずの1969円。
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更新日時: 2013/09/02 18:31 JST