フィギュアスケートが熱い。現在は日本フィギュア史上、最も選手層が厚い空前の黄金期だ。
そして、2014年ソチ五輪まであと2か月あまり。男女ともに上位メダルを狙える選手を擁し、いずれの選手もみなも話題性も十分、とても魅力的だ。これで盛り上がらないはずがない。
涙と苦難の道のり ~80年代
これほど国民的人気も高く、フィギュア大国となった日本だが、今日の黄金期に至るまでには長い道程があった。涙と感動を与えてくれた、数々の先輩選手が切り開いてきた道程あってこその今である。
ソチ五輪に向けて、これまでの日本フィギュアスケートの女子選手の歩みをひもといて読み、2月の本番を2倍、4倍、6倍と楽しもう。
フィギュア、まずは専門誌
まずは現在のフィギュアのことを知るにはこちら、ワールドフィギュアスケーティングをチェック!年5刊のフィギュア専門誌で、躍動感あふれる選手の写真や、最新情報が満載だ。
ああ涙と根性の銀盤のヒロイン、昭和物語
さて、アラフォーの読者は、昭和の名選手:渡部絵美選手と、ジャンプの申し子:伊藤みどりをよくご存じだろう。その70年代からの名選手をたどってみよう。
渡部絵美選手
今ではタレントとしての知名度のほうが高いが、日本でフィギュアスケートが大きく注目を集めるきっかけを作ったのが、渡部絵美だ。その愛くるしいルックスと笑顔、定評のあるジャンプで渡部絵美は当時のアイドル的存在に。1979年世界選手権で3位、1980年のレークプラシッド五輪ではメダル確実と言われ、日本中の期待が彼女にかかったが、ジャンプにミスが出て結果は6位入賞。
おすすめの本:
銀色のフラッシュ(電子書籍で読む)渡部絵美選手本人とは関係ないが、彼女の人気に影響を受けて書かれた本。絵もストーリー展開も、昭和の香りに包まれたスケート漫画の金字塔!
伊藤みどり選手
伊藤みどりこそは、日本スケート界の長嶋茂雄、そして世界のフィギュアの流れを変えた偉大なアスリートといっても過言ではないだろう。そして、彼女はまさに日本人の心とともに世界で闘った選手である。
おすすめの本:
伊藤みどり タイム・パッセージ-時間旅行(伊藤みどり/紀伊国屋書店)
伊藤みどり トリプルアクセルの先へ(野口美恵/主婦の友社)
80年代のフィギュアは、欧米の選手が圧倒的に主流で、スポーツとは言っても、長身で優雅な彼女らが「舞う」ものであった。そんな中、伊藤みどりは1988年のカルガリー五輪で、わずか145cmの小さな体で驚異的なジャンプをガンガン跳びまくった。この衝撃は、その後のフィギュアをただ美しく滑るものから、ジャンプ重視のスポーツへと変革させることへつながった。
見事なジャンプは下の動画でご覧いただける。
1989年世界フィギュアスケート選手権(優勝):ここでついに女子史上初の3回転半ジャンプを成功させる。翌1990年の世界選手権は銀メダル、そして、1992アルベールビル五輪では銀メダルを獲得。
1990年世界フィギュアスケート選手権(第2位):3回転半ジャンプの高さと美しさは今だ誰の追随も許さない。
苦労・努力・忍耐。昭和の3セットが揃った逆境の天才
伊藤みどり選手は、まさに苦労型の選手であった。天才的な素質を持ちながら、経済的理由からスケートが続けられず、コーチのもとに居候する形で師事を受けた。その日本人好みの背景は、逆境の天才少女と国民的注目を浴び、1988年以降は、すべての試合に日本悲願の金メダルの重圧がかかることになる。
当時、国として金メダルへの期待と責任は今よりはるかに大きく、それに加えて男女ともにフィギュアで有力な選手は伊藤ただ一人。そんなプレッシャーとマスコミの過熱報道と怪我の苦悩の中でも、生真面目な彼女は、ひたすら誠実に努力と辛抱を重ね、執念の3回転半ジャンプ成功で五輪銀メダルとなったのだ。
小柄でいかにもの日本人体型、そして華やかなフィギュアというよりは正直、野暮ったい雰囲気だった伊藤みどり。しかし、彼女の健気な努力と精神力は、当時の日本人全員のシンパシーを獲得し、涙と感動を呼んだのだった。
『タイム・パッセージ-時間旅行』では、彼女の言葉による、孤高の天才としての現役時代の歩みが、そして『伊藤みどり トリプルアクセルの先へ』では、現役引退後も苦労を重ねつつも、スケートを愛する彼女の歩みが綴られている。
まとめ
ソチ五輪へとつながってきた日本女子フィギュアの歩み。この下地があったからこそ、今の有力選手を多く生む土壌ができたといえる。是非、今日までにつながる苦労選手の歴史を読んでみてほしい。
Photo: {QUEEN YUNA}/Flickr