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サクサク進んで、バキバキフラグを折って行きます。
第二章【転換期編】
幼馴染み
 出発してから六日目。
 俺達は二つ目の街を出た。ナイジェルの仲間達は皆良い人ばかりだ。
 騎士団とは全く接触が無い。
 彼らはメンシス騎士団と言い、主に貴族の子弟で構成されている。
 本来の団員数は知らないが、団長・副団長合わせて四十名程度いるようだ。その全てが人族である。

 ナイジェルの仲間達は、伯爵名代の副団長含む、精鋭二十名。獣人はナイジェルだけである。
 騎馬と馬車で、メンシス騎士団を前後挟む形で進む。
 俺の乗る馬車は最後尾だ。

 六日間、街に着いた時以外、俺はひたすら馬に揺られて過ごした。完全なお荷物である。
 一応、おじさんの身内扱いなので、じっとしてろと言う事だ。
 何度かモンスターとも遭遇した様だが、全て先行しているナイジェルの仲間がサクッと片付けてしまった。
 食料補給の時だけは、手配する係りの人に付いて行った。何の手伝いも出来ないが、せめてだ。
 値段も大事だが、新鮮さも大事である。スキルは便利だ。

 馬車が止まる。
 そろそろ野営の準備に入るのだろう。
 その時、ブレスレットがひやりとした。
 点滅する様に、冷たくなっては元に戻るを繰り返している。

「……ナイジェル」

「どうした、もうすぐ夕食だ」

 馬車の小さな窓を開けると、騎乗したナイジェルの顔が見える。
 並行したまま馬車に寄ってきたナイジェルに、小さな声で言った。

「もう少し、先に進んだ方が良いんじゃないかな?」

「川も近い。 馬を休めなければ。 何か気になる事があるのか?」

 団の事に口を出してるのに、聞く耳を持ってくれる人で良かった。
 俺は少し考えてから言った。

「あー。 うん、騎士団の人達って、川辺のモンスターについて知ってるのかな?」

「うわぁあああ」

 叫び声と、激しい水しぶきの音が聞こえてきた。

 被害は馬一頭。
 メンシス騎士団の誰かが、不用意に川に近付いた様だ。
 川辺のモンスターに引きずり込まれそうになったが、騎士は助かったとナイジェルに教えてもらった。

 大きな街道から反れずに進んだので、大型のモンスターに遭遇する事は無かった。
 ハプニングと言えば、川辺の時ぐらいだ。
 7日目の昼、俺達はエセックスの城に無事到着した。

 城に着いてすぐ、メンシス騎士団とは分かれた。
 騎士団の前に、ヴェロニカが立っているのが見える。彼女がおじさんの所まで案内するみたいだ。
 彼女とはたまに手紙のやり取りをしている。きっと後で会えるだろう。
 おじさんに会えるのも、騎士団との挨拶や夜の食事会が終わってからだろう。

 俺は世話になった精鋭達にお礼を言ってから、ナイジェルと共に、城の中へ入った。
 俺が七年間住んでいた部屋は、今でもそのままにしてあるとおじさんは言っていたが、本当だった。
 何時でも帰って来ていいのだと、そう言う意味だと思う。

「落ち着く」

 ベッドに腰掛けて深く息を吐いた俺を見て、ナイジェルが笑った。


 荷解きをすませ、中庭に出る。そこには甲冑を着込んだ細身の騎士がいた。

「やっと来たか」

「クリス、久しぶりだな!」

 クリスは、四面に切り取られた中庭の廊下、俺達がいる反対側の隅に佇んでいた。
 俺は小走りで近寄ると、クリスに軽く挨拶した。
 ナイジェルが、膝を着き一礼している。
 クリスが手でナイジェルに合図し、ナイジェルは再び立ち上がった。

 それにしても、会わない内にさらに格好良くなってしまって。
 クリスはおじさんの娘だ。
 おじさんには男子の世継ぎが産まれなかった。
 この世界でも男性が家を継ぐ場合が殆どなので、クリスの立場は微妙であった。
 俺とクリスは、城にいた頃かなり長い間一緒に過ごしたので、幼馴染みと言っていい関係である。
 亜麻色の髪を編み込み、後ろでまとめ上げ、甲冑を着こなし立つ姿勢は、大変様になっている。美人なのに。
 男装の麗人となってしまった幼なじみとの再会に、俺は少し苦笑いをした。
 クリスが男装を始めたのは、「フィンブルの一年」の後からだったろうか。
 昔は長い髪を下ろして、ヒラヒラしたドレスを着ていたのに。
 クリスと近況を語り合っていると、背中に衝撃が走った。

「ノアー! やっと会えたわね!」

「うわっ、ヴェロニカ?」

 ハーフエルフのヴェロニカだった。
 騎士団の案内はと聞いたら、おじさんの所に案内してすぐ俺に会いに来たと言った。大丈夫なのかそれ。

「ランドルフに精々しごかれたら良いのよ、あのお坊ちゃん達」

 ヴェロニカは、俺の背中にくっ付いたまま、手をヒラヒラさせて言った。
 俺の周りにいるエルフって、本当に世間一般のイメージと違う。

「ノア」

「おじさん!」

 この城の要人が大集合してる。
 メンシス騎士団とは挨拶をすませ、今は荷解きの最中だからと顔を見せに来てくれたらしい。
 おじさんは今年で五十二になる。
 未だにまだまだ現役だと豪語し、事実この辺境を預かり、立派に守っている。
 「フィンブルの一年」の時、獣人達を率いて最前線を戦った事から、獣人達の王と言う意味で、獅子王と呼ばれる様になった。

「すみません、おじさん。 俺から挨拶に行くのが筋なのに」

「なに、息子の顔を見に来ただけだ。 いつまでたっても堅いな」

 おじさんはそう言って豪快に笑った。
 クリスより薄い茶髪と同じ色の瞳。その目は時に厳しく、時に優しく瞬く。

「おじさん、またそんな風に」

 おじさんは俺を息子同然だと言う。おじさんの最も嫌いな部類、覚悟も無く逃げ続けている俺を。

「お前がクリスと結婚すれば、そうなる」

「父上!」

「おじさん!」

 これもだ。
 前は口には出さなかったが、俺が此処を出てからは、隙あらば結婚を勧めてくる様になった。
 クリスは俺には勿体ない。俺は貴族として生きる覚悟も無い。
 そう何度も言っているのに。

「今日の食事会は共に出来ないが、また明日会おう」

 わはは、と笑って去って言った。嵐の様な人だ。

2013/04/22 修正


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