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サクサク進んで、バキバキフラグを折って行きます。
出発してから六日目。
俺達は二つ目の街を出た。ナイジェルの仲間達は皆良い人ばかりだ。
騎士団とは全く接触が無い。
彼らはメンシス騎士団と言い、主に貴族の子弟で構成されている。
本来の団員数は知らないが、団長・副団長合わせて四十名程度いるようだ。その全てが人族である。
ナイジェルの仲間達は、伯爵名代の副団長含む、精鋭二十名。獣人はナイジェルだけである。
騎馬と馬車で、メンシス騎士団を前後挟む形で進む。
俺の乗る馬車は最後尾だ。
六日間、街に着いた時以外、俺はひたすら馬に揺られて過ごした。完全なお荷物である。
一応、おじさんの身内扱いなので、じっとしてろと言う事だ。
何度かモンスターとも遭遇した様だが、全て先行しているナイジェルの仲間がサクッと片付けてしまった。
食料補給の時だけは、手配する係りの人に付いて行った。何の手伝いも出来ないが、せめてだ。
値段も大事だが、新鮮さも大事である。スキルは便利だ。
馬車が止まる。
そろそろ野営の準備に入るのだろう。
その時、ブレスレットがひやりとした。
点滅する様に、冷たくなっては元に戻るを繰り返している。
「……ナイジェル」
「どうした、もうすぐ夕食だ」
馬車の小さな窓を開けると、騎乗したナイジェルの顔が見える。
並行したまま馬車に寄ってきたナイジェルに、小さな声で言った。
「もう少し、先に進んだ方が良いんじゃないかな?」
「川も近い。 馬を休めなければ。 何か気になる事があるのか?」
団の事に口を出してるのに、聞く耳を持ってくれる人で良かった。
俺は少し考えてから言った。
「あー。 うん、騎士団の人達って、川辺のモンスターについて知ってるのかな?」
「うわぁあああ」
叫び声と、激しい水しぶきの音が聞こえてきた。
被害は馬一頭。
メンシス騎士団の誰かが、不用意に川に近付いた様だ。
川辺のモンスターに引きずり込まれそうになったが、騎士は助かったとナイジェルに教えてもらった。
大きな街道から反れずに進んだので、大型のモンスターに遭遇する事は無かった。
ハプニングと言えば、川辺の時ぐらいだ。
7日目の昼、俺達はエセックスの城に無事到着した。
城に着いてすぐ、メンシス騎士団とは分かれた。
騎士団の前に、ヴェロニカが立っているのが見える。彼女がおじさんの所まで案内するみたいだ。
彼女とはたまに手紙のやり取りをしている。きっと後で会えるだろう。
おじさんに会えるのも、騎士団との挨拶や夜の食事会が終わってからだろう。
俺は世話になった精鋭達にお礼を言ってから、ナイジェルと共に、城の中へ入った。
俺が七年間住んでいた部屋は、今でもそのままにしてあるとおじさんは言っていたが、本当だった。
何時でも帰って来ていいのだと、そう言う意味だと思う。
「落ち着く」
ベッドに腰掛けて深く息を吐いた俺を見て、ナイジェルが笑った。
荷解きをすませ、中庭に出る。そこには甲冑を着込んだ細身の騎士がいた。
「やっと来たか」
「クリス、久しぶりだな!」
クリスは、四面に切り取られた中庭の廊下、俺達がいる反対側の隅に佇んでいた。
俺は小走りで近寄ると、クリスに軽く挨拶した。
ナイジェルが、膝を着き一礼している。
クリスが手でナイジェルに合図し、ナイジェルは再び立ち上がった。
それにしても、会わない内にさらに格好良くなってしまって。
クリスはおじさんの娘だ。
おじさんには男子の世継ぎが産まれなかった。
この世界でも男性が家を継ぐ場合が殆どなので、クリスの立場は微妙であった。
俺とクリスは、城にいた頃かなり長い間一緒に過ごしたので、幼馴染みと言っていい関係である。
亜麻色の髪を編み込み、後ろでまとめ上げ、甲冑を着こなし立つ姿勢は、大変様になっている。美人なのに。
男装の麗人となってしまった幼なじみとの再会に、俺は少し苦笑いをした。
クリスが男装を始めたのは、「フィンブルの一年」の後からだったろうか。
昔は長い髪を下ろして、ヒラヒラしたドレスを着ていたのに。
クリスと近況を語り合っていると、背中に衝撃が走った。
「ノアー! やっと会えたわね!」
「うわっ、ヴェロニカ?」
ハーフエルフのヴェロニカだった。
騎士団の案内はと聞いたら、おじさんの所に案内してすぐ俺に会いに来たと言った。大丈夫なのかそれ。
「ランドルフに精々しごかれたら良いのよ、あのお坊ちゃん達」
ヴェロニカは、俺の背中にくっ付いたまま、手をヒラヒラさせて言った。
俺の周りにいるエルフって、本当に世間一般のイメージと違う。
「ノア」
「おじさん!」
この城の要人が大集合してる。
メンシス騎士団とは挨拶をすませ、今は荷解きの最中だからと顔を見せに来てくれたらしい。
おじさんは今年で五十二になる。
未だにまだまだ現役だと豪語し、事実この辺境を預かり、立派に守っている。
「フィンブルの一年」の時、獣人達を率いて最前線を戦った事から、獣人達の王と言う意味で、獅子王と呼ばれる様になった。
「すみません、おじさん。 俺から挨拶に行くのが筋なのに」
「なに、息子の顔を見に来ただけだ。 いつまでたっても堅いな」
おじさんはそう言って豪快に笑った。
クリスより薄い茶髪と同じ色の瞳。その目は時に厳しく、時に優しく瞬く。
「おじさん、またそんな風に」
おじさんは俺を息子同然だと言う。おじさんの最も嫌いな部類、覚悟も無く逃げ続けている俺を。
「お前がクリスと結婚すれば、そうなる」
「父上!」
「おじさん!」
これもだ。
前は口には出さなかったが、俺が此処を出てからは、隙あらば結婚を勧めてくる様になった。
クリスは俺には勿体ない。俺は貴族として生きる覚悟も無い。
そう何度も言っているのに。
「今日の食事会は共に出来ないが、また明日会おう」
わはは、と笑って去って言った。嵐の様な人だ。
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