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刻印について

僕の書き方が悪かったので、刻印について色々感想頂きました。
主人公の場合、精霊に関する事=刻印です。
今度書き足します。
第二章【転換期編】
伯爵からの手紙
 昨日は飲み過ぎた。
 目が覚めると、太陽は大分高く登っていた。今日の仕事は休みだ。
 頭は痛くないが、若干体が重いな。
 久しぶりに、街で買い物でもしようか。魔法ギルドの図書館を利用するのも良いな。
 少しだけ、鑑定所に顔を出そう。最近あまり顔を合わせていないし。

「あ、ノアさん。 こんにちは」

「や、ユージン」

 鑑定所の事務室の扉は、開け放たれていた。
 ムッスは昼飯に行って席を外していたが、もうすぐ帰ってくるらしいので、ここで待つ事にした。
 ユージンが、実物と資料を見比べながら、アイテムの特徴の把握に努めている。

「ノアさん、今度一緒に露店を回りませんか?」

「いいよ。 ユージンは勉強熱心だな」

 露天には、掘り出し物のアイテムがまれにある。
 胡散臭い物や、ガラクタの中から本物を見つけ出す、良い訓練になる。
 鑑定士の目を鍛えるには、やはり実物を多く見るのが一番だからな。
 俺は資料と睨めっこするユージンに、見分け方のコツや、間違えやすい似たアイテムについてアドバイスした。
 しばらくして、ムッスが帰ってきた。

「あー! ノアさんここにいたんですか!」

「いきなりなんだよ。 どうした?」

 パタパタと走ってこちらに駆け寄ってくると、ムッスが手紙を俺に押し付けてきた。

「支部長から預かって来たんです。 ノアさんに手紙が届いたからって」

 昼食に食堂を利用するついでに、宿舎の俺の部屋まで行ったらしい。
 そしたらもぬけの殻だったと。

「ありがとう。 でもそんな急がなくてもいいだろう?」

「送り主を見て下さいよ!」

 俺は改めて、渡された手紙を見た。

「あ、おじさんからか……」

「伯爵様からの手紙ですよ! そりゃあ急ぎます!」

 ムッスは何だか興奮している。伯爵の手紙に触れたのが嬉しいらしい。
 蜜蝋で封をされたそこには、エセックス伯爵の指輪の紋章跡が押してある。
 それにしても、手紙なんて久しぶりだな。
 手紙の封には魔法が使われている。解除キーは、今回は俺の魔力だ。
 事前に指輪に触れて魔力を登録、認識させてある。無理やり他人が開けようとすれば、燃えてしまう。便利だよな。

「解除」

 蜜蝋に触れて少し魔力を込めると、中の羊皮紙を取り出す。

「あー……」

 サッと読んで固まった俺をムッスとユージンが不思議そうな顔をして見てきた。

「悪い、ユージン。 しばらく一緒に出かけられないかも」

 おじさんからの手紙には、久しぶりに城に来いと書いてあった。
 出不精と言うか、旅嫌いな俺が嫌がるのを見越して、迎え(護衛)を寄越すとも書いてある。
 更に支部長には許可を取ったとか。さすがおじさん。やる事に無駄がない。行くしかないじゃないか。

 迎えって、一体誰なんだ?
 答えはすぐに出た。

 職員に呼ばれ、ギルド正面入り口に向かう。何だか騒がしい。

「ノア」

「ナイジェル……?」

 なんでナイジェルがここに?
 だって、彼はもうただの傭兵じゃない。
 「フィンブルの一年」の時の功績が認められ、おじさんに忠誠を誓い、獣人ながら騎士の位を手に入れた。
 今は城で獣人達をまとめ、隊長をしている筈。
 驚いた。
 ナイジェルはゆっくりこちらに歩いてくる。
 ライカンスロープのナイジェルはすごく大きい。その額には、大きな傷跡。
 「フィンブルの一年」の時に負った傷だ。他にも沢山の傷が体に刻み込まれている。

「どうした? 元気だったか? 風邪は引いてないか?」

「ちょ、ちょっと! 大丈夫だって! 元気だよ!」


 恥ずかしい!
 ナイジェルにとって俺は、何時までも小さい頃のイメージから卒業出来ていないみたいだ。
 一番最初に会った時、俺は寝込んでいた。
 何週間もそのままで、その後も体が普通に戻るまで、ずっと看病してくれていたのだ。
 そのせいか、とても過保護になってしまった。
 俺は年の離れた弟みたいなもんで、確かにそんな感じで世話になったけど。

 想像してみて欲しい。
 二メートル近い厳つい戦士のライカンスロープの男が、満面の笑みを浮かべながら母親みたいなセリフを言っている様を。

 兎に角、何時までもギルドのエントランスで話すのはやめよう。
 俺はナイジェルを引っ張って、ギルドを出る。適当な酒場に入り、話しを聞いた。

「ナイジェルが迎え?」

「ああ、そうだ。 他にもいるけどな」

 王都の騎士団と、伯爵の騎士団で合同演習をするらしい。
 その迎えに、ナイジェルと数名で王都まで来たそうだ。今は王都の騎士団と合流して、エセックスの城に戻る途中だ。
 ナイジェルは、その帰りに俺を連れて来るよう言われたと話した。

『旅は安全なものになる』

 手紙の最後にそう書いてあったのが、頭を過ぎった。

 騎士団一行は、物資の調達に今日一日街に留まる。
 ナイジェルに、明日の朝には出発するぞと告げられた俺は、急いで準備を始めた。騎士団に囲まれて馬車での旅だ。
 ここからエセックスの城までは、八日程だろうか。比較的安全だと思う。
 もしモンスターに襲われたとしても、跳ね除ける位の力をナイジェルは持っている。騎士団の実力は知らないが。

 予想外の事が起こらない様、精霊に教えてもらいながら進ませてもらおう。
 俺はブレスレットを指で触りながら、ギルドの宿舎で眠りについた。

2013/04/22 修正


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