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主人公がフラグいっぱい立てすぎて困りますね。
バキバキに折って、サクサク進めたいと思います。
第一章【異世界の日常編】
俺の失敗
 あくる日の午後。
 今日は晴れて、とってもいい天気だ。
 俺はギルド宿舎の食堂で、少し遅めの昼食をとっていた。

「先輩!」

 俺はゆっくりとした午後の時間を楽しみながら、紅茶を口に含む。

「ノア先輩ってば!」

 ちくしょう。
 俺の平和な昼休みが……。

 食堂に飛び込んで来たお邪魔虫は、ムッスと言う鳥の獣人である。
 鳥だろうが爬虫類だろうが、こちらでは獣人と区分されている。耳だけ尻尾だけの獣人もいれば、顔が獣そのものの獣人もいて多種多様だ。
 ムッスの手は羽っぽいのに、指になっていて器用に動くので面白い。
 可愛らしい人の顔をしていて、もう少女と言う年でも無いのにいつまでたっても子供っぽい。
 アイテム鑑定所にいた時、支部長に言われて後輩を育てる為に人材を探していたが、ムッスはその中でも一番才能の伸びしろがありそうだった。ちょっとドジっこなのが玉に傷ではあるが。
 実際、「鑑定士」のスキルも発現したので、俺の目に狂いは無かったから良しとしておこう。
 そいつが俺を呼びに来たと言うことは、よっぽど大量にアイテムが持ち込まれたか、ムッスでは鑑定できないものが来たかだろう。

 結論から言うと、どっちもだった。
 チュンチュンうるさいムッスが、俺を引っ張ってギルド裏の持ち込み専用口に向かう。
 到着すると、大量の討伐部位とアイテム、そしてワームの死体が馬車から降ろされている所だった。

「アルフォンス、さん」

「あ、窓口の。 こんにちは」

 爽やかな笑顔で挨拶された。
 一応挨拶を返すが、笑顔が引きつっていないだろうか心配である。
 昨日の昼過ぎに馬車で出発して、村に着くのは夜だ。まさか夜にゴブリンの巣穴まで行くとは思えないので、朝から駆除作業に当たったとして、それから休みなく昼過ぎには村を出る。途中湖で休憩、そこでついでにワームも狩ってきた。
 そうじゃなければ、アルフォンスさんが今ここにいる筈がない。
 ゴブリンの数が大した事無かったのか?
 そう思ったが目の前の討伐部位を見る限り、かなりの頭数がいただろう事が分かる。
 さらっとついでになんて表現をしたが、ワームはついでに狩れるようなモンスターじゃない筈だ。
 一瞬でそこまで考えて、どうにも分からないので、アルフォンスさんに聞いてみたが、俺が考えた行程で合っていた。
 嘘だろ?

 思ったよりアルフォンスさんのパーティーは強いみたいだ。
 ギルドカードにパーティーメンバーのランクも登録されていだが、皆Bランクだった。絶対そんなレベルじゃないぞこいつら。
 支部長にはワームの事は一応報告しておいた。理由はごまかしたが、噂で旅人から聞いたと言う感じでだ。
 ワームが住み着いてから何日か経っているので、村から出てきた人間から噂を聞いてもおかしくないぐらいである。
 ワームは性格的に水辺の深くに静かに潜んでいるモンスターなので、緊急性も無いだろう。

 そう思って、のんびり考えていたが、報告損である。
 結果的には問題ないので、今はとりあえず置いておこう。

「あの、窓口の方ですよね?」

「うお、はい。 ノアと言います」

 アルフォンスさんの後ろから突然出てきたフードの人物に声を掛けられた。
 俺が何故此処にいるか不思議に思ったらしいので、軽く説明しておく。

「基本的には窓口におりますが、スキル持ちなのでこうやって駆り出される事もあるんですよ。」

「そうなんですか。 申し遅れました、私、ソフィア=ウィスと言います」

 ソフィアさんはフードを外して名乗ってくれた。キレイな金髪に、ビスクドールの様な顔立ち。そして、彼女の耳は長かった。エルフである。

「女の方だったんですね。 てっきり細身の男性かと思っていました」

「ええ。 あの、驚かれないのですか?」

「エルフ、なんですね? 確かに珍しいですが。 あ、不躾で申し訳ない。 それでフードを被ってらっしゃったのですね」

 しまった。もっと驚いておくべきだった。どうも知り合いにエルフがいて見慣れているので忘れていたが、こちらではかなり珍しいのだった。
 今更大げさに反応するのも態とらしいので、正直に知り合いにハーフエルフがいるのだと言っておいた。
 フードを被り直したソフィアさんが、軽く頷いた。
 納得してくれてたら良いな。うん。

「そうなんですか」

「ええ。 では、鑑定させて頂きます。しばらくお待ち下さい」

 俺は笑顔で押し切り、ゴブリンの討伐部位をカウントしているムッスに走り寄った。


2013/04/22 修正


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