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一時間遅れでの更新になってしまいました。
明日は頑張ります。
ユニークが1000人突破しました。嬉しい事です。
ありがとうございます。
第一章【異世界の日常編】
俺の選択
 使えるものは使う。
 貴族の保護は、こちらでは普通の事だ。出し惜しみなんてしない。
 それにしてもあのアホ、獅子王なんて呼ばれてるおじさんの一番嫌いそうなやつだったな。
 おじさんは口だけのやつが大嫌いだから。
 子爵の地位は親のもので、お前のものじゃないだろうに。

 ああいうアホへの対処が出来るから、支部長も俺を窓口にしたがった。
 あんなのに一々呼ばれて出て来ていたら、仕事が進まないだろうから分かるが。
 あの人、極度の面倒くさがりだからな…。
 そんなアホでも、面倒くさがって適当に送り出して、死なせるような事はしたくない。
分かっていて見殺しにしたら、俺の気分が悪い。

 何事も無かったかのように窓口は再び動き出した。
 丁度、ギルドに到着したばかりの旅人と目があった。
 エントランスには、旅人向けの情報掲示板がある。
 フードを被った旅人は、こちらをジッとみた後、掲示板に歩み寄った。
 なんだ?
 少し気にはなったが、用事があれば声を掛けるだろう。目の前の利用者に意識を戻して、相談に相槌をうつ。
 猫の獣人である彼は、同じパーティーに新しく入ったネズミの獣人と上手くいってないらしい。それは本能的にしょうがないよな。
 とりあえずハーブティーとサラダをたくさん食えと薦めといた。残念ながら、ストレス軽減ぐらいしか思いつかない。すまん。

 チラリと視線を上げると、新しくギルドに入ってきた男が、先程のフードを被った旅人に声を掛けているのが見えた。
 少し会話をした後、後から入って来たやつがこちらに来た。
 見覚えの無い顔なので、旅人の護衛だろうか?
 それにしても、かなり均整のとれた体をしている。
 腰には二振りの剣を下げていて、きっと飾りでは無いんだろうな。強そうである。

「こんにちは、この依頼を受けたいんだが」

「こんにちは。 ええっと、はい、ルーフス村からの依頼ですね。 ゴブリンの殲滅、パーティーでのみ受付、Bランクになります。 ギルドカードの提示をお願いします」

 パーティーでのみ受付の依頼の場合、ソロランクとは別に登録が必要である。
 ソロランクがSでも、パーティーランクが基準に達していなければ依頼は受けられない。
 男から受け取ったカードを水晶にかざす。

 アルフォンス・ベルクマン
 登録/ウェントス支部
 ソロランク/B
 パーティーランク/B

 ウェントスとは隣の国にある街の名前だ。
 五大国間は、ギルドカードを持っていれば面倒な手続きをせずに行き来できる。
 しかし、このアルフォンスと言う男、絶対にソロランクBで収まるような感じでは無い。
 達成した討伐や依頼数を見ると、ランクを上げる為に最低限の数をクリアして来た感じだ。きっと相当な場数を踏んでいるだろう。
 初心者相手なら、メンバーの確認をするが問題ないだろう。

「ランクを確認致しました。 報酬や注意事項について説明致しますか?」

「特に問題なければ大丈夫だ、契約を頼む」

「了解しました。 少々お待ち下さい」

 水晶に依頼の契約を焼き付けている間、俺は「鑑定士」を発動させて、そっと男を見た。

「……!」

「ん?どうかしたか?」

「いいえ。 問題ありません。 契約完了しました。 ギルドカードをお返しします。」

 アルフォンスの能力値は、とんでもなく高かった。スキルもいくつか持っていて、剣士風な割にMPが高い。きっと魔法剣技が主力だろう。

「村への行き方は、この地図をご利用下さい。 街道沿いに馬車なら半日程度で着くと思います。」

「土地勘が無いから助かる。 この湖の近くなら馬を休められるかな?」

 アルフォンスが、地図を指差しながら聞いてくる。
 俺は少し考えてから答えた。

「そうですね。 浅瀬ならば大丈夫です。 ただし、林側に沿って奥に進むと危険なので注意して下さい」

「何かいるのかな?」

 少し首を傾げるアルフォンスに、詳しくは知らないという顔で答えた。

「未確認ですが、竜種……ワームが住み着いたとの話を耳にしました」

「へえ……。 ありがとう。 気をつけるよ」

 ワームはかなり手強い。竜種はモンスターの中でも桁違いの強さだ。
 例によって精霊に聞いたが、ここ数日、ワームが湖の奥でうろちょろしているらしい。
 村も街も近いので、そのまま放置するのはマズい。
 様子を見て、支部長に報告しようかと考えていたが、アルフォンス達のパーティーなら、多分余裕で討伐できる。
 遭遇しなければそれまでだし、戦いたくなければ近づかないだろう。

 アルフォンスは、フードの人物に声を掛けている。
 旅人だと思っていたが、あの人もパーティーの人間のようだ。わざわざ旅の護衛の途中に、依頼なんて受けないだろうし。
 アルフォンス達がこちらを見て手を振り、ギルドを出て行く。
 俺は笑顔でアルフォンスを見送った。

2013/04/22 修正


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