城での生活は充実したものになった。
ずっとベッドで生活していた俺の体は弱っていたので、リハビリが必要だったが、衣住食は確保できていたので全く問題ない。
これから自分で生きていく為に、出来る事と出来ない事をゆっくり考えた。
ナイジェルは、ベッドと城の庭を行き来する毎日の俺に、外の世界を教えてくれた。
その時、モンスターについて教えてくれた。
この世界で生きていくには、とても重要な知識だった。
モンスターは日々変化する。個体によって、特徴や性格がある。
それを聞いて、これまで漠然と理解しているつもりでいたが、ゲームとは違うのだとやっと悟った。
成熟した精神と、真新しい頭脳のおかげで、俺は自分が生きていくのに必要な事を猛烈なスピードで身に付けていった。
働かざる者、食うべからず。おじさんの好意にいつまでも甘えている訳にもいかない。
おじさんの養子と言う訳ではなく、強欲な商人仲間に何も知らないまま良いように使われないように、後見人になってくれたのだ。
ナイジェルも自分の生活がある。遠征に城を長く空ける事もあった。傭兵と言う仕事柄、もしもがあるかもしれないのだ。
俺はおじさんの為にスキルを使う事を躊躇わなかった。
軍事以外に興味の無いおじさんに代わり、金策や交渉の面をカバーするヴェロニカ=カヌスと言うハーフエルフの女性がいた。
種族的な説明をすると長くなる為簡単に言うが、エルフが人間に関わるのはとても珍しい事だ。
俺も父の仕事の関係上、様々な種族を見て来たが、エルフには初めて会った。
ハーフエルフであると言うのが関係しているのだろうが、兎に角エルフという種族は寿命が長いのもあって賢く、プライドが高いのが通常と聞いていたが、ヴェロニカは違った。
とても友好的で、お茶目な人で、母を無くした俺を可愛がってくれた。
さり気なく噂で聞いたが、三百歳を軽く超えているそうで、多分彼女にしたら皆孫みたいなものなんだろう。
俺はヴェロニカに呼ばれれば、交易などの交渉の場に控えて、必要であればスキルを使った。
こうして実践的に学びながら、自分のスキルの本当の使い方を覚えていった。
体の自由が効くようになってから、毎日ひたすら知識を溜め込んでいた俺を、周りは頑張りすぎじゃないかと最初は心配していたようだった。
でも俺が、「自分で生きて行く為に、少しでも多く学びたい」と言ったら、ナイジェルは、
「あまり無理するなよ。 俺もできる限り手伝おう」
そう言って、一応納得してくれたようだった。
この世界は過酷だが、俺は恵まれているのだろうと改めて実感した。
そう言えば、見た目は十歳そこそこなのを忘れていた。
これまでそうやって意識せずとも年相応の記憶しかなかったので、演技せずとも不自然では無かったと思うが、これから少し気を付けるべきかなと思った。
体も成長期を迎えて力も付いてきたので、たまにナイジェルから護身術を学んだりした。
十七歳になった俺に、おじさんは、俺さえよければ養子に迎えたいと言ってきた。とても魅力的なお誘いではあったが、断った。
俺には貴族として生きて行く事は向いていない。人の上に立ったり、人の命を預かったり、時には切り捨てたりするのは無理だ。
この何年かおじさんの側にいてそう思った。
おじさんの側にいれば、必ず戦う時が来る。せっかくもう一度生きられるのに、わざわざ自分から死ぬ確率の高い所にいたく無かったのが本音だった。
ナイジェルは、護身術を教え始めた頃から俺に傭兵になってほしそうにしていたが、最終的には性格的に向いていないと諦めたようだった。
色々あったが、俺はおじさんの城で七年間学び、そして自立する事にした。
最初は商業ギルドで働こうと思ったが、どうやら体制的なものが俺には向いていなかったので、現在の、冒険者や傭兵が利用するギルドで働く事にしたのだった。
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