【佐藤啓介、小坪遊】除染作業員宿舎の建設計画に、周辺住民が反対するケースが相次いでいる。除染作業員をめぐる事件やトラブルが増え、住民に不安が広がっているためと見られている。多くの除染現場は厳しい労働環境に置かれ、住民の要望への対応に作業員が苦労しているケースもある。

 11月中旬、福島県伊達市保原町であった除染作業員向け宿舎建設の説明会に、住民約30人が集まった。建設会社の計画によると、平屋のプレハブ宿舎(1棟225平方メートル)を6棟建設する。作業員が300人宿泊できる規模だ。

 この集落の住民は約400人。「作業員が一気に300人も増えたら、治安が心配だ」「建設で出る廃棄物が近くの沼に流れたら、田んぼが台無しになる」。懸念が次々と出され、建設計画はストップしたままだ。

 伊達市や県警の幹部によると、同市内の別の地区やほかの市町村でも、同様の建設計画に反対の動きが起きているという。

 住民が抱く不安の背景には、一部の作業員らによる事件やトラブルの増加がある。県警によると、これまでに摘発された除染作業員は161人。特に今年は134人(11月末現在)と、すでに昨年(26人)の約5倍に急増している。

 容疑別に見ると、ケンカや酒に酔って殴ったなど傷害が47人、空き巣などの窃盗が43人と大部分を占める。11月には、郡山市で兄妹3人を半日連れ回したとして未成年者略取誘拐容疑で作業員の男が逮捕された事件もあった。

 除染事業が犯罪の温床になれば、復興の足かせにもなりかねない。県警幹部は「暴力団員の関与を徹底的に排除するなど、犯罪はしっかりと取り締まっていく」と話す。