早いもので、納車からもう一ヶ月以上経ってしまった。

走行距離は思ったより走っていて1ヶ月でジャスト「700km」。あ、いや新車が来て1ヶ月なのに、この距離では全然走ってない方なのか。それでも以前はジテ通の方が多くて1ヶ月では、せいぜい500kmも行かない程度だったから自分的には、よく走った方だと思う。


それでも晴れた日はジテ通していたが、そんな夜は決まってウズウズして我慢できなくなる。そして、夜な夜な街中をかっ飛ばすオッサンと化していたのだ....。

納車前、既にA250Sを乗っている方々が「楽しい車」と表現された事に大して、少し疑問に思っていた。それは、新しい車を手にした事が楽しいのであって、乗り心地が悪く出足が鈍い車が、果たして運転して楽しい車なのだろうかと。

でも、その意味は直ぐに分かった。これはホント運転して楽しい車だ。何か目的があって車を運転する事とは別に「意味もなくどこかに行きたくなる」ただ単に車を走らせる事が楽しい車なんだと。


それに目覚めてからは毎夜毎夜、コッソリと家を出る。重いドアを開け、低くて狭い穴蔵に潜り込み、赤いシートベルトを閉め太いステアリングを握という一連の儀式を終えるとテンションが上がる。「よっしゃ、行くぞ!」みたいな。

特別これで暴走しょうとは思わないし、そこは大人としての範囲内だが、何かワクワクさせるものがある。


スライディング・ルーフを全開にして夜の街を駆け抜ける。体の中を風が通りぬける瞬間に思わずニヤリとしてしまう。

確かに運転して楽しいが、たぶん新しい車の部分もあると思う。それが無くなって3年ぐらい経っても同じ気持になれるかどうか。単に楽チンで何の苦労もない移動の為の道具との違いに、目覚められるかどうかが問題。


一般的に言われる車としての出来は良くはない。Cセグメントの中での平均点は悪い方だと思う。コスパを考えたらA180以下の最下位かも知れない。

特にゴー&ストップの多い朝晩の通勤路では全く面白くなく、何時も不完全燃焼に終わってしまう。狭い空間とガタガタ道に、体調の悪い時はむしろ苦痛さえ感じる。乗り心地が悪い、出足が鈍い、ウルサイ、荷物が積めない、後部座席が狭い。と、まあ思いつくだけでも悪口は沢山書ける。なのにハンドルを握ると、そんな事も忘れさせてくれる。


決して、ファミリーカーの代役としてはベストの車ではない。もしゴルフ7で迷っているなら間違いなくそちらをお勧めする。ゴルフの平凡さが嫌ならV40がある。自分が乗りたいが為にカミさんの車として買うなら、奥さんが可哀想だ。これは4ドアだけど至ってパーソナルカーに近い車だと思う。そして最初から最後までタイト。苦痛と快感が背中合わせに存在する車。それでも、迷いなくこのスタイルと雰囲気に盲目的になったなら決して裏切りはしない。

ある意味大衆的な車とは離れている所にあるが、純粋スポーツカーみたいに実用性に欠ける事もないし、奇をてらった人目を引くスタイルでもない。ズルイ位置だし、中途半端と取られても結構。

それが新しいAクラスだと思う。


しかし、未だに慣れない事が多い。

慣らし期間は禁忌とはしらず試しにSモードやMモードも試してみたが、難しいの一言。自由に操られないジレンマ、まだまだ車に乗らされている感じがする。それでもEモードでのアクセールワークは少し慣れ、走り出しにガッと踏むとトロいイメージは無くなって来た。


しかしまだ、アクセルを踏み込む所まで経験していないので、この車の実力が分からない。それだけ奥深いものがあるが、果たして底は浅いのか深いのか。その一つ一つの謎を解く事が楽しいと感じるか、苦痛と感じるが分かれ目。だから車は生活の足と考えている人には少々キツイ苦行かも知れない。素直に運転する楽しさが実感出来れば良いが、チョイ乗り試乗では、なかなか分からない領域。

それこそ軽四で十分という人は、それが一番だと思うが、街中溢れかえっているエコカーにウンザリと感じる人なら、かなりスパイスが効くが良いかもしれない。いや原資に余裕のある人はA45の方がベストかな。


軽快感ならA200Tの勝ち。でも、その反面軽すぎてフィーリング的に頼りなさも感じた車。あれは7年乗ってそう思えた車だから、一ヶ月そこらで判断するのは時期尚早なのかも知れない。もっとエンジン回してパドル使ってガンガン走ってこそA250Sの魅力が分かるような気がする。とりあえず慣らし終了の1500kmまではEモードでソロリソロリと。