どんな組織でも難しいのが、世代交代です。そのことを強く意識させられた書籍が、伊丹敬之著「よき経営者の姿」です。私は7年前、突然に社長職を任じられましたので、本書のタイトルに惹かれて読みました。 ところが本書が結論付ける「よき経営者の姿」とは、「美しい退き際を迎える者」、「早めの世代交代を目指す者」だというものでした。「いやはや、社長になったばかりなのに、退き際を考えろとは、すごい本を読んでしまったなあ…」と絶句した記憶があります。 しかし、良く考えれば当然のことです。生物学的に考えても、組織が健全に成長するためには新陳代謝が不可欠です。古い者がずっと居座っていては、組織が腐敗してしまいます。 ですから、組織の責任者たる者、自分の後継者を育成し、退き際が来たと感じたらサッサと世代交代をするべきだというわけです。責任者の位置にしがみつき、なかなか引退しないで組織を腐らせてしまう「汚い退き際」は絶対に避けるべきだというわけです。 本書は経営者向けに書かれていますので、要職に就かれている人(責任者)にはストレートに参考となるものです。しかし、要職に就いていない教会員の皆様にも、実はとても参考となるものだと思います。なぜなら、教会員は皆「氏族的メシヤ」ですから、氏族の責任者に他なりません。 本書にも、こう述べられています。 経営者には、リーダー、代表者、設計者という三つの役割の背後に、経営理念の策定者、経営理念の伝道者としての役割があるのである。(P59) 私たち教会員は天の理念の伝道者ですから、世の中の経営者と相通ずるところが多いはずです。 さて、本書が世代交代にこだわっている理由ですが(もちろん世代交代のみを論じている本ではありませんので、念のため)、日本の組織に共通する問題があるためです。下記に引用します。 大きな組織の統率、苦渋に満ちた決断といった、経営者が育つ三つの条件のうちの「仕事の大きさ」という条件が機能しにくい本質を、日本の経営がもっていたことを意味している。(中略)そうした問題を一気に悪化させたのが、七〇年代半ばからの、組織に働く人々の平均年齢の高齢化である。(中略)日本企業の多くはそれまでと同じように、ある一定の年齢を超えると「管理職」として遇するという基本姿勢を大きくは変更しなかった。(中略)人は若いころに経験する仕事の大きさに応じて育つ。その仕事の場が小さくなり、経験の始まる年齢が遅くなっていった。経営できる人材が育ちにくくなっていく環境が、いつのまにか組織に中に作られていったのが、七〇年代半ば以降の日本だったのである。(P128〜130) 要は、古い人間が要職に就いたまま組織に居続けるので、あとから入った若い人材が大きな仕事を経験できなくなり、結果として次期リーダーとして育っていかないということです。これは、少子高齢化が進んだ日本のあらゆる組織に共通する問題でしょう。 だからこそ、本書ではリーダーの退き際や世代交代を重視しているわけです。自らが引退時期を意識して仕事をしていない限り、真の意味で後継者育成に取り組むことはできないからです。このように結論付けています。 退き際を早めに自ら作るということは、別な言葉でいえば長期政権を自ら否定するということである。その健全さは、権力の世界での古い格言にもかなっている。昔から、こういう。「権力は腐敗する。絶対権力は絶対に腐敗する」。退き際を早めに自らつくるのは、権力への腐敗への対策なのである。(P224) 私たちの統一教会でも、韓国でやっと二世の会長が就任しました。お母様の英断ですが、私は率直にそれでも遅すぎたと思います。もっと早く、二世に教会組織の要職を任せるべきだったと思います。本家の韓国でこの程度ですから、日本教会はまだまだです。早めの世代交代が願われます。 教会内に様々な問題を抱え、外部からも様々なプレッシャーがある中で、教会組織を二世に引き継ぐことについて、一世のリーダーが心配に感じることは理解できます。 「蕩減は一世が担う、二世には創造本然の道を行ってほしい」と語る一世リーダーもいました。それも理解できます。しかし現実は、そんなに悠長なことは言っていられません。一世が絶えたあとに、まだ蕩減が残っていたら、二世は何もできなくて重荷に潰されてしまいます。 今やるべきことは、わが教会が抱える内外の様々な問題を二世と共有し、彼らと共に問題解決に取り組むことでしょう。そのためには、まず一世が問題を主観的・客観的に自分の中で統一している必要があります。宗教(主観)と科学(客観)の統一です。これができていないと、二世と議論ができません。 二世は、一世の想像をはるかに超えて、いろいろな問題を知っています。インターネットなどは、二世のほうが使いこなしていますから、なおさらです。彼らが疑問に感じることについて、率直に話し合える土壌が教会には必要となってくるでしょう。少なくとも、家庭内でそのような土壌は早く作っておくべきです。 問題を解決できず、二世に十分な環境をつくってあげられなかったことは、一世としてはなかなか認めたくないでしょう。でも現実は問題山積なのです。その問題解決を二世が引き継ぐということを、二世本人はもちろん、一世もよく理解する必要があります。 そして、引き継ぐのは早いほうがいいのです。そういうことを述べているのが本書です。組織に残された問題解決という大きな仕事を、若いうちから経験させることこそ、次世代のリーダーを育成する適切な手段なのです。 修練会だけ参加させたって、リーダーなんか育成できません。いい大学を出たって企業で役に立たない人間がいるのと同じです。 さまざまなセクションで責任者を務めておられる方は、ぜひ自らの退き際を設定し、今日からでも後継者育成に取り組むことを進言いたします。 |
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>二世は、一世の想像をはるかに超えて、いろいろな問題を知っています。 |
海外在住 2013/12/15 17:33 |
●海外在住さん |
小林浩 2013/12/15 18:00 |
はじめてまして。教会で二世教育に携わっています。 |
ますみ 2013/12/16 22:15 |
●ますみさん |
小林浩 2013/12/17 06:53 |
季節が自然と巡り移るように交代できないのは、親世代と子世代の一体化がネックだと思います。 |
光太朗 2013/12/17 23:41 |
●光太朗さん |
小林浩 2013/12/18 06:24 |
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