この連載を担当したカンダです。私が、データを活用する意味を、時に熱く、時にくどいほど語ったのには理由があります。今回は、あるECサイトを運営していた頃、データを活用することで、売上を倍々ゲームで増やした私の経験をお伝えします。
人気ドラマ「半沢直樹」の主人公ではありませんが、現場の担当者はさまざまな課題や、理不尽な問題に直面しています。約10年前、とある小売企業に勤務していた私も、大きな課題にぶつかりました。私を含めて3人だけという、小所帯のECサイトの運営チームへ異動となったのです。
運営チームの予算は少ない。→予算が少ないから、売上向上の施策が打てない。→売上は上がらない。→さらに予算が減らされる。
そんなマイナス方向のループが回り続けているチームへの異動で、私は落胆しましたが、ある人物の体験がループをプラス方向に変えるヒントをくれました。
その人物が、元プロ野球選手・監督の野村克也さんです。南海、ヤクルト、阪神、楽天の監督を歴任し、それぞれのチームで確固たる成績を残した野村監督(あえて、監督と呼ばせていただきます)。万年Bクラスといわれたヤクルトを立て直し、黄金時代を築き上げたことは、とりわけ印象深いですね。
選手としても、右投げ右打ちの強打者で、三冠王1回、ホームラン王9回、打点王7回、通算ホームラン数は657本で王選手につぐ歴代2位という、輝かしい記録を残しています。
そんな野村監督、プロ野球人生はテスト入団からスタートし、ポジションはブルペンキャッチャー。入団した年のシーズンオフにクビを言い渡されたこともあったそう。そんなスタートだった選手が、なぜ名選手になれたのか。それは、わずかなチャンスも見落とさず、データを細かく集め続けていたからなのです。
野村監督は、現役選手だった1960年代に、映画用16ミリカメラを購入し、ライバルの稲尾投手のピッチングフォームを録画し続けました。写真でさえ高級品であった時代に、わざわざ映画用カメラを購入したのは、稲尾投手の変化球を投げるときの癖を見つけ出すためでした。ヒットとホームランを打つために、ここまでしてデータを集め、ヒットを打つ確率、ホームランを打つ確率を高めていったのです。
マイナス方向のループにはまっていた運営チームに異動した私は、野村監督を見習い、“ダメな理由”を探るべく、詳細なデータを集め始めました。ダメが事細かに見えてくることで少々落ち込みましたが、ダメな理由も「手の施しようがない」ものと、「手の施しようがある」ものに分類できることがわかりました。ここまでくれば、しめたもの。「手の施しようがある」ものに対してドリルダウンを続けると、小さな成功パターンが見えてきます。
運営していたECサイトの商品ラインナップは結構な数でしたが、売れ筋はごくごく一部。ほとんどはまったく売れない商品であり、一部に「1日に1個、コンスタントに売れる」商品群がありました。フォーカスしたのは、この「1日に1個、コンスタントに売れる」商品群です。
1日に1個コンスタントに売れる商品群を、1日平均1.1個売れるようにする。1日平均1.5個売れるようにする。1日に平均2個売れるようにする。これを実現するためのPDCAサイクルをひたすら回し続けました。
「1日に1個、コンスタントに売れる」商品群が「1日に2個、コンスタントに売れる」商品群となった頃、マイナス方向のループは止まりました。ここからプラス方向のループがスタートです。
では、具体的には何をしたのか。それはこの連載でお伝えした通りです。データを集める、データを見える化する、マイニングをする、その結果をベースにキャンペーンを実施する、キャンペーンの結果を取り込む、さらにデータを見える化する……このサイクルを繰り返すことで、ECサイトの売上を倍々ゲームで増やすことができました。
野村監督の名言に、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」があります。江戸時代、肥前国平戸藩の藩主だった松浦静山の剣術書『剣談』からの引用ですが、野村監督が言ったことで、有名になった言葉です。
ヤクルトの監督時代には「人生の最大の敵、それは鈍感である」という名言も残しています。鈍感では、どこに問題があるかわからないし、問題があることにも気がつかない。どこに問題があるのか、その問題はどうすれば解決できるのか。敏感になってこそ、初めて問題に気がつき、その解決方法を見つけることができるのです。
データを用いて何かを行う、データマイニングの結果でキャンペーンを行うといっても、何も派手なことばかりではありません。びっくりするような結果が出てくるようなこともありません。そのほとんどは地道な作業ばかりです。ただ、この地道なデータマイニングという作業をひたすら続けた先に、成功が待っているのです。
ご愛読ありがとうございました。「仕事の合間に! 3分間データマイニング入門」は今回で最終回です。データマイニングに興味を持った方は、お気軽に弊社にご連絡ください。
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