これまで、説明してきたデータマイニングの手順はちょっとお休み。今回は特別編として、実際にデータマイニングを収益につなげているセブン-イレブン、コマツ、ヤマト運輸、しまむら、計4社の事例をご紹介します。
2012年度の売り上げは3兆5,084億円。日本のコンビニ業界の王者、セブン-イレブンのデータ戦略の根幹となっているのが「tanpin kanri」です。
商品を最小管理単位SKU(Stock Keeping Unit)でデータ管理する「単品管理」。海外ではユニットコントロールといわれ、その手法自体は1960年代からあります。セブン-イレブンがすごいのは、管理手法から拡販の武器へ、「単品管理」から「tanpin kanri」へ進化させたところです。
これまでの「単品管理」の対応範囲が、商品計画や在庫管理であることに対し、進化した「tanpin kanri」は商品管理全般や経営戦略までカバーします。また、「単品管理」が“分析の方法論”であるのに対し、「tanpin kanri」は“実践の手法”となる点が大きく異なります。
具体的な例を挙げると、「単品管理」では“ツナマヨのおにぎりが、昨日5個売れた”となるところを、「tanpin kanri」では“1日平均2個しか売れないツナマヨのおにぎりが、昨日5個売れた”となります。昨日5個売れた事実だけでなく、普段より3個余分に売れたことがわかるというわけです。
こうしたことが把握できると、近くで道路工事があると余分におにぎりが売れる、最高気温が30度を超えるとアイスもあわせて売れる…など、深掘りした仮説が立てられるようになります。要因分析、将来予測、および仮説の検証ができる「tanpin kanri」は、セブン-イレブンの大きな武器となっています。
「KOMTRAX(コムトラックス)」は、世界第2位の建設機械メーカー・コマツが開発した、建設機械の情報を遠隔で確認するシステムです。街中だけでなく、山奥のダム工事や砂漠の中での鉱山開発など、世界中のさまざまな建設現場で活躍するコマツの建設機械。急に整備が必要になっても、すぐに駆けつけるのは困難な場所にあることがほとんどです。また、盗難の危険とも常に隣り合わせに。それらを解決するために開発されたのが、コムトラックスです。
建築機械がどこにあるかすぐにわかるよう、GPSを装備し、その情報を通信回線で常時送信。これに稼働状況をあわせれば、盗難で移動しているのか、作業の都合で移動しているのか、すぐにわかります。さらに、各建設機械の稼働状況がリアルに把握できるので、「このまま稼働時間がかさむと消耗品の交換が必要になる」「このペースの稼働ならば、消耗品の交換は5営業日後」といったメンテナンスのタイミングまで、離れた場所からわかるようになります。
コマツは、多くの情報をより高い信頼度で分析し、その結果を業務に反映できるよう、省燃費運転支援サービスや保守管理サービスなど、コムトラックスの進化版もリリース。ビッグデータブームの中、注目を集めています。
クロネコヤマトの宅急便でおなじみのヤマト運輸。街中を走るクロネコヤマトのトラックには、走行データを“見える化”する「See-T Navi」という端末が搭載されています。
対象となる走行データは、スピード、距離、時間、急発進、急加速、燃費情報、危険エリアや走行禁止箇所などが書き込まれた電子地図などです。どんなルートで、どのように荷物を運んでいるのか。付随する情報まで詳細に把握することで、安全運転と省燃費を実現させています。
また、基幹システム「次世代NEKOシステム」と連携させることで、配達先に詳細な届け時間を電子メールで通知することも可能になりました。ヤマト運輸では、公共機関への気象情報や渋滞情報の提供、冷凍・冷蔵庫のきめ細かな温度管理機能の追加なども予定しています。
郊外を中心に、衣料品チェーンストアを展開するしまむら。しまむらの店舗には平均約5万点の商品が並んでいます。これは「他人と同じものを着るのはいや」「選択肢が広いと楽しい」という客の思いを叶えるという、運営ポリシーから生まれたものです。
来店客にはうれしい5万点のラインナップですが、店舗運営サイドはたいへん。ニーズとずれた5万点を並べると、すべて在庫となってしまうからです。
そこで、しまむらでは1店舗の商圏を「5,000世帯=平均購買力10億円」と設定。この5,000世帯が好むであろうファッションの志向を想定し、顧客ターゲティングを行いました。この顧客ターゲティングをもとに、商品の売れ筋・死に筋を判断できる運営体制を整え、その情報を自社だけでなく、製造業者と共有する仕組みまでつくり上げています。
リアルタイムで販売データを関係者と共有し、そのデータを元に仮説検証をすることで、しまむらは同業他社にはないビジネスモデルをつくり上げたといえるでしょう。
■参考文献:岩本浩治著『商売で大事なことは全部セブン-イレブンで学んだ』商業界
■参考サイト
KOMTRAX STEP 2の開発と展開 http://bit.ly/13oxrvp
「成功するまで継続する」ことでイノベーション・レベルに達し、グローバル・ビジネスをリード http://bit.ly/12x5XZz
運転を“見える化”し 環境・安全もお客様満足も向上 http://nkbp.jp/17aRvTa
繊維業界の顧客データの活用事例 http://bit.ly/14dgScf
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