ビールとおむつは、一緒に購入される確率が高い。こうした事実を見つけても、ビールとおむつ、両方販売している店でなければ意味はありません。第2回は、データマイニングの具体的な活用例を見ていきます。
データマイニングの活用例として、2つの事例をご紹介しましょう。まずは、2012年、アメリカのミネアポリスで実際にあったと言われている事例です。
女子高校生宛てに、大手ディスカウントストア「ターゲット」から、ベビー服とゆりかごのクーポンが送られてきました。
「うちの娘が妊娠しているというのか!まだ高校生なんだぞ!」
このクーポンを見つけた父親は、ターゲットに怒鳴り込みました。すると、女子高校生はほんとうに妊娠していたのです。
彼女は、妊娠のことを誰にも打ち明けていません。もちろん、ターゲットも妊娠のことは知りません。ところが…
購買履歴が妊婦と類似。→購買パターンが妊婦に分類できる。→この客は妊娠している。→赤ちゃん用品をすすめれば、喜ばれるし、商品を買ってくれる。
ターゲットの担当者は、こう考えたのでしょう。妊娠の事実は、しっかりとデータに表れていたのです。予測を大正解とすべきか、裏目に出たとすべきか、その判断はつきませんが、クロスセル※1・アップセル※2のためのデータマイニング活用例としてよく挙げられる事例です。
もう一つは、イギリスに本拠を構える大手スーパーマーケット、テスコの事例です。
テスコの日本での知名度は低いですが、スーパーマーケットの売上高では、米ウォルマート、仏カルフールに続く世界第3位。本国イギリスでは、もちろん売上第1位です。
1990年代前半までは、Sainsbury'sに次ぐ全英第2位だったのですが、そこからわずか15年で第1位となりました。その最大の推進力が「クラブカード」というポイントカードであり、影の立役者がデータマイニングだったのです。
クラブカードの仕組みはシンプルです。5ポンドごとの買物に1ポイントが賦与され、50ポイント貯まれば2.5ポンド分のクーポンがもらえます。日本のポイントカードのように、細かいレート設定はなされていません。
「なんだ、これだけ?」と思われがちなのですが、クラブカードは顧客の購買行動に紐付き、顧客のライフスタイルも洞察できるような仕組みを整えています。
それぞれ購買行動を80パターン、ライフスタイルを27パターンに分類し、ここから12万通りのクーポンパターンを作り上げ、顧客にぴったりなクーポンを毎回発行。これにより、来店回数を増やし、顧客単価を向上させ、全英ナンバー1のスーパーマーケットになったのです。
これはクロスセル・アップセルだけでなく、データマイニングをCRM※3に用いる事例としてよく挙げられます。
アメリカとイギリスの例を紹介しましたが、実は私たちの生活もすでにデータマイニングに囲まれています。
コンビニで販売されているおにぎりの販売予測、Web広告の表示、カーナビのルートガイド、天気予報、地震予測。これらすべてがデータマイニングなのです。
データマイニングは、プロ野球の世界でも大流行。米メジャーリーグではおなじみ、セイバーメトリクスというデータマイニングの手法は、日本のプロ野球にも導入され、日本ハムファイターズが躍進を遂げました。
大量のデータの中から、事実を見つけるデータマイニング。でも、なにかしらの事実を見つけるだけでは、データマイニングをビジネスに活かすことはできません。データマイニングのメリットを実感するには、見つけ出した事実をマーケティングやセールス、CRM領域などにどう展開するか。そこがポイントになってきます。
次回は、マーケティングに活用できる、データマイニングの手法をご紹介します。
※1 クロスセル・・・購入予定の商品に関連する商品など、別の商品を組み合わせて購入してもらうこと。
※2 アップセル・・・顧客の希望よりも、上位で高価な商品を購入してもらうこと。
※3 CRM・・・Customer Relationship Managementの略。情報システムを使って、顧客と長期的な関係を築く手法。
■参考文献:C.ハンビィ/T.ハント/T.フィリップス著『Tesco顧客ロイヤルティ戦略』海文堂出版
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