原爆症:認定緩和了承 4疾病対象10倍に 厚労省分科会

毎日新聞 2013年12月16日 22時04分

 原爆症の認定制度を巡り、厚生労働省は16日、がん以外の心筋梗塞(こうそく)など4疾病について、認定基準を緩和する案を同省の被爆者医療分科会に示し、了承された。分科会は来年1月から新基準で認定の可否を判断する。基準緩和により、4疾病の認定者は従来の約400人から10倍になると試算しているが、被爆者団体は「認定者が大幅に増えるとは考えられない」と批判している。

 現行基準はがんなど7疾病について爆心地から約3.5キロ内の被爆を認定の目安にしている。そのうち心筋梗塞、甲状腺機能低下症、慢性肝炎・肝硬変、白内障の4疾病は、放射線が原因であることを示す「放射線起因性」が認められる必要があり、実際は爆心地から約1.5キロ以内の被爆しか認定されないケースが大半だった。

 新基準では、白内障を除く3疾病は「放射線起因性」の要件を削除し、爆心地から約2キロ以内で被爆したか、投下翌日までに約1キロ以内に立ち入っていれば積極的に認定する。白内障については約1.5キロ以内の被爆で認定するよう変更する。

 また、がんや白血病は爆心地からの距離などの要件は変えず、「積極的に認定」から「原則認定」に改める。

 被爆者団体側は認定制度の見直しを議論する同省の検討会で、非がん疾病の基準をがんと同様にするよう主張。他の委員の反対意見と併せて両論併記の最終報告書がまとまった後、政治判断による大幅緩和を求めて与党議員らに働きかけたが、小幅な緩和にとどまった。【桐野耕一、吉村周平】

 ◇解説 行政と司法判断 乖離続く

 原爆症を巡っては、行政に不認定とされた被爆者を裁判所が原爆症と認め、救済を繰り返した経緯がある。司法が行政に大幅な制度見直しを迫ってきた形だが、今回の新基準も現行制度の一部修正にとどまった。被爆者団体は「訴訟を続ける」としており、行政と司法の判断基準の乖離(かいり)が続くことが予想される。

 約20万人の被爆者健康手帳所持者のうち、原爆症認定者は約4%に過ぎない。国が2008年4月に基準を緩和した後も、各地で100人以上が認定を求めて提訴している。国は非がん疾病の基準が分かりづらかったためと考え、今回の見直しで明確化した。

最新写真特集