原爆症認定:「切り捨ての新基準だ」被爆者団体から批判
毎日新聞 2013年12月16日 22時06分(最終更新 12月17日 02時19分)
「切り捨てのための新基準だ」。原爆症認定制度を巡り、厚生労働省の被爆者医療分科会で新しい審査基準が決まった16日、現行制度の微修正にとどめた国側の消極的姿勢に対して、被爆者からの批判の声が相次いだ。
記者会見を開いた日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳(てるみ)事務局長は「厚労省は『科学的知見を超えた拡大』というが、司法が既に救済している範囲からすれば全然拡大ではない」と指摘し、分科会を「形式的な茶番だ」と痛烈に批判した。
原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会の宮原哲朗弁護士も、がん以外の4疾病の認定者数が、基準緩和により約400人から約4400人に増えるとした厚労省の試算について、「厚労省は認定数が10倍になる根拠を示していない。基準緩和を印象づけたいためのマスコミ対策だ」と語った。被爆者108人が全国で原爆症認定を求め訴えている「ノーモア・ヒバクシャ訴訟」の山本英典・全国原告団団長(80)も「新基準は救済を拡大するものではなく、死ぬまで裁判で闘い抜くしかない」と話した。
一方、松井一実・広島市長と田上富久・長崎市長は16日、国の原爆症認定新基準の了承に先立って首相官邸を訪れ、原爆症認定制度の改善を求める首相宛ての要請文を提出。受け取った加藤勝信官房副長官は「新基準運用の中で検証していきたい」と応じたという。
田上市長は要請後、「長崎市の試算では、新基準でも対象にならない人がたくさんいる。そうした人たちが(認定を)諦めたり、裁判しかないとなることを危惧する」と述べ、松井市長は「高齢化する被爆者に配慮した運用が可能になる方向を目指してほしい」と話した。【吉村周平】