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第三章:取り残される者と、嘲笑う者と、前を向く者
第13話:神獣 後篇

「サララ、もっと急いでちょうだいな!」
「これでも全力だよ!」

 馬であっても5分は掛かるジグザグ道を直進し、わずか数十秒という時間で神獣の真下まで駆け付けたサララとナタリアは、早速行動を開始した。

「ナタリア! あなたは上から塊を攻撃して! 私は下から攻撃する!」

 その場に立ち止まったサララは、槍を腰だめの位置で構えると、気功を練り始めた。

「分かったわ! やれるだけやってみる!」

 ググッとナタリアは両足に力を込める。細くて小さい両足がビキビキと脈打って、倍以上に太くなる。一瞬にして胴回り以上に大きくなった両足が、力を解放した。

「――だっ!」

 びゅん、とナタリアの身体が青空へと跳んだ。距離にして数十メートルの高さまで上昇したナタリアは、サキュバスとしての力を用いて、身体の位置をその場に固定する。神獣の巨大な瞳がギロリと向けられるのと同時に、ナタリアは大きく息を吸って胸の中で魔力と混ぜ合わせると……一気に解き放った!

 {破壊の息吹}!

 真空の刃と衝撃波が合わさった、破壊の風。その威力は容易く地面を抉り取り、障害となる相手を細切れにする。かつてはマリーたちに放ったこの技を、ナタリアは全力で塊へと放った……のだが――。

(――くっ、やはり大きさが違い過ぎる! 少しは削れているけど、壊すのは無理だわ!)

 それでも、威力が絶望に足りなさ過ぎた。ナタリア自身、最大と言っていいぐらいに力を込めたつもりだが、結果は塊の一部を削るのが精いっぱいであった。
 となれば、息が続く限り{破壊の息吹}を続けて、少しでも時間を稼ぐしかない。それを瞬時に理解したナタリアは、息苦しさを覚えながらも{破壊の息吹}を放ち続けた。
 そして、その下……神獣とナタリアから少し離れた場所で立ち止まっていたサララは、静かに全身の気を循環させていた。
 大きく息を吸って、大きく吐く。体全部を一つの循環器として捉え、全身を流れている気の流れを、より早く流れる様にイメージする。気の練り上げをいつもよりも深く、いつもよりも大きくしていく。

(ゆっくり……焦るな……ゆっくりと……)

 気功術によって活性化した筋肉が脈動し、サララの身体を一回り大きくさせる。発動した後の負担が大きいため、滅多な事ではやらないが……そうもいっていられない。
 静かに、槍の刃先を塊へ向ける。本当は直接対象に当てる技だが、あの塊まで届く技はコレしかない。ゆっくりと、サララは腰を落とした。

「奥義――」

 ゆらりと槍が動いた……次の瞬間、サララの身体は技を放った後であった。

「――滅葬めっそう!」

 ボッ、と遅れて広がった衝撃波が、サララを中心に吹き荒れる。一閃のごとき放たれた一撃は、見えざる刃となって天へと昇って行き―ー。



 塊の一部に穴が開いた。もしかして破壊出来たか……と思ったマリーたちの前で、小さな岩山と思える程に大きくなった塊が、ボン、と鈍い音を立てて発射された。
 マリーたちの反応は、早かった。イシュタリアは斧を放り捨て、マリーは二度目となるフルパワー状態になる。そして、ドラコは大空へと飛び立った。

「ドラコ!」

 マリーの発破をかける声に、ドラコは力強く頷いた。

「任せろ!」

 放射線状を描いて飛んでくる巨大な瓦礫の塊へと飛ぶ。直径にしてドラコ五人分以上はありそうな塊へ瞬時に接近すると、「――やっ!」渾身の一撃を放った。
 だが、その程度で止まるわけがない。辛うじて軌道を少しだけ下方へ向けることは出来たが、ドラコ自身は塊を避けきれず、叩きつけられるようにして塊に跳ね飛ばされた……が、全身の激痛に声すら出せなくとも、ドラコはニヤリと笑みを浮かべていた。
 軌道を下方へと修正する。それが、ドラコの狙いだったからだ。そして、なんとか軌道を変えた先には……マリーとイシュタリアの二人が、万全の体勢で待ち構えていた。

「――っ、イシュタリア! 来るぞ!」
「分かっておる! 潰されるでないぞ、マリー!」

 迫りくる巨大な塊に、二人は両手を前にかざして腰を深く落として踏ん張る……塊が二人の掌に直撃した瞬間、ずどん、と二人の両足が半分以上地面に沈んだ。

「――っ!!!???」
「――っ!!!???」

 二人の声なき悲鳴が、打突音にかき消される。全身がバラバラになったかと錯覚するほどの衝撃。あまりの衝撃に思考が一瞬で真っ白に染まり、突き出した両手から感覚が消失する。バキバキと地面に四つの溝を作りながら二人の身体は後退し、それに合わせて瓦礫の塊が二人を押し潰さんと重圧を掛けてくる。

 お、押し潰される!

 それを無意識に悟ったマリーとイシュタリアは、ほとんど反射的に身体を少しだけ左に傾けた。それによって、受け流されるようにして軌道を逸らされた塊は、なんとバウンドしながら、いまだ倒壊していなかったいくつもの建物を押し潰していく!

 そのまま数回バウンドして数十件の家々を平らにした塊は、ゆっくりとその場に静止した。

 と、次の瞬間。塊にヒビが入ったと思ったら、塊で有ったのが嘘だったかのように瓦礫へと姿を変え、粉塵を巻き上げながら崩れ落ちた。

 ……ギリギリのところであった。
 もしこれがまっすぐ後方へと向かっているか、あるいはマリーたちがここで止めていなかったら、北端へ逃げていた住人たちに多大な被害が出ているところであった。

「――っ、かはあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ……」
「――っぐ、げほ、げほげほ、げはあ、はあ、はあ……」

 衝撃で破けたドレスから、肌が見え隠れしている……が、二人にそれを気にする余裕は無い。辛うじて全身のかすり傷程度で済んだ二人は両足を地面にめり込ませたまま、倒れ込む様にして仰向けになった。
 ほんの短い間。しかし、その一瞬の間に、二人は長時間ぶっ通しで動き回ったぐらいに息が切れてしまっている。今の攻撃を受け流すだけで、それぐらいの体力を消耗させられたのである。
 むくりと身体を起こしたのは、マリーの方が早かった。しかし、立ち上がろうと手をついた瞬間、うっ、と息を呑んで顔をしかめる。掌に視線を落としたマリーは、舌打ちをした。

「はあ、はあ……ってえ、ちくしょう。掌の皮が擦り剥けてやがる……どうりで痛えわけだ」

 それだけでなく、『ファイバー』の持ち手の部分が歪に変形し、一部分は鋭い刃となっている。「買ったばっかなんだぞ、どうしてくれんだよ……!」飛び去って行く金貨を思い浮かべながら、苦心して指から『ファイバー』を取り外すと、その場に放った。彫られた魔術文字式の部分が変形しているので、もうそれは『強度のあるナックル・サック』でしかなかったからだ。
 掌の痛みを堪えて立ち上がろうと……した途端、鼓膜が破れんばかりの爆音がマリーの全身に叩きつけられた。邪魔をされたことに対する神獣からの怒りの咆哮であった。それでも、最初の一発よりは弱い。
 しかし、堪えるという点では一緒だ。反射的に耳を押さえて蹲るマリーへ追い打ちをかける様に押し寄せてくる突風。蹲っていたマリーはもちろん、息を整えていたイシュタリアの身体が、フワッと空へと舞い上げられた。

「――っ!!??」

 回転する視界の中で、マリーは無意識の内に体勢を立て直す。痛みすら覚える程の耳鳴りに顔をしかめながら地面に着地する……眼前に迫りくるイシュタリアを見て、慌てて抱き留めた。
 あっ、と思う間もなく、二人の身体がゴロゴロと石ころのように地面を転がる。たっぷり八回転ぐらいして砂まみれになった後、二人は仲良くうつ伏せになった。

「…………あああ、これはむりじゃな。かてるきがまったくせんのじゃ……ああ、もう、なんだかつかれてきたのじゃ……」

 今度はイシュタリアの方が体を起こすのが早かった。先ほどの爆音で鼓膜が破れたのか、若干イントネーションがおかしくなっている。とはいえ、そのことを気にする様子は無く、ぽんぽんと鬱陶しそうに耳を叩いていた。
 遅れて、マリーがもぞもぞと顔を起こした。

「……やっぱり逃げておけば良かったかもしれん。けっこう後悔の気持ちが沸々と湧いてきている、今日この頃……」

 頭を振って立ち上がったマリーは、口の中に入った砂をブッ、と吐き捨てる。「サララは無事なのかねえ……」体中に纏わりついた砂埃を払いながら、周囲を見回した。

「……もういっそのこと、北端に逃げているやつら囮にするか? 次に同じことされたら、もう俺たちでは防ぎきれんぞ」

 さらりと酷い事を言う。逃げた住人が聞けば絶対怒るであろう発言だ。

「……いくらなんでも、それはほんまつてんとうなのじゃ」
「……ほんまつ、何だって?」

 聞き慣れない言葉にマリーが聞き返すと、「ようやく音が拾えるようになったのじゃ」イシュタリアもマリーに遅れて立ち上がった。

「昔の古い言葉なのじゃ。大事なこととつまらぬことを取り違えることを差すのじゃが、まあ、言うなればアレを殺す代わりに住人全員を死なせてしまったら意味は無いじゃろ……ってことなのじゃ」
「なるほど。さすがはお婆ちゃん……物知りなことだな」
「伊達に年を食っているわけではないからのう……さて、無駄話はこれぐらいにするとして、本当にどうするのじゃ? このままではこっちが消耗するだけじゃし、勝ち目が全く見えないのじゃ」

 そう言われてもなあ……マリーは腕を組んで、うーん、と首を傾げる。眼前に佇んでいた神獣は再び行動を開始し、北端へと歩を進めている。塊を飛ばすことや咆哮は連続で行えないのか、今の所さっきと同じようにただ歩いているだけだ。
 悠々と左右に振られる尻尾が、またいくつかの建物を更地に変えていた。地響きと共に近づいてくる神獣を前にしながら、マリーは考えを巡らせて……顔をあげた。

「……なんか凄い威力の魔法術とか有る?」
「有るには有るが、アレには無駄じゃと思うのう。私の全魔力を持ってしても、少々足止めするので精一杯じゃろうな……おまけに発動までかなり時間が掛かるのじゃ」

 お手上げだと言わんばかりにイシュタリアは万歳をした。

「やれやれ。あの程度の怪物、これが800年前なら一時間と経たずに駆逐出来たのじゃが――」

 そこで、イシュタリアは言葉を止めた。

 んん、800年前?

 気になる単語がイシュタリアの口から出て、思わず耳を澄ませていたマリーの鼓膜を、「そうじゃったああああーーーーー!!!」イシュタリアの絶叫が激震させた。ぐらりと、体勢が崩れたマリーはたたらを踏んだ。

「忘れておった! 完全に忘れておった! そうじゃった、そうじゃよ! アレがあったのじゃ! アレを使えば良かったのじゃ! よっしゃあ! 活路が生まれたのじゃ!」

 二連続の耳鳴り攻撃と、イシュタリアからの無慈悲な物理的揺さぶり。それに加えて、ちゅっちゅっ、と顔中に接吻の嵐を受けて、さすがのマリーもイシュタリアの突然の変貌にドン引きした。

「……わ、分かった。分かったから、ちょっと落ち着け。何をそんなにはしゃいでいるか分からんが、とにかく手を放してくれ」

 力強く唇を吸われて、生気を吸い取られるような気持ちになる。半ば振り払うようにしてイシュタリアを突き飛ばすが、イシュタリアはニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべるだけで、堪えた様子は無かった。

「ナタリアがどこかから持ち帰った黒い玉を覚えておるかのう?」

 黒い玉……と聞いて、思い当たる物はある。素直にマリーが首を縦に振ると、イシュタリアは……さらに笑みを気色悪くさせた。

「アレはな、『爆弾』なのじゃ」
「……爆弾? アレが? あんな形のやつは見たことないぞ」

 マリーが知っている爆弾というやつは、もっと大きくて武骨な形をした鉄塊みたいなやつだ。しかもアレは確か漁猟に使用されていた道具の一つだったはず……。
 というか、マリーの記憶が正しければ、現在では国立の博物館に資料を元に復元された玩具ののような模型があるぐらいで、現在では爆弾の製造技術はどこの国でも失われて久しかったはずだ。
 まだマリーがこの体になる前に、気紛れで博物館へ見学しに行ったから、頭の中には、比較的鮮明にそのときの記憶が残っている。巷では『国が極秘裏に製造方法を復元し、それを管理している』という噂があるぐらいで、辛うじて爆弾と思えなくも無い物と言ったら、アルコールを使用した火炎瓶ぐらいがせいぜいだろうか。
 つらつらとそれらの事柄を思い返しているマリーを見て、だいたいを察したのだろう。イシュタリアは「まあ、今を生きるお前たちが知らなくても当然じゃろうな」とマリーの無知を否定した。

「アレは大昔に使われていた、正真正銘の爆弾……という言い方もなんじゃが、まあ、爆弾なのじゃ。使いどころが非常に限られるのじゃが、その威力は凄まじいものがあってな……あのデカブツですら一発で仕留められるのじゃ」
「……なんでそんなものをお前が知っているのかとか、色々な疑問が湧き上がって来るが、まあ置いておこう」

 しかしなあ……マリーは首を傾げた。こんなときに言う嘘では無い事は分かっているが、正直、半信半疑であった。本音を言うなら、胡散臭い。

「あ、お主、信じておらぬな? まあ、それは分からんでも無い。しかし実際にアレがくたばる姿を見れば、嫌でも納得するじゃろうな」
「……いや、そこを疑うつもりはねえんだけどよ。一つ気になることがあるんだ」

 スッと、マリーは瓦礫だらけの彼方を指差した。

「その爆弾って、確か俺たちが止まっていた部屋に置きっぱなしのはずだろ? あの中から探すのか?」
「……えっ?」

 言われて、イシュタリアはマリーが指差した方へと視線を向ける。そこにあるのは瓦礫、瓦礫、瓦礫、瓦礫……どこを見回しても建物らしきモノは無く、あるとしたら先ほど動きを止めた塊の跡形ぐらいであった。

「たぶん、俺たちの部屋はあの下のどこかだと思うぞ」

 フッとイシュタリアはその場に崩れ落ちた。期待していた分だけ、反動が大きかったのだろう。がっくりと、肩を落としていた。

「ああ、終わったのじゃ……」
「おい、落ち込みすぎだろ。お前どれだけアレに期待していたんだよ」
「期待もするのじゃ。あれ一個で全部解決するところだったのじゃぞ……」

 目に見えて消沈した様子のイシュタリアに、マリーは何と声を掛けていいか分からなかった。
 そのマリーの前に、ふわりと影が下りる……翼をはためかせたドラコであった。「マリー! イシュタリア!」額の所から鮮血を流しながら、マリーたちの元へ駆け寄ってきた。

「無事……なのか?」

 座り込んで俯いたままのイシュタリアを見て、不思議そうに首を傾げた。返事をしないイシュタリアを見て、マリーが代わりに「ああ、大丈夫だよ」返事をした。

「ドラコは……頭を怪我したのか?」

 そっと手を伸ばして、ドラコの頬に触れる。そのことに目を細めたドラコは、静かに首を横に振った。

「なに、かすり傷だ……それよりも、二人に見てもらいたいものがある」

 そう言うと、ドラコは片手に持っていた黒い球体を差し出した。それを見たマリーの目が、ギョッと見開かれた。疲れたように顔をあげたイシュタリアの目も、同様に見開かれた。

「マージィと菊池という男たちと、お前たちは仲が良かったはずだな? 私がここに来る途中、たまたまその二人がこれを持って逃げているところに出くわしたのだ……それを思い出した私がさっきの咆哮から守ってやったら、これをマリーたちに渡してほしいと頼まれたのだ」

 それはまさしくナタリアがどこからか調達して来て、イシュタリアが厳重に保管していたはずの……『爆弾』であった。ドラコ自身はそれの存在自体を覚えてすらいないのか、困ったようにそれをマリーに手渡した。

「よくは分からぬが、『とりあえず何に使えるか分からない物』だったそれを宿屋から持ち出していたらしい。マージィと名乗った男曰く『ベテランとしての直感がこれを必要としている』ということらしいが……いったいこれは何なのだ? 鉄球にしては、ずいぶんと変な形をしているようだが――」
「――よっしゃあ、後でオジサマには特上の酒を奢ってやろう! これでもはや勝ったも同然なのじゃ!」

 ドラコの話を遮る様にイシュタリアは立ち上がった。突然の反応に目を白黒させるドラコを他所に、イシュタリアはひったくる様にしてマリーの手から『爆弾』を奪い取ると、それを両手で持って眼前に掲げた。

 ……と思ったら、チラリとイシュタリアが視線をマリーとドラコへと向けた。

「二人とも……これから私がすることは絶対に他言無用じゃぞ、よいな?」
「分かったよ」

 まあ、話したところで面倒事を引き起こすだけだしな。そんな思いもあって、マリーは了承した。ちなみに、ドラコはそれが何なのかイシュタリアから聞いていなかったので、特に何も言わなかった。

「いいな、絶対じゃぞ。話したら許さぬのじゃ」
「分かったってば」
「誰に何を聞かれても、知らぬ存ぜぬじゃぞ。あ、でも、お嬢ちゃんとナタリアぐらいになら話してもいいのじゃ」
「俺は気が短いから、そろそろ怒るぞ」

 随分と念を押すイシュタリアに、少しばかり苛立つマリー。首を傾げるドラコを他所に、イシュタリアはキョロキョロと誰も見ていないというのに周囲を見回すと、改めて『爆弾』を天に掲げる。

「『YGF-301型、起動』」

 そしてイシュタリアの口から…聞き覚えの無い言葉が零れた。

(――んん!?)

 初めて耳にする言語に、マリーとドラコは思わず目を瞬かせた……が、本当に驚いたのは、その次であった。

『YGF-301型、起動確認致しました。システムチェック……オールグリーン。使用に問題ありません』

「――し、喋った!? なんだそれ、生きてんのか!?」

 思わず、マリーは爆弾から後ずさった。ドラコに至っては、「な、なんだそれは!?」自分の胸のあたりぐらいしかないマリーの背中に隠れるようにして縮こまっている。
 マリーの身体にしがみ付くようにして爆弾を睨みつけている……が、その腰は妙に引けている。生きていない物が喋るという現実に、拒否反応を示してしまったのだろう。
 マリーが驚く→マリーですら気味悪く思う→マリーが気持ち悪く言うのだから、きっと凄く気持ち悪くて気味悪い物→とにかく凄く気持ち悪い物という図式でもドラコの脳裏に生まれているのか……ドラコの目には警戒の色が満ち溢れていた。
 ビクついている二人にチラリと目をやったイシュタリアは、困ったように苦笑した。

「二人とも、怖がることは無いのじゃ……これはただの音声ガイド。この301型はYGFシリーズの中で、唯一音声入力が採用されておってのう……外部の者に使用させないよう、内部に組み込まれたAIの認証を受けねばならないのじゃ……これがまた未完成のポンコツAIでのう……何を血迷ってこんな面倒な仕様にしたのやら……」

(……音声ガイド? AI? 何だ、何を言っているんだ?)

 脳裏に?マークを幾つも浮かべているマリーを他所に、イシュタリアは視線を爆弾へ戻した。そして、再び聞き慣れない言葉で会話を始めた。

「『YGF-301型、緊急事態です。現在、第一級の災害が発生。それに伴って、隔離施設にて収容されていた第一級隔離指定危険生物が逃亡しました。現在、各施設にも重大な障害が発生した模様で、通信機器による一切の応答が行えない状況です』」
『少々お待ちを……確認致しました。半径2000キロメートルに信号を送りましたが、各施設からの応答は無し。また、衛星へのアクセスも不能。第一級の災害が発生していることを了承致します』
「『ありがとう。それでは、さっそく本題に入るわね。現在、その隔離指定生物をこの近くで発見。捕獲は難しく、緊急規定第三項に従って速やかに処理を行うことが、先ほど決定いたしました』」
『了解しました。それでは、起爆コードを入力してください』
「『残念ですが、起爆コードは失われています。また、起爆コードを所有していた指揮官は全員戦死しております。その為、指揮官に準ずる権限を持つ代理人として、起爆の了承を頂きたいのです』」
『少々お待ちを…………半径2000キロメートル内での権限を保有している者は確認出来ませんでした。あなたを代理人と判断する為の情報を入力してください』
「『イシュタリア・フェペランクス・ホーマン……それが、私の名前です』」
『少々お待ちを…………該当する名前が1件、代理人として権限を認めることが出来ます。それでは、本人であるのを確認する為の、新たな情報を入力してください』

 ……そこで、イシュタリアは言葉を止めて俯いた……しかし、その沈黙は長く続かなかった。静かに、イシュタリアは顔をあげた。

「『アルテシア』」

 ポツリと、イシュタリアは囁いた。

(……あるてしあ? 何の意味だ?)

 耳を澄ましていたおかげで、辛うじてその部分だけを聞き取れたマリーは、困惑に首を傾げる。ともすれば見逃してしまいそうな小さな声……けれども、爆弾ははっきりと聞き留めていた。

『……本人であることを確認致しました。それでは、現時点であなたを指揮官に準ずる代理人として認証します』
「『ありがとう。それじゃあ、起爆する準備を始めてちょうだい』」
『起爆に最低限必要な時間は、60秒です。任意で起爆時間を設定することができます。また、起爆準備を始めた場合、最長で56時間まで猶予があり、それを超えた場合、機密保護の為に安全装置が作動、二度と起爆できなくなります。それでもよろしいですか?』
「『かまわないわ。それじゃあ、600秒後に起爆するようセットしなさい。以後、外部からの一切の信号遮断も忘れないでね』」
『了解いたしました。それでは、ただちに起爆準備に入ります。イシュタリア・フェペランクス・ホーマン……あなたの作戦成功を祈っております』


 ……そこで、爆弾の声は途切れた。
 呆然と成り行きを見ていた二人を他所に、イシュタリアは深々とため息を吐くと……チラリと、二人を見やった。

「終わったのじゃ」
「……お、おう。な、何だかよくわからんが、ご苦労様だな」

 恐る恐るイシュタリアに歩み寄ったマリーは、爆弾を見やった。先ほどまで言葉を話していたのが夢だったかのように、今は沈黙を保っていた。

「本当にご苦労なことなのじゃ。全く、なんでよりにもよって301型のような、色々な意味で残念なやつを……おかげで無駄な時間を食ったのじゃ」

 そう言ってイシュタリアは深々とため息を吐くと、おもむろに爆弾をマリーの……後ろに隠れているドラコへと差し出した。ビクッとドラコは肩を縮こませた。

「竜人よ。大至急、コレをアレの口の奥深くに投げ入れてくるのじゃ」
「……投げ入れるだけでいいのか?」

 あんまり触りたくないのだろう。けれども、拒否してはならないことをドラコは理解出来てしまう。嫌そうな顔でありながらも、ゆっくりと爆弾を受け取ったドラコはばさりと翼を羽ばたかせた。

「構わんよ。アレが吐き出さないのを確認したら、急いでこっちに戻ってくるのじゃ。後、もし近くにお嬢ちゃんたちを見かけたら、一緒にこっちへ連れてくるのじゃ」
「ああ、分かった……念のため聞いておくが――」
「もうそいつは喋らんから、安心するのじゃ。グズグズしていると爆発するから、ほれ、行くのじゃ!」

 爆発する、と聞いて、さすがに怖がっている(本人は絶対に認めないだろうが)場合では無い。幾分か慌てた様子で神獣へと飛んで行ったドラコの背中を見上げていたマリーは……おもむろにイシュタリアへと視線を移した。

(……良い、機会なのかもしれないな)

 とはいえ、何から尋ねるべきか……そう思っていると、イシュタリアはククク、と笑みを零した。

「……言いたいことが山ほどある……そんな顔をしておるのう……もっと正確に言えば、何から尋ねればいいか分からん……と言ったところかのう?」

 マリーへと背中を向けたままのイシュタリアであったが、背中に目でも付いているのか……案外、付いているのかもしれない。そうマリーは思いながら、「分かっているなら話は速いな」素直にイシュタリアの言葉を認めた。

「それで、お主は何を聞きたいのじゃ? 先に行っておくが、答えられる回数には限りがあるからのう……よく吟味す――」
「なあ、イシュタリアよう」

 イシュタリアの茶化しを遮る様に、マリーは尋ねた。

「お前、本当のところは……何者なんだ?」

 ……振り返ったイシュタリアの顔には……微笑みが浮かんでいた。その笑みが、不思議とマリーには寂しげなものに見えてならなかった。

「今まではあえて聞かなかったし、俺自身半ば忘れていたことだけど……お前は、俺が“ワーム”によってこの体になったことを知っていたよな?」
「…………」

 イシュタリアは、何も答えなかった。構わず、マリーは続けることにした。

「それに加えて、お前は今の……YGFという爆弾か。なぜ、お前はアレが爆弾だと知っていた? 俺が昔通っていた学校では、『爆弾は漁猟に使用されていた』と教えられた。国立博物館にも似たようなことが書かれて展示されていたし、あんな小さな爆弾が昔に有ったと言うこと事態、初耳だ」
「…………」
「そりゃあ、俺が生まれるずっと前から生きているだろうお前にとっては、知っていて当たり前のことなのかもしれない。何百年も前のことだし、博物館や教科書の方が間違っていたという可能性を否定するわけじゃない……ああ、違う、俺が言いたいことは、聞きたいことは、そんなことじゃねえ」

 ガリガリと、マリーは頭を掻いた。溢れかえりそうになる疑問を抑え込む様にマリーは唸り声を上げると……顔をあげた。

「要は、お前は何者なのか。俺が聞きたいことは、結局のところそれなんだよ」
「…………さあ、何者なのじゃろうなあ」

 しばしの沈黙を置いたイシュタリアは、そう言ってマリーに背を向けた。砂埃で薄汚れた黒髪が、ふわりと風に靡いた。

「……まあ、言いたくないんなら、それでいいさ。最初の出会い方はアレだったが、今では助けられている面は大きいからな。自慢するつもりはねえが、俺はぐだぐだと昔のことを考える性格はしていねえのさ」

 ……マリーは、無理に尋ねようとは思わなかった。なんとなく、イシュタリアの背中が『聞かないでくれ』と言っているような気がしたからだ。
 だからこそ、この話はこれでおしまいでもいい。それでもいいと思って、マリーは話を打ち切った……つもりであった。
 意外なことに、イシュタリアの方から会話が続けられたのだ。

「……お主は、この世界について疑問を抱いたことはあるかのう」
「……随分と幅の広い質問だな……この世界って言うと、俺たちが生きている今を差しているのかい?」

 イシュタリアは、静かに頷いた。返って来た返事はマリーが望んでいた内容と全く違っていた。そのことに思うところが無いわけではないマリーであったが、口に出そうとは思わなかった。

「疑問っていうのがどういうのを差しているかは知らんが、生まれてきた意味とか考えて、眠れぬ夜を過ごしたことはねえぜ」
「……昔、大きな戦争がこの世界に有った。人類史上、最恐最悪と言っていい戦火は世界中に広がり、いつしか本来の目的から大きく外れて、世界の半分を焦土へと変えた」

 また話が変わりやがった。マリーは内心苦笑した。

「それって確か、枯渇しようとしていた資源を各国が独占する為に起こった戦争……だったかねえ。だがそれは、何百年も前の話だろ?」

 マリーは己が知っている常識を答えた。それはマリーだけでなく、この世界に生きる大抵の人々が知っている常識であった。

「……そうじゃな。そういえば、もう何百年も前の話だったのじゃ……月日とは、振り返って見ればあっという間じゃのう」

 ふふふ、とイシュタリアは笑った。けれども、マリーの位置からはイシュタリアがどんな表情を浮かべているかは分からなかった。

「エネルギーが枯渇する前の人類の話を、お主は知っておるか?」
「俺が周りから教えられた限りでは、今とそう変わらなかったと記憶しているよ。ただ、今より探究者の数は少なかったし、今みたいに毎日エネルギーがどうのとかは言っていなかった……って教科書なんかにも書いてあった覚えがある」
「……なあ、マリー。冗談だと思って信じてくれぬだろうと思うのじゃが、エネルギーが枯渇する前はな……」

 ゆっくりと、イシュタリアは天を……太陽が昇る青空を指差した。

「人々は、この空を自由に行き来しておったのじゃ。それも、お主のような魔力を持っていなくとも、お嬢ちゃんのように気功の力を習得していなくとも、竜人のように翼が無くとも、『東京』から『ラステーラ』までを簡単に行き来することが出来たのじゃ」

 ……マリーは、首を傾げた。

「……それはまあ、すげえなあって思うけど……それで、それとこれまでの話と、何の関係があるのかそろそろ教えてくれねえかい?」

 正直、お前が何を俺に伝えようとしているのか全く分からん。そう言おうと唇を開こうとする前に、イシュタリアの声がそれを抑え込んだ。

「じゃが、誰もそのことを知らぬ。戦争によっていくつもの英知が破壊され、いくつもの歴史が失われ、いくつもの言葉が忘れ去られた。じゃが、そのかわりに歴史の表舞台に姿を見せたモノがある」
「姿を見せたモノ?」
「『ダンジョン』なのじゃ、マリー」

 再び振り返ったイシュタリアの顔には……先ほどと同じ、寂しさの香りを漂わす笑みがあった。

「私は破壊された英知を知っている。失われた歴史を知っている。皆が忘れ去った言葉を知っている……じゃが、『ダンジョン』だけは違う。アレだけは……私も知らぬのじゃ」
「知らないって、何が知らないんだよ」
「『ダンジョン』が生まれた時期なのじゃ、マリー……いや、生まれたという言い方は変じゃな。より正確に表すのであれば、見つかった時期……かのう。今まで私はずっとその謎を追ってきたが、いまだに手がかりすら見つかっておらぬ」

 イシュタリアは、チラリと視線を彼方へ向ける。つられてマリーが視線を向ければ、ドラコがこちらに向かって飛んでいるのが見えた。その腕にはサララとナタリアがしがみ付いている……ここから見える限りでは、二人とも無事なようだ。

「あの爆弾は、今から800年前に製造された破壊兵器の一種……現在では完全に詳細が失われた遺物の一つなのじゃ」

 またもや、何の脈絡も無くイシュタリアはそう言った。マリーがイシュタリアへ視線を戻したときにはまた、イシュタリアはマリーに背中を向けていた。

「今回の神獣の件もそうじゃが、お主には他のやつらには無い、特別な何かがある。私は、近々そう考えることが増えたのじゃ」
「……そう言われても、この身体になる前の俺なんて、掃いて捨てる程いるその他大勢の探究者の一人だったぞ」

 これは、本当のことだ。謙遜でも何でもない。はっきり言って、基本的な身体能力の弱体化こそあるものの、魔力等を含めて考えれば、昔とは比べ物にならないぐらいに強くなっている。

「お主のような力のあるモノは多かれ少なかれ、噂と言うものが流れるものじゃ。じゃが、お主は突然現れた。探究者の情報に目を光らせているやつらに一切気づかれることなく、ある日突然にのう」
「……それは、お前も知っていることだろ」

 そうマリーが吐き捨てるように言うと、イシュタリアの後ろ髪が左右に揺れた。

「私がお主のことを知っていたのは、お主が“ワーム”を殺し、その姿になるところをたまたま目撃していたからなのじゃ」
「――っ!」

 瞬間、マリーの喉がヒュウッと鳴った。驚愕に目を見開くマリーに気づいているのか居ないのか……イシュタリアは、振り返らなかった。

「……かつて、お主のようにある日突然噂になった二人の人間を、私は見たことがある。そいつらは今のお主と同じように突然人々の前に姿を現し、数々の偉業を成し遂げ、そして、いつの間にか姿を消した」
「……そいつらとは、いったい誰だ?」

 再び、イシュタリアはマリーへと振り返る。そこに、先ほどまでの笑みは無かった。

「『鬼人』と『聖女』。お主も知っておる通り、今もなお語り継がれる伝説の探究者なのじゃ」
「……おいおい、俺はこういう陰謀染みた話は好きじゃねえんだぞ……」

 その言葉がマリーの口から零れると共に、サララとナタリアを掴んだドラコがマリーの後ろに着地した。「マリー!」転がる様にして飛び出したサララに抱き着かれ、マリーは思わずたたらを踏む。プレートが、少し痛かった。
 遅れて、ナタリアが尻を押さえながらやってくる。どうやら着地の仕方が些か乱暴だったようで、強かに尻餅をついてしまったらしい。「ど、ドラコの飛行はけっこう堪えるわね」多少顔が青くなっているのは……まあ、この際見なかったことにしよう。

「アレは、ちゃんと口の中にちゃんと放り入れてかのう?」

 イシュタリアからの確認の言葉に、ドラコは「ああ、言われた通りに入れてきた。ついでに二人にも話はしておいたぞ」はっきりと頷いた。御苦労、と一声掛けたイシュタリアは、そろそろじゃな、と神獣を見上げると、マリーを呼んだ。

「見るがいいのじゃ。あれが、かつて実際に使われた爆弾の破壊力なのじゃ」

 言われるがまま、マリーは神獣を見上げる。つられて、サララ、ナタリア、ドラコも神獣を見上げる。そこには、今までと変わらず悠然と歩を進める神獣の姿が――!?

 ボン、と爆音が、滅びようとしていたラステーラの町に響いた。

 ビクッと肩をすくめるサララとナタリアの横で、ドラコは顔をしかめて両耳を手で押さえていた。人間よりも小さな音を聞き分ける発達した聴覚が、仇となったのだろう。
 しかし、それとは別に、マリーたちはもちろん、北端へと逃げている住人たちの耳にも爆音は届いていた。それ程の爆音であった……中には何事かと振り返る者もいて、彼らの視線が自然と神獣へと注がれた。

「あれ、神獣が……」

 ポツリと、ナタリアは思ったことを零した。奇しくも、その言葉と同じことを、逃げていた町の住人たちは思っていた……神獣が、動きを止めていたのだ。
 巨大な肉体はそのままに、視線は一点から動くことなく、口は半開きのまま。少しばかり持ち上げていた前足が、空中にて静止していて……その足が、ゆっくりと下ろされる。新たな瓦礫を生み出した神獣は、そのままの勢いでゆっくりと腹を地面に下ろすと……今度こそ、動かなくなった。

 ……町に、静寂が戻った。

 神獣の出現によってラステーラ周辺から鳥が逃げ出し、逃げていた住人たちも固唾を呑んで息を潜めている。半分以上が瓦礫と化した町には活気というものがまるで無い……風も止まっているせいで、町の中は無音と思える程に静まり返っていた。

「……何が、起こったんだ?」

 およそ、住人たちの9割が考えていたことと同じことを、マリーは口に出した。誰しもが首を傾げる中、イシュタリアだけが、「そんなの、アレの身体の中で爆弾が爆発しただけなのじゃ」全てを理解していた。

「密閉された空間にこそ、あの爆弾は真価を発揮するからのう。鋼のような皮膚と鋼鉄が如き鱗で覆われているから、外からは分からんじゃろうが、アレの体内は血みどろのシチューみたいにとろけていると思うのじゃ」

 にわかに信じ難い話だ。だが、実際に神獣は動きを止めているし、力無く神獣の瞼が下りて行く様子を見る限り……本当のことなのだろう。
 しかし、それはそれで……マリーはうむむ、と腕を組んだ。

「俺たちが手も足も出なかったやつが、あんな小さな物でくたばるとはな……物凄く釈然としない部分があるぜ……」

 マリーの言葉に、サララたちは深々と頷いた。特にドラコの反応は顕著で、「酷く、空しい……」複雑な面持ちで死に絶えた神獣を見上げていた。色々、思うところがあるのだろう。

 まあ、ドラコは戦闘前にあれだけ格好いいこと口走っていたから……うん、仕方がない。

 唯一、イシュタリアだけは特に気にした様子……は有った。パチパチと目を瞬かせていたイシュタリアは、軽く唇を尖らしてそっぽを向いた。

「……気のせいか、何か雰囲気がガラリと変わったような気がするのじゃ……主に、おちゃらけた方向へのう……」

 深々とイシュタリアはため息を吐いた。次いで、ははは、と苦笑すると「マリー」と名前を呼んだ。

「まだ何かあんのか?」

 改めて名前を呼ばれて、マリーはイシュタリアへと視線を向ける。そこにはいつもと同じ、底知れぬ何かを感じさせる不敵な笑みがあった。

「『ダンジョン』なのじゃ、マリー。歴史の陰には必ず『ダンジョン』の姿があった。全ては『ダンジョン』に繋がっている……お主がそうなった理由も、何か意味があるのかもしれぬのじゃ」
「……あれ、そういう話をしていたか?」

 正直なところ、マリーはイシュタリアの言おうとしていることの半分も理解出来ていなかった。傍で耳を澄ませていたサララたちに至っては、一割も内容を理解していない。
 ……それに、マリーだけでは無い。イシュタリア自身、自らが伝えようとしていることが何なのか、上手く言葉に出来ていないのかもしれない。イシュタリアの目を見つめ返していたマリーは、ふと、そう思った。

「言っておくが、難しい話は好きじゃないんだ。俺の頭はそういうことを考えるようには出来ていないことを忘れないでくれ」
「……ぬふふ、そうじゃった。お主もけっこう力で物事を考える方じゃったな」
「それはお前も同じだろ。というか、俺たちの中でそうじゃないやつがいるのか?」
「くくく、言われてみれば、おらぬのう」

 困ったように笑みを零すイシュタリアに、先ほどのような寂しげな雰囲気は感じられない。

「それによう……そんな歴史だの、ダンジョンだの、小難しい話をするよりもさ……」

 その事に、何とも言えない嬉しさを感じずにはいられなかったマリーは、それを誤魔化すように視線を瓦礫だらけの町へと向けた。

「大惨事を通り越しているこの町をどうするかを考える方が、先なんじゃねえか? 特に、あのデカブツをどうやって片付けるのかを考えねえと、一か月後には地獄が待っているぞ」

 言われて、キョトンと目を瞬かせたイシュタリアは……あははは、と見た目相応の笑い声を青空へと高らかに響かせる。マリーの後ろで、「……なぜかしら、物凄く苛立っている自分がいる……」指が白くなるまで強く槍を握りしめるサララの姿があった。



 そのマリーたちから、いくらか北東へと離れた地点。神獣の攻撃位置からは外れ、火の手が来ていないそこは、まだほとんどの建物がその形を保ったままであった。
 数度の咆哮によって多少なりともダメージを負ってはいるが、使用には何の問題も無い住宅街の真ん中。普段は子供たちの声でにぎわっているはずの通りはすっかり静まり返っていて……その中で、二人の男が呆然と佇んでいた。
 メガネを付けた男が、初老の男に肩を貸している。メガネを付けた男は菊池、初老の男はマージィ。つい十数分前にドラコへと『爆弾』を手渡して、えっちらおっちら神獣から逃げていたところであった。
 二人ともつい今しがたまで汗だくになって必死に足を動かしていたのだが、今、その足は止まっていた。芯の奥から響いてくる痛みに呻き声を上げながら、マージィはジロリと遠くの方に見える巨大な神獣を見上げた。

「……なあ、にいちゃん。俺の気のせいじゃなけりゃあ、あのデカブツ……動くのを止めてねえか?」
「……いや、気のせいじゃないですよ」

 にいちゃん、と呼ばれた菊池は、ぽかんと口を開けたまま頷いた。脳裏の片隅にある冷静な思考が、『何を立ち止まっているんだ!』と怒鳴っていたが……菊池の足は縫い付けられたようにその場から動かなくなっていた。

「神獣がその場に座り込んでいる……あれは、いったい何をしようとしているのでしょうか……」

 訳が分からない。そう言いたげに目を瞬かせる菊池の横で……マージィが、ポツリと呟いた。

「……もしかして、あいつらがやったんじゃねえのか?」
「――えっ?」

 思わず、菊池はマージィを見やる……かちんと、二人の視線が交差した。

「あいつらが、あのデカブツを仕留めたんじゃねえのか? ほら、見ろ! デカブツの口から血が滴っているぞ!」

 指差したマージィの視線を追って、菊池もそこへ目を凝らす。
 そして……。

「あっ」

 ポツリと、そんな声が零れた。
 ……そのすぐ後、人気の無くなった通りに男二人の歓声が響き渡った。まあ、途中で何度も、痛てて、と呻き声が合間に挟まったが……その歓声が止むことは、しばらくなかった。






 竜人による侵略から始まり、町には数十人近くの血が流れた

 そして、出現する神獣。その力はマリーたちですらどうしようもなく

 町の三分の一を壊滅、四分の一を半壊、その他諸々の被害が生まれた

 幾多の住人たちが神獣の脅威によって命を落とし、怪我をして倒れた

 ラステーラの住人たちは思った

 『ああ、ラステーラは終わった……』と

 誰しもが絶望に心を冷たくする……だが、青空に響く一度の爆音……

 轟いた爆音が神獣の動きを止め、ラステーラの悪夢は終わりを告げる

 外へ逃げ出した住人たちが、神獣の様子を探る為に引き返し始める頃

 いまだ町の北端に留まっていた住人たちの間に広がる、疑問の声

 えっちらおっちら歩いてきたマリーたちから、神獣の死を教えられ

 住人たちは半信半疑ながらも、その事実を受け入れ始めた……




 後に『蘇る惨劇』、『災害竜の再来』と呼ばれるようになるこの事件は、こうして意外な程にあっけなく幕を閉じた。

 しかし、何とも釈然としない結末と思っているのはマリーたちだけ。わけがわからないうちに惨劇が終わったことを知らされた住人たちからすれば、いちいちそんなことを考える余裕は無かった。
 なにせ、神獣がもたらした被害はかつてない規模で、町そのものが、そう簡単に復旧出来るような状態では無かったからだ。

 ……住人たちの心に、絶望が無かったと言えば、嘘になる。

 しかし、住人たちは希望を捨てなかった。それは、一度故郷を見捨てたことに対する罪悪感があったからなのかもしれない。彼らの胸には、確かな活力が有った。





 ……それからしばらくして、『東京』から救援隊がやってきた。救援隊が見たモノは、巨大な怪物によって変わり果てた『ラステーラ』の変わり果てた姿であった。
 しかし、肝心の怪物は血反吐を吐いて力尽きている。救援隊は住人たちを一人ずつ訪ねて回って情報を収集しようとしたが、事情を知る者たちは口を揃えて『美しい少女たちが勇気を持って災害に立ち向かった』と答えた。

 それから幾月の月日が流れた頃。かつて『竜人』と『聖女』の石像が鎮座していた場所に、『4人の戦乙女』の像が立てられた。
 一部の住人からは、『竜人の像も足すべきだ』という意見が上がったが……『竜人の像』が作られるのは、さらに100年以上の月日が流れた後であった。
数々の謎をはらんだまま、神獣戦はこれにてお終い

伏線とか、それっぽいのはさんでいます。展開予想的な感想送るのはやめてね(切実)

あんだけ引っ張っておいてこんなあっさり……て思う人いるだろうけど、元々こんな感じに終わらせるつもりでしたので、幕を引きたかったわけではありません(震え声)

え、ドラコの弟……?
それはエピローグにて。

次回、エピローグにて第三章終了

第四章では『東京』に戻って、新たな話がスタートします
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 MMORPG〈エルダー・テイル〉をプレイしていたプレイヤーは、ある日世界規模で、ゲームの舞台と酷似した異世界に転移してしまった。その数は日本では約三万人。各々がゲームのキャラクターとしての肉体を得た今、プレイヤーたちは高い戦闘能力、「死」からの蘇生能力を備えた英雄的存在〈冒険者〉とよばれ、この異世界で暮らすこととなる。  混沌としてすべてが無秩序になりかける世界の中で、内面的引きこもり体質の主人公シロエがサバイバルを開始。旧友継、無口な美少女暗殺者のアカツキ、先輩格のにゃん太、ミノリやトウヤなどの新人パーティーも加わって、シロエは一歩を踏み出す。  現実世界からの異邦人〈冒険者〉が暮らすアキバの街を中心に、〈大災害〉を乗り越えようとする数万人のプレイヤーの奮戦。  一方、この異世界には〈大地人〉という先住民がいた。ゲーム時代のNPCに酷似したこの世界のあらゆる地域で文明を築いているが、〈冒険者〉と比べたときその戦闘能力は低く蘇生能力もない。この世界では英雄的な力を持つ〈冒険者〉だが、〈大地人〉と比べ、その数は数%にすぎない。この異世界で〈冒険者〉が過不足無く暮らすためには〈大地人〉との関係が必要なのだ。  人と人、文化と文化、科学と魔法、偶然と運命。  異なる位相がふれあう、異世界接触物語。 ――その自重を支える魂の翼持つ〈冒険者〉よ、   竜と巨人が、魔獣と亜人が住まう、幻想の世界セルデシア。   緑の風が薫る、ここは新しく、また旧い大地。   開かれた白いページのようなこの大地に己の生を刻み込め。
  • SF
  • 連載(全63部)
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無職転生 - 異世界行ったら本気だす -(N9669BK)
34歳職歴無し住所不定無職童貞のニートは、ある日家を追い出され、人生を後悔している間にトラックに轢かれて死んでしまう。目覚めた時、彼は赤ん坊になっていた。どうやら異世界に転生したらしい。  彼は誓う、今度こそ本気だして後悔しない人生を送ると。  ※勢いで書いているので設定等に甘い点があり、かつ不定期更新です。  ※感想返信は最新話分だけ活動報告にまとめて書いています。
  • ファンタジー
  • 連載(全157部)
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