原発事故に伴う除染で出た土などを保管する中間貯蔵施設について、政府が福島県と候補地の双葉、大熊、楢葉3町に受け入れを正式要請した。

 いつまでも仮置き場に保管しておくわけにはいかない。東京ドーム23個分とされる量を考えれば、一定の面積も必要だ。

 やむをえない選択ではある。

 受け入れる自治体や住民の心中は推してあまりある。

 3町では置かれた状況に違いがある。原発事故から2年9カ月がたち、生活再建に対する住民の考えもさまざまだ。

 被災者支援策を全体として示し、多様な選択肢を用意して、ていねいに手順を踏むことが何より大事である。

 石原環境相は、汚染土などを30年以内に福島県外に移すことを法制化する意向も示した。地元の不安に対する一つの答え方ではあろう。

 ただ、現実に最終処分地のめどが立っているわけではない。原発から直接出る廃棄物に比べれば放射線量はずっと低いものの、住民の間でも「他県が引き取るわけがない」と話す人が少なくない。

 被災地には、避難にしろ除染にしろ、「これまで国には空手形を切られ続けてきた」との不信が根強くある。繰り返してはいけない。

 対象となる土地の買い取り価格も気になる。環境省は東京電力の賠償と切り離し、通常の公共事業用地の買収基準を適用する考えだが、「賠償と補償の二重どり」といった批判が出ることを心配する声がある。

 目先の交渉を優先させるあまり、地域全体の再建に与える影響や他の政策との整合性を考えずに安易な約束や契約に走れば、新たな分断を招き、禍根を残すことにもなりかねない。

 政府は腰をすえ、先々をにらんで合意点を見いだす努力を続けるべきだ。

 かりに用地買収が順調に進んだとしても、さらなる難題が待ち構えている。

 例えば汚染土の運搬だ。3千万トン以上と試算される汚染土を3年間で運びきるには、連日2千台の10トン車が2往復以上走る必要がある。ダンプやトラックを確保できるのか。渋滞や事故も心配だ。

 草木など燃えるものは事前に各地で焼却して運搬量を減らす工夫がいる。すでに数カ所で施設の建設が計画されているが、焼却に伴う放射性物質の拡散防止や隣接自治体間での情報交換、協力も必要になろう。

 あらためて思う。原発事故の後始末は、かくも困難なのだ。