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【私説・論説室から】

危うい「価値観外交」

 「自由、法の支配、民主主義を守ろうとしたり勝ち取ろうとして努力している国や国民を支援する」。日本版NSCの事務局、国家安全保障局の初代局長に就任予定の谷内正太郎氏は十二日の講演で安倍政権の「価値観外交」をアピールした。前提には日本の民主主義への国際評価がある。フリーダムハウスなど複数の民主化度調査で日本は現在、欧米諸国と並び上位グループに属する。

 しかし特定秘密保護法の強行採決で日本の民主主義への信頼が揺らいでいる。米紙ニューヨーク・タイムズや仏ルモンドなど影響力の強い欧米主要紙は軒並み同法に強い懸念を表明。最もリベラルな英紙ガーディアンは「安倍晋三氏の“新国家主義”は日本帝国主義に逆戻りするか」との見出しで強い疑念を伝えた。

 一方、外務省はウクライナでの抗議デモに対する当局の強制排除を批判し、弾圧停止を求めた。適切な対応である。しかし国内では与党幹事長が市民の抗議デモをテロと同一視し、秘密保護法でも報道統制の志向を隠さない。国外と国内で民主化をめぐる評価基準が異なるのだろうか。

 不吉な兆候もある。「国境なき記者団」による今年の報道の自由度評価で日本は五十三位と前年の二十二位から急降下した。今後、報道統制が強まれば民主化後退との海外の懸念が一気に高まり、価値観外交が土台から掘り崩される可能性は大いにある。(常盤伸)

 

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