大統領が行けば雨が上がる
しかし、次第にメディアの矛先は韓国政府の外交政策に向いた。初めに朴槿恵大統領に対する厳しい批判記事を載せたのは、左派のキョンヒャン新聞だった。
セミョン大学のイ・ボンス・ジャーナリズムスクール大学院長が寄せた記事「青瓦台(大統領府)記者たちは死んだ、民主主義とともに」(11月7日)がそれだ。
“御用メディア”の報道姿勢を批判する長い記事だが、外交に関する部分の要旨は以下だ。
・朴槿恵大統領は就任以来、国内記者とは一度も会見したことがない、という珍記録を持っている。
・(大統領の訪欧に同行した記者たちは)朴槿恵大統領がどこかへ行くごとに「雨が上がり、陽がかんかんと照った」とか、「朴槿恵大統領のファッションに世界が魅惑された」と書いた。
・(記者たちは)大統領に会うこともできず、広報首席にも悪く見られないか戦々恐々としながら、大統領の美談と成果だけを報じているのだ。
普通の韓国人なら「雨が上がり、陽がかんかんと照った」というくだりで、独裁者の登場を瑞祥とともに描く北朝鮮メディアを思い出すことだろう。
韓国人の天動説
この新聞批判が記者たちに衝撃を与えたのかもしれない。その後、保守系メディアにも朴槿恵外交を批判する記事が載り始めた。
朝鮮日報の姜天錫(カン・チョンソク)主筆が書いた「世界は大韓民国を中心に回らない」(11月23日)は、朴槿恵政権の二股外交の危うさを率直に指摘した。
サブ見出しは「同盟は利益も負担も分かち合ってこそ」と「この国の政治家たちは非現実的な色眼鏡を外し、世界を直視する時」の2本。記事の中のハイライトは以下だ。
・北朝鮮という問題児が隣にいる韓国の選択は、最強国の米国ほど自由ではない。島国の日本のように竹を割るごとく二者択一するのも難しい。
・「韓米同盟」と「韓中友好」の間で、どう均衡をとるかは国を挙げて知恵を絞り、手探りするしかない。
・その過程では「統一ムードが熟せば、韓国は『米韓同盟縮小』と『統一への中国の支援』を取引するだろう」というブレジンスキー元・米大統領安全保障補佐官の言葉が、個人的な疑念ではないことを常に念頭に置くべきだ。
・「世界は大韓民国を中心に回っている」と信じるのは危険千万で、何の根拠もない。「政治的天動説」に過ぎない。