最近、統一教会責任者会議の音声や、音声をテキストにしたものが、インターネット上に公開されています。インターネットを利用する教会員の多くは目にしているものと思いますので、私のブログではあえてリンクを貼りません。とても由々しき問題であると思いますので、一筆、論考いたします。 この会議は11月1日に開催されました。11月6日には、本部局長の発言が音声とテキスト(音声を文章にしたもの)で公開されました。この時は、誰が公開したのか名言されていません。11月29日には、現職の教区長であると名乗って(しかし教区や氏名は伏せている)徳野会長の発言がテキストで公開され、「今後何の改善も見られなければ、音声ファイルをしかるべき複数の所に送付しようと考えています」と述べられています。 本当に現職の教区長が情報漏えいしたのかは分かりませんが、この会議は教会長以上の現場責任者が参加しているものですから、現場責任者が情報漏えいしていることは事実でしょう。現場責任者は軽い気持ちで会議の音声を誰かに渡しだけで、”実行犯”は幹部でも何でもない人かもしれません。いずれにせよ、情報を主管できていないその幹部を探し出して、きっちり責任をとってもらうべきです。 現場でこのようなことが起きてしまうということは、現場に不平不満が溜まっている証左です。本来であれば、せっかく全国から責任者がきて会議をしているわけですから、そのような不平不満を率直に会議で述べて、問題解決に勤しめばいいのです。しかし、一般社会でも同じなのですが、その組織に率直な意見を言えない風土があると、外に向かって内部告発をしようとするわけです。「外圧で組織を変えてもらおう」という発想です。 私はこういう手法は好ましいと思いませんが、「そうせざるを得ない状況」は理解できます。組織の方針に異を唱えるということは、組織から追い出される可能性があります。職を失うわけですから、家族を養うことができません。そこまでの覚悟ができないから、匿名で内部告発をするわけです。 自己中心的で卑怯な手段ですが、真剣に組織改革と家族の生活を考えたら、そのやり方を選択することは理解できます(理解できるだけで、容認しているわけではありません)。ともかく、責任者に対する情報リテラシー教育は徹底したほうが良いでしょう。 しかし、会議主催者側にも問題があったと反省するべきでしょう。ハード面の問題は、録音機材などを持ち込ませないことです。外に漏らしてほしくない内容の会議ならば、ボディーチェックくらいするべきです。 でも、もっと問題なのはソフト面です。「情報はどんなに統制しても漏れるもの」だという意識で、仮に漏えいされても困らない内容しか語らないことが大切です。内と外で話を変えているようでは、とてもじゃないですがクリーンな組織とは言えません。表の顔と裏の顔がある、建前と本音がある、ということですから…。特に、宗教団体にとっては致命的な欠陥です。伝道対象者に信頼されません。 とは言っても、議論が白熱してくれば、人間ですから過激な発言や失言なども起こり得ます。そのような発言の一部分だけを切り取って公開するのは、明らかな悪意が感じられます。そういう意味でハード面の対策は不可欠です。 今回、私が最も問題だと感じたことは、「率直な意見を言えない風土がある」ということです。これでは「家族」ではありません。私たちは「人類一家族」を標榜しているのですから、教会内で「率直な意見を言えない」というのではお話しになりません。 責任者たちが、「教会を良くしよう」、「所属信徒を幸せにしよう」、「母の国の使命を果たそう」などということに対して真剣に取り組んだら、現場にはいろんな課題が出るはずです。それを責任者会議で率直に議論できず、偉い人の話だけ一方的に聞いて、悶々として現場に帰って情報漏えいする……というのは愚の骨頂です。 組織運営に洗練されている一流企業でさえ、会議というものは難しいといわれています。ともすると偉い人の独演会になったり、参加メンバーの報告だけで終わったりしてしまいます。会議に参加してひと言も話さない人も多いと聞きます。率直に意見を言い合って、しかし議論を発散させずに収斂させて、みんなで何かを練り上げるということは、たいへん難しいのです。 つまり、会議には高度なスキルが必要なのです。その中核を占める存在をファシリテーターといいます。「ファシリテーターとは何ぞや?」ということを知るには、下記の本がお勧めです。 「ザ・ファシリテーター 人を伸ばし、組織を変える」、「ザ・ファシリテーター2 理屈じゃ、誰も動かない! 」の2冊です。 著者の森時彦さんは、大阪大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業されています。工学博士(PhD)と経営学修士(MBA)を取得している秀才です。本書を執筆していた当時は、日本ファシリテーション協会の理事を努めていました。現在は同協会のフェロー(ご意見番的な位置)です。 本書がとても良いと思う点は、小説になっているということです。こういう分野の普通の解説書ですと、慣れない用語がたくさん出てきて読みこなすのがたいへんなのですが、本書は物語になっているから分かりやすいのです。ファシリテーションに詳しい若い女性主人公が、社長の命を受けて組織改革を任されます。堅物の男性幹部たちを相手に、さまざまな会議をしながら意識を変えていき、社長が願っている目標を達成しようとする物語です。 本書でも出てきますが、幹部になるような人は基本的に「組織を良くしたい」、「社員を幸せにしたい」、「お客様に喜んでもらいたい」と思っています。仕事に対して、それくらいの情熱がないと、企業の幹部にはなれないからです。しかし、情熱があるがゆえに、逆に他の幹部の情熱とぶつかりやすい。率直に意見を言い合うと平行線になりやすいし、互いに傷つく。だから、当たらず障らずになるのです。 しかし、それでは組織は変わりません。そこで必要な存在がファシリテーターです。本書ではファシリテーターの定義を、「人と人とのインタラクション(相互作用)を活発にし、創造的なアウトプット(結果、実績)を引き出す人」としています。そして、そのための技術(ファシリテーション)をふんだんに紹介しています。 私も主人公と同様に、ほとんどが年上の社員だった中で、社長に就任して組織改革をしたので、本書を読んで会議の進め方などを勉強しました。たいへん参考になりました。「いやあ〜、世の中では会議の仕方についても、こんなに研究されつくしているんだなあ」と感心しました。まさに「科学的な会議」です。 宗教と科学の統一を掲げるわが教会の会議には、残念ながらファシリテーターは存在しないようです。早く、ファシリテーション技術を取り入れるべきです。そうしなければ、もっともっと内部告発が続き、最終的には組織が崩壊するようになってしまうと懸念します。 |
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>私が最も問題だと感じたことは、「率直な意見を言えない風土がある」ということです. |
matu8181 2013/11/30 19:32 |
●matu8181さん |
小林浩 2013/11/30 21:14 |
「会議」とはかくも複雑な大変な作業だったのですね。 |
信州のhiro 2013/12/01 12:34 |
●信州のhiroさん |
小林浩 2013/12/01 16:09 |
お久しぶりです。 |
ノボリーキ 2013/12/01 21:14 |
言い忘れました。 |
ノボリーキ 2013/12/01 21:23 |
●ノボリーキさん |
小林浩 2013/12/01 22:04 |
心情文化を目指す素養がある教会ならば、本来内部告発など考えられないと思います。 |
光太朗 2013/12/01 22:25 |
●光太朗さん |
小林浩 2013/12/02 06:31 |
教区長さんや教会長さんなどの公職者の人たちは、私たちの献金で生活したり、私たちの献金を活動に使っているのですから、私たちが納得するような行動や言葉づかいを心がけるべきだと思います。天の公務員と同じです。 |
さち 2013/12/02 08:59 |
●さちさん |
小林浩 2013/12/02 18:52 |
>上層部へ行けばいくほど全体目的を追求する |
光太朗 2013/12/02 20:25 |
●光太朗さん |
小林浩 2013/12/02 20:54 |
>互いが互いの事情を共有できるようにならないと、 |
光太朗 2013/12/02 23:27 |
●光太朗さん |
小林浩 2013/12/03 21:48 |
やはり小林オッパのブログは私のオアシスです! |
green 2013/12/04 23:14 |
●greenさん |
小林浩 2013/12/05 07:15 |
>本部は頭、現場は手や足などです。 |
mau8181 2013/12/06 05:10 |
●mau8181さん |
小林浩 2013/12/06 05:34 |
実際には、漏えいした人を特定するのは困難なのではないかと思います。 |
julian 2013/12/06 18:21 |
●julianさん |
小林浩 2013/12/06 18:51 |
皆さんのコメントを読んで概ね同感できる部分も多いのですが、あえて視点を広げる意味で一言…。 |
ポポポヤ〜ン 2013/12/07 09:32 |
●ポポポヤ〜ンさん |
小林浩 2013/12/07 18:32 |
> 分かっているようで、誰も具体的には良く分かっていないのが「神様を中心とした本然の兄弟姉妹関係」なのだと思います。 |
ポポポヤ〜ン 2013/12/07 23:24 |
2013/12/10 05:06 matu8181さんのコメントは削除しました。コメントをされる方は、右サイドの「批判される人へ」をクリックして、拙ブログの削除方針をご理解ください。 |
小林浩 2013/12/10 07:11 |
>いずれにせよ、情報を主管できていないその幹部を探し出して、きっちり責任をとってもらうべきです。 |
ファシリテーターが存在しない会議 2013/12/17 07:38 |
>「情報はどんなに統制しても漏れるもの」だという意識で、仮に漏えいされても困らない内容しか語らないことが大切です。内と外で話を変えているようでは、とてもじゃないですがクリーンな組織とは言えません。表の顔と裏の顔がある、建前と本音がある、ということですから…。 |
ファシリテーターが存在しない会議 2013/12/17 07:50 |
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