日本のひとり負けに終る防空識別圏大騒動

天木 直人 | 外交評論家

突如として起きた中国の防空識別圏問題は、12月2日ー4日に行なわれるバイデン米副大統領の日中韓訪問によって急速に収束に向かうだろう。防空識別圏の運用における緊張緩和の体制づくりで米中が合意し終る。それは結果的に米中双方にとって都合のいいものだ。すなわち中国はその軍事的影響力の大きさを米国や世界に認めさせることができた。一方の米国は日米同盟の重要性を日本国民に見せつけて、懸案の普天間基地移設問題やオスプレイ問題、さらにはTPPを含めたあらゆる対米従属政策を一気に解決することができる。

いつものように割を食うのは日本だ。いや日本国民と言うべきだろう。そんな日本の滑稽さと哀しさを見事に言い表しているのがきょう11月30日の読売新聞の社説である。その要旨はこうだ。

中国の国際ルールを無視した振る舞いに世界は反発し、とりわけ怒ったのは米国だ。中国にとっては誤算だったのではないか。中国の外交的孤立は今や決定的になりつつある。中国は、識別圏問題で「共同で飛行の安全を維持すべきだ」と述べ、日本などに協議を提案したがこれは尖閣領有権問題の存在を日本に認めさせようとの意図がある。日本政府が「中国の識別圏を前提とした協議は受け入れられない」と一蹴したのは妥当だ。日本は米国と一体となって中国の識別圏を撤回させよ、中国の国際常識を逸脱した行動をこれ以上認めるな、と。

残念ながらいま世の中はこのような論調ばかりだ。この様な考えがいかに間違いであり、ピントはずれであるかという声が、日本の政治家や有識者やメディアの中で、ただの一つも出てこないところに、日本の救い難さを感じざるを得ない(了)

天木 直人

外交評論家

2003年、当時の小泉首相に「米国のイラク攻撃を支持してはいけない」と進言して外務省を解雇された反骨の元外交官。以来インターネットを中心に評論活動をはじめ、反権力、平和外交、脱官僚支配、判官びいきの立場に立って、メディアが書かない真実を発信しています。主な著書に「さらば外務省!」(講談社)、「さらば日米同盟!」(講談社)、「アメリカの不正義」(展望社)、「マンデラの南アフリカ」(展望社)。

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