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DOL特別レポート
【第36回】 2010年3月1日
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トヨタ“推定有罪”の世論を作った
謎の人物とLAタイムズの偏向報道
~『ザ・トヨタウェイ』著者の米大物学者が語る衝撃の分析!
ジェフリー・ライカー・ミシガン大学教授 核心インタビュー

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 LAタイムズの記者とショーン・ケインは、“意図せぬ急加速”問題の増加はトヨタが電子制御スロットルシステム(wire electronic throttle system)を導入した時期と一致すると主張する。つまり、彼らは、電子制御スロットルシステムに問題があるというスタンスを取っている。一方のトヨタは、電子制御スロットルシステムの欠陥を見つけられないとの主張を繰り返している。トヨタは電磁気が強い発電所にまで持って行ってテストしたが、それでも何の問題もなかったという。

 確かに技術的に見ればそうした不具合がトヨタ車に起きるとは私にも思えない。というのも、2つの異なったコンピューター・プロセッサがペダルに装備されているからだ。一方が他方とは異なるメッセージを受け取れば、電子制御スロットルを止めて、加速が止まる。だからトヨタにすればアクセルが勝手に加速するシナリオは考えられないのだ。

 だがNHTSAは、LAタイムズの記者から追及を受け、その対応の遅さについて書きまくられ、ショーン・ケインからプレッシャーをかけられ続けた。一方、トヨタ側は電子制御スロットルシステムに欠陥があるという証拠はないと言い続けた。私の推測では、NHTSAは少し苛立って、トヨタが言い訳をしているように感じたのではないか。

―トヨタ側に非はないということか。

 こう答えよう。もちろん、サンディエゴで起きたレクサスの事故(家族4人が死亡)は悲惨なものだった。しかし、あのときメーカーの違うフロアマットを置いたのはレクサスのディーラーであり、しかも事故車は代車だった。問題は、ペダルにくっついたフロアマットだったのだ。

 もっとも、この事故が、NHTSAとトヨタに大きなプレッシャーを与えたことはいうまでもない。トヨタは原因を調査し、一体自分たちに何ができるかと問うた。フロアマットに問題があるとすれば、本来それは顧客の使用方法の問題だ。人がどんなマットを車のフロアに置くかまでは(自動車メーカーには)コントロールできない。中にはマットの上にさらにマットを置く人もいる。つまり2枚使う人もいる。トヨタの設計ではペダルとマットの間のスペースは工場でマットがつけられた状態がちょうどいい具合になっている。しかし2枚使うと十分なスペースがなくなる。しかも、ゴム製のマットは普通のカーペットよりも分厚い。

 そこでトヨタは基準変更を決定し、すべてのペダルについて全天候型マットを元のマットの上に置いてもスペースが十分確保できるようにした。そのやり方はペダルを切って短くすることだった。だから最初のリコールは、ペダルを短くすることだったのだ。

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