記事

踏み台

 2013年もいよいよ暮れを迎えました。民主党は東京都議選に敗れ、参院選にも敗れねじれ国会は解消されました。その結果、先の臨時国会では「特定秘密保護法案」が強行採決されるなど、自民党一強時代を招来してしまいました。民意の結果は真摯に受けとめなければなりませんが、それにしても散々な1年でした。

 ところで、この1年間を振り返って、安倍・自民党政権は何をやったのでしょう。確かに世の中はアベノミクス一色に染まりましたが、それは野田政権が社会保障と税の一体改革を通じ、消費税引き上げに対処し財政面の道筋をつけたからでしょう。

 安倍政権が対処した最重要な通商問題はTPPでしたが、その対応に舵をきったのは私の政権でした。交渉力のない民主党政権下のTPP参加には反対すると明言してきた自民党のはずですが、現下の手詰まり感はどのように説明するのでしょう。交渉力のかけらも見えません。

 また、民主党政権の初期段階ではギクシャクした日米関係でしたが、私の政権段階では相当に関係修復は進んでいたと自負しています。オバマ大統領との信頼関係は、むしろ今よりも強かったのではないでしょうか。

 要するに、野田政権を「踏み台」にして、今の安倍・自民党政権はあるはずです。しかし、その自覚もないし成果も出ていません。誤解なきようにお願いしたいのは、私は踏み台になることを嫌がっているのではありません。むしろ、前政権を踏み台にして現政権がより良い政治を実現することこそ、政権交代の意義だと信じたいのです。

 アベノミクスを通じて、実体経済に好影響が出るか。国益を守りながらTPPは妥結できるのか。日米関係を軸に、困難な国際問題を好転できるのか。来年は重要な年になりそうです。踏んづけられながらも、その帰すうをしっかりとチェックしていく決意です。

野田佳彦
衆・民主/第95代内閣総理大臣。松下政経塾第1期生

記事一覧へ

あわせて読みたい

「第2次安倍内閣」の記事一覧へ

トピックス

記事ランキング

  1. 1

    「声」は誰のものか――FGM(女性性器損傷)をめぐ...

    SYNODOS

  2. 2

    「政党」と「会派」・・・何と国会の慣例とやらは!

    江田憲司

  3. 3

    張成沢処刑は習近平の金正恩外しへの逆襲なのかも

    大西宏

  4. 4

    エミレーツ航空社内での「禁句」とは?

    広瀬隆雄

  5. 5

    猪瀬都知事に見る「強権型リーダー」の限界 - 増沢...

    アゴラ

  6. 6

    在特会、京都裁判の真相!

    JAPANISM

  7. 7

    踏み台

    野田佳彦

  8. 8

    みんなの党分裂に見る、日本の野党が育ちにくい特殊事...

    田原総一朗

  9. 9

    「撤退戦」を戦うテレビ業界に求められる「メディアリ...

    BLOGOS編集部

  10. 10

    日本は東大以外エリートじゃない。

    鳥井 弘文

ランキング一覧

ログインするアカウントをお選びください。

以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。意見を書き込むには FacebookID、TwitterID、mixiID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。

このエントリーをはてなブックマークに追加
Tweet