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社説

北朝鮮情勢 新体制の慎重な見極め必要 2013年12月15日

 自分の住む国でナンバー2と目される実力者が、大罪を犯したとしていきなり失脚したかと思ったら、数日後には裁判手続きもそこそこに処刑された-。そんなニュースを聞かされる国民の気持ちは、いかばかりだろう。仮に「血の粛清」への恐怖で国民が服従することはあっても、政治に対する信頼が育まれることは決してないのではあるまいか。

 北朝鮮の金正恩[キムジョンウン]第1書記の叔父で後見人ともいわれてきた張成沢[チャンソンテク]・元国防副委員長が、朝鮮労働党の会議で「反逆者」として全役職解任と党除名の処分を受けてから4日後の12日、特別軍事裁判で死刑判決が出て直ちに処刑された。張氏に連なる人脈にも過酷な運命が待ち受けているとみられる。あらためて北朝鮮という国家体制の冷酷さを思う。

 北朝鮮では、金第1書記の祖父に当たる故金日成[キムイルソン]主席の時代から粛清が繰り返され、見せしめとしての公開処刑とともに体制引き締めに利用されてきた。ただ、今回のように処刑の事実や罪状、写真などを大々的に公開するのは金日成政権下で副首相を務めた朴憲永[パクホンヨン]氏の処刑以来とされ、臆測を呼んでいる。

 ちょうど1年前、北朝鮮は金正日[キムジョンイル]総書記の命日を前に、各国の制止を押し切り「衛星」と称して長距離弾道ミサイルを発射。今年2月には3回目の核実験も実施し、対外的な緊張をあおって国内の引き締めを図った。張氏のスピード処刑や異例の公表も、引き締め策の一環とみられているが、それは逆に張氏の影響力がいかに大きかったかを物語る。

 張氏は金総書記の妹の夫として金主席時代から約40年にわたり権力中枢で活動してきており、党や内閣、軍に張り巡らせた国内人脈の裾野は広い。今のところ平壌[ピョンヤン]市内などに目立った緊張は感じられないが、日米韓など関係国は今後の北朝鮮体制内でのあらゆる事態、混乱を想定して警戒を強める必要があろう。

 報じられた「罪状」の中で、張氏は国家転覆の陰謀を企図していたとされると同時に、「地下資源の不適当な売却」や中国と北朝鮮が共同開発する経済特区、羅先[ラソン]での土地を海外の提携先に長期貸与する「売国行為」をしていたなどとして、経済政策での責任を指弾されている。

 外資導入にも積極的だった張氏は中国から金第1書記とのパイプ役として重視され、昨年8月には当時の胡錦濤国家主席とも会談している。その張氏が排除されたことで、北朝鮮の改革的な経済政策にブレーキがかかるとの見方がある一方、「経済と民心の混乱を招こうとした」とされる人物の処刑を機に、むしろ大胆な開放政策に踏み出すのではないかという見方もある。その場合、外資導入に向けて日米韓などとの対話も必要だろう。経済発展の足かせになっているとして、核やミサイル放棄を働き掛ける好機になるはずだ。

 拉致問題を抱える日本は、金第1書記の最側近だった張氏と水面下での対話ルート構築を試み、北朝鮮側からも接触を図る複数の動きがあったという。そうしたルートのいくつかが淘汰[とうた]されるかもしれないが、残った人脈が金第1書記に直結する可能性もある。北朝鮮指導部の新体制を慎重に見極めなくてはならない。


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