不法菜園:国管理の河川敷に170ヘクタール

毎日新聞 2013年12月16日 07時31分(最終更新 12月16日 09時52分)

 ◇強制力はなく、立ち退き進まず

 国が管理する1級河川の河川敷や堤防に無断で田畑を作り、野菜などを栽培する不法耕作の面積が全国で少なくとも約170ヘクタール(957カ所)に上ることが、毎日新聞の調査で分かった。阪神甲子園球場のグラウンド約130個分の大きさ。家庭菜園としての不法占有が大半だが、地盤が軟らかくなって堤防の強度が落ち、集中豪雨や津波などの際、決壊の恐れが増す。また、農機具小屋などが流出すると、人や建物への危険もある。国土交通省は立ち退きを求めているが、強制力はなく、不法耕作はなかなか減らないのが現状だ。【向畑泰司】

 河川法は河川管理者の許可なく河川敷を占用することを禁じている。不法耕作は畑が大半で白菜やネギなどの野菜のほか果樹も栽培されている。治水への影響が小さいものも多いが、1カ所で2ヘクタールを超える大規模なものがあるほか、堤防やその付近を掘削する悪質なケースも確認された。

 国交省の各地方整備局や北海道開発局によると、不法耕作面積は東北地整管内で約48ヘクタール(120カ所)▽中国約43.8ヘクタール(34カ所)▽関東約38ヘクタール(232カ所)▽近畿約28ヘクタール(335カ所)▽北海道約7.6ヘクタール(134カ所)▽北陸約1.9ヘクタール(14カ所)▽四国約1.4ヘクタール(24カ所)−−などだった。

 近畿地整によると、京都府井手町の木津川河川敷では、約700メートルにわたって不法耕作地が連なり、面積は計約2.18ヘクタールに及ぶ。家庭菜園として多数に細分化され、農機具小屋も少なくない。国交省は、小屋などの不法建築物が多いと、洪水などの際に流れ出る恐れがあると懸念する。

 国交省は立ち退きを求める警告看板を設置したり、不法耕作者に口頭注意をしたりしているが、「この程度なら大丈夫」「周りの人もやっている」などと取り合わないという。田畑を撤去しても、すぐに別の人が耕作することもある。

 自治体管理の河川敷でも同じ問題がある。京都市の天神川では2008年、不法耕作で堤防の強度が落ちたとして、管理者の京都府が畑約0.53ヘクタールや果樹約350本を行政代執行で強制撤去した。しかし、費用が約1800万円かかった。国や自治体の担当者は「撤去のために多額の税金を使うべきかどうかの判断が難しい。現状では、地道に指導していくしかない」と話す。

 ◇1級河川 

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