消費増税に伴い、所得が少ない人にどう配慮するか。

 生活必需品の税率を低く抑える軽減税率について、自民、公明両党は消費税率「10%時」に導入することで合意した。

 軽減税率は不可欠という立場の公明党が「10%への引き上げと同時に」とする一方、慎重な自民党は「10%になってからのいつか」と解釈する。玉虫色の決着である。

 私たちは社説で、「軽減税率の導入は将来の課題に」と主張してきた。

 財政難の下、急速な高齢化や少子化への対策を考えると、消費税率は将来、10%超にせざるをえまい。その段階で、税率が20%前後と高く、軽減税率も採り入れている欧州各国を参考に導入を検討し、10%までは現金給付などで低所得者対策を講じよう。そんな主張である。

 それだけ、軽減税率には課題が多い。

 まず、所得が多い人まで恩恵を受け、税収が目減りする。社会保障と税の一体改革の手直しが避けられず、社会保障が手薄になれば、低所得者への対策がかえって弱まりかねない。

 適用する商品やサービスの線引きも難しい。海外でも「店で食べるか持ち帰りか」など、区分けに苦労している。混乱を避けようと対象を広げると、税収減が大きくなる。

 もちろん、軽減税率には利点もある。日々の生活には助かるし、国民の間での支持も高い。

 自公両党は、合意文書で「一体改革の原点に立って必要な財源を確保する」「関係事業者を含む国民の理解を得る」などと課題を列記しつつ、来年末までに結論を出す、とした。

 その際、忘れてもらっては困ることがある。

 取引ごとに、適用される税率や税額を記した書類(インボイス)を導入することだ。中小業者は事務が繁雑になると反発するが、税率が複数になれば欠かせない。

 消費者には、負担した消費税の一部が業者の手元に残る「益税」への不信がある。インボイスは、取引の透明性を高めることにつながる。

 もうひとつ、確認しておきたいことがある。

 軽減税率をめぐる自公両党の駆け引きを見ていると、今後、消費税率10%への引き上げ自体を見送ろうという空気が政府・与党内で強まりかねない危うさを感じる。

 消費税の2段階増税は、社会保障を安定させつつ財政再建を進めるための一歩である。その趣旨を肝に銘じて欲しい。