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没ネタ リリカルなのは4
負けた。私たちはたった六歳の少年に手も足も出せずに負けたのだ。模擬戦終了後、はやてちゃんを含め六課の隊長陣(リインを除いて)は全員食堂で会していた。もちろん今回の主役の一誠くんも同じ席に座っている。というか、一誠くんは今、食事中だ。
「そんでな一誠くん。食べながらでええから聞いてほしいんやけど」
はやてちゃんが一誠くんにそう前置きを言い、話し始める。
「じつはな、一誠くんが言っていた町がな……」
言いにくそうに話すはやてちゃんの言葉を遮り、一誠くんが口を開く。
「なかったんでしょ?」
一誠くんがそう言うと驚いた表情をするはやてちゃん。
「どうしてわかったん?」
「そりゃ、異能の力を持っているのに人外の存在や神器を知らなかったんだ。なんとなく想像はつくよ」
一誠くんはそう興味なさそうに食事を続ける。
「そんでな、たぶんなんやけど一誠くんは私らと同じ世界じゃなくて」
「並行世界」
並行世界。SFなんかだとよくでてくる言葉だけど実際に存在するなんて思いもしなかった。
「そう、たぶんそうだと思うんよ。いくら管理局ゆうても並行世界への干渉はできんのや」
「つまり僕は帰ることができないってこと?」
「そうなるな」
はやてちゃんのその言葉を聞いても一誠くんは悲しむどころか表情一つ変えない。
「……、一つ訊きたい事があったんやけどええか?」
「なに?」
「次元の狭間ってどんなところ?」
それは私も気になってた。一誠くんがここに来る前にいたところ。
「僕が前にいた世界に天使や悪魔がいることは説明したよね。そんで天使は天界に、悪魔や堕天使は冥界に住んでいたんだけどそれぞれの世界の間にある壁、隙間みたいなもの。それが次元の狭間だよ」
「虚数空間のことか?」
「虚数空間? まぁ、広さに上限のない荒野の世界を思い浮かべてくれればわかりやすいかな」
「そこでは魔法が使えるの?」
「普通に使えるけど?」
虚数空間の事かと思ったけどだいぶ違うみたいだ。
「まぁ、なのはたちが入ったらすぐに消滅しそうだけどね」
「消滅?」
「次元の狭間はなにも存在しえない完璧なる無の世界。特殊な結界でも使わない限り次元の狭間の無に当てられたあらゆるものは消滅する」
そんな危険な場所なんだ。
「もしかしたらその次元の狭間にいた人たちが同じように飛ばされている可能性もある。最後に同じ場所にいた人たちのこと詳しく聞かせてもらてもええか?」
「模擬戦始まる前にも言ったけど魔王二人に魔王クラス一人、堕天使の頭のアザゼルに幹部クラスが一人。セラフが二人。そのぐらいだよ」
「その人たちってどのくらい強いん?」
「実際に戦ったことはないから正確には知らないけど、すくなくともなのはたちじゃ十秒持てばいい方ってぐらいには強いんじゃない?」
「なのはちゃんたちでも十秒か……。その魔王さん達以上に強い人たちって他にもいたんか?」
「いたよ。知っているだけでも魔王程度なら瞬殺できる奴らが二桁以上」
「……なぁ、シグナム達って一誠くんからしたらどの程度の強さ?」
はやてちゃんが一誠くんにそう訊くと全員の顔が強張る。正直私たちはその魔王さんたちを知らない。実際の強さもわからない。もしそんな人たちと敵対した時にどのくらい対応できるか事前に知っておかなければならない。
「僕が今まで戦ってきた連中の中でも、ほぼ最下位にいると言っても過言ではないくらいに弱い」
その言葉を聞いて私は頭を殴られたような衝撃を受ける。確かに私たちは一誠くんに手も足も出なかった。だけど、これでも自分たちの力にはそれ相応の自負があったのだ。
「詳しく教えてもろてもええか?」
「なのはたち程度なら瞬殺できるのが、ギリシャのゼウスにポセイドンにハーデスにクロノス。北欧のオーディンに雷神トール。インドの阿修羅にインドラ。あとは竜王クラス。他にたくさんいるけどメジャーなのではこれくらいかな」
「それって有名な神様ばかりやん。やっぱり神様って強いんか?」
「魔王や四大セラフ、堕天使の幹部の上位クラスの実力者なら単体で小国を数分で滅ぼせる。各神話の主神クラスならその魔王達ですら瞬殺できるレベル。まぁ、二天龍クラスは少ないんだけどね。(まぁ、あそこにいた紅髪の魔王はハーデスくらいなら倒せそうな力を感じたけど)」
「なんや、まるで王道バトル漫画並みのインフレやな。二天龍?」
「二天龍って言うのは僕が宿している『赤龍帝の籠手』と『白龍皇の光翼』に封印されている二体のドラゴンを指す言葉だよ。」
「あれにドラゴンが封印されとるんか?」
「そうだよ。だから赤を宿した方を赤龍帝、白を宿した方を白龍皇と称され、歴代の持ち主たちは互いを殺し合ってきたんだ」
「殺し合ってきたんか!?なんで?!」
「天使や悪魔が地獄の覇権を巡って争ったことは説明したよね? そのときにドライグと白い龍がちょうど三勢力が争っているところで大ゲンカを始めたんだよ。んで、神や魔王すら凌駕する二天龍のケンカなもんだから被害がバカにならなかったらしくてね。それぞれの勢力が協力してドライグと白い龍を討伐、これを神器に封印したんだ。それでそれぞれの所有者はその名残か知らないけど相対したら互いに殺し合ってきたんだ」
「……そんなん悲しすぎるやん」
はやてちゃんが悲しそうにそう言う。私たちも同意見だ。いくら神器を宿したからと言ってそれだけで互いに殺し合いになるなんて。
「まぁ、そんなことはどうでもいいんだけどね。正直僕を殺せるほど強いなんて期待してないから」
「一誠くんはそんだけ強い言うことか?確かにあの模擬戦を見れば一誠くんがめちゃくちゃに強いのはわかるけど」
「僕は元いた世界で一番強かったからね」
私たちは驚きと共にどこか納得してしまった。あれだけ規格外の力を持っている一誠くんが世界で一番強いと言われても納得しかできない。
「やっぱり一誠くんは元いたところでも圧倒的に強かったの?」
「まぁ、確かにあまりてこずった記憶はないけど」
「一誠くんがてこずるような相手がおったんか?」
「いたよ。たった二体だけだったけど」
二体?人じゃなかったってことかな?まぁ、一誠くんの話しにでてきてるのは殆どが人外と呼ばれる存在ばっかりだけど。
「二体?」
「正確にはドラゴンだよ」
ドラゴン。確かにそれなら納得できる。実際に管理世界でも強力な龍というのは存在しているのだ。
「でもさ、なのはたち何かしらの制限がついているでしょ?」
一誠くんのその言葉に私たちは全員驚いた。まさか気づかれるなんて。
「どうしてわかったん?」
「魔力の流れがあんなに綺麗だったのにあの程度しか威力が出てなかったからね。なのはの最後の攻撃は別としても、シグナムやヴィータたちの攻撃はもっと威力がありそうだったし、フェイトにしたってあの程度の速度ってことはないと思うしね」
「魔力の流れとかわかるん?」
「まあね。これは仙術の応用でもあるけど」
「仙術?」
なんだろう仙術って?
「仙術ってのは生命に流れている気とか操る技術だよ」
「具体的にどないな事ができるん?」
「そうだな、触れた相手の生命エネルギーを無茶苦茶にして殺すこととか気配をまわりに同化させて完全に見つけられないようにすることとか相手の動きを感じ取って先読みしたりとか。あと無茶な力を行使して減った寿命を回復させたりとかもできるよ」
「なんや結構いろいろできるんやな」
「直接的な破壊力はあまりないんだけどね。ただ、生物相手だとこれほど厄介なものもないけど」
聞く限り魔法より強力な技は無いようだけど、掠っただけでも致命的ってのは恐怖だ。
「その仙術を私らに教えてもらうことはできるか?」
はやてちゃんが一誠くんにそう訊く。その言葉を聞いて私たちはビックリした。確かに覚えられれば魔力とか関係なく強くなれるだろうけど。
「それは別にかまわないけど……。仙術だって魔力や魔法と同じで適性があるよ?」
やっぱり誰でも簡単に扱える物ってわけでもないみたい。
「やっぱそうか~。適性があればどのくらいで使えるようになるん?」
「適性があれば半年くらいで使えるようになるよ。才能があれば一日で扱えるようになるんじゃないかな? ただ、適性があるやつはあんまりいないんだけどね」
なるほど。適性や才能があれば魔法より扱いやすいようだ。ただ、適性がある人があまりいないようだけど。
「私らの中じゃ誰が適性あるん?」
「単に適性だけならシグナムとはやて以外はあるよ。ただ、僕が教えてもいいと思うのはフェイトだけだけど」
「なのはちゃんやヴィータには才能がないんか?」
どうしてフェイトちゃんだけならいいんだろ?やっぱり才能があるから?
「そんなの実際にやってみなきゃ才能なんかわからないよ。ただ、後々めんどくさいことになりそうだから」
どういうことだろ?
「仙術ってのは精神がものすごく影響してくる。ヴィータみたいな激情家が仙術なんて使ったら感情を暴走させるのがおちだ。仙術覚えて直ぐに暴走なんて状態になったらめんどくさいでしょ? まぁ、仙術をある程度覚えれば平気だろうけど」
なるほど、感情のコントロールがものすごく大切なんだ。……あれ? それならどして私はダメなんだろう?
「そんならどうしてなのはちゃんはダメなん?」
はやてちゃんがそう訊くと一誠くんは目を細めて私の方を見る。
ゾクッ!
なにか冷たい物が背筋を奔る。
「はっきり言ってヴィータ以上にやっかいだよ。なのは、何らかしらのトラウマがあるでしょ? しかも克服できてない」
―――っ!? ど、どうして!?
「なのははフェイト達以上に家族や仲間、親しい人間が傷ついたり死んだりすることに恐怖している。いや、それだけじゃない――」
やめて、それ以上言わないで!!
私のそんな思いを無視するように言葉を紡ぐ。
「なのはは自分が独りになるのが怖いんだ。もしかしたら皆離れていくかもしれない。皆消えるかもしれない。そう恐怖しているよね?」
その言葉で昔のことが思い出される。私の父が仕事中に大けがを負って意識不明の重体になって大変だったあの頃。家族皆は仕事とかが忙しくて誰も相手してくれない。誰も私のことを見てくれない。いい子でいなきゃ皆私から離れていっちゃう。魔法が使えなければフェイトちゃんやはやてちゃんたちと友達でいられない。誰も私を必要としてくれない―――っ!!?
「やめて、やめてよ!! 私はそんなこと思ってない!!」
私がそう声を上げると皆が驚いたようにこちらを見てくる。私は思わず俯いてしまう。
「とまぁこんな感じなわけ。こういった奴に仙術を教えると負の面の感情が暴走しかねない。実際に仙術を覚えたせいでその力に溺れる奴がいるわけだし」
「でも、力を持って暴走する奴なんてどこにでもおるやん」
「仙術だとその暴走する確率が高くなるんだ。自身の精神が関係してくるんだよ? よっぽど仙術をマスターすれば別だけど、それ以前に暴走しそうだし」
そう言うと一誠くんが俯いている私の頭に手を置く。あたたかい、一誠くんに触れたところがものすごく温かい。心の奥底からほっとする。不思議な感じだ。
「どう? 落ち着いた?」
「うん」
「いまみたいな使い方も仙術にはある。今のは乱れている精神の流れを静めて、なのはを落ち着かせたんだ」
「そんなこともできるん? 実際に仙術を経験してどうやった? なのはちゃん」
はやてちゃんが私にそう訊いてくる。
「なんか凄く不思議な気分。ものすごく温かくって心の奥底からほっとできた」
私がそう言うと一誠くんが口を開く。
「こんな感じで精神なんを落ち着かせたり、逆に荒ぶらせたりすることもできる。さっきも言ったよう仙術を使えるようになると普段以上に感情が揺さぶられる。中には力に怯えているせいで仙術を封印していた奴もいたくらいだし」
やっぱりどんな力にも一長一短があるんだ。
「そうやな。戦力の増強に繋がればと思うたけど、そんないつ爆発する爆弾を抱え込むようなマネはしない方がええな」
「そうしときなよ。魔法しか使えないから仙術が便利に思えるかもしれないけど、実際それ程便利な物でもないし。隣の芝なんて青く見えるもんだよ」
確かにそうなのかもしれない。
「まぁ、初代の爺さんみたいに仙術極めれば強力な戦力になるだろうけど」
初代の爺さん?
「初代の爺さんて誰なん? 仙術を生み出した人とか?」
「違う違う。僕が言った爺さんってのは、闘戦勝仏のことだよ」
とう……な、なに?
私たち全員が頭を傾げていると一誠くんが口を開く。
「闘戦勝仏ってのは、西遊記にでてくる孫悟空のことだよ」
その言葉を聞いて私たちはものすごく驚いた。
「そ、孫悟空って、あの孫悟空?」
「そうだよ。三蔵法師と共に天竺を目指し、最終的に仏になった、ただの猿だよ」
「いや、孫悟空ってかなり有名やで? それを猿って……」
「事実だ」
あまりそう言った話しを詳しく知らない私でも知っている程に有名だ。
「あの~ちょっといいですか?」
私たちが驚いていると横からシャーリーが話しかけてくる。
「どないしたん? シャーリー?」
はやてちゃんがシャーリーに訊き返す。
「はい、あの模擬戦で取った一誠くんのデータがでたので持ってきたのですが……」
何故か言いずらそうな表情をしてシャーリーはデータをはやてちゃんに渡す。
はやてちゃんはデータを見たあと信じられない表情をして一誠くんを見る。
「一誠くん、リンカ―コアがないやん!?」
……ええ!? その言葉を聞いて全員が驚愕する。リンカ―コアがない?どやってあれだけの魔力を操ってたの?
「リンカ―コアって、なのはたちの胸辺りにある魔力が凝縮されているやつ?」
「そうだけど……。リンカ―コアもなしにどうやって魔力を操っていたの?」
私が思わずそう訊くと一誠くんは呆れたように答える。
「僕は並行世界の人間だよ? だったら魔力を精製する器官が違ってもおかしくないでしょ」
確かに、言われてみればそうだ。
「ねえ、普段どうやって魔力を操っているの?」
「僕がいたところじゃ魔力って言うのは全身を流れているオーラを流れるように集めて使用するんだ。なのはたちに置き換えてみれば、カラダ全体が一つのリンカ―コアだと思えばいいんじゃない?」
へー、そう訊くとなんとなく納得ができる。ようは体の作りが少しだけ違うだけなのだ。
「わざわざ持ってきてくれてありがとなシャーリー」
「いえいえ、そんな。それじゃ、渡す物も渡しましたし私は行きますね?」
「おおきにな~」
そう言って早足でその場をあとにするシャーリー。たぶんデバイスルームに行ったのだろう。だって凄く顔がうきうきしていたもん。
「っあ! そうだ。フォアード陣にも一誠くんを紹介せえへんとな。一誠くん一緒に来てもろてもええか?」
そう言って一誠くんに手を伸ばすはやてちゃん。一誠くんはそれを無視して立ち上がる。
「ちょ!? どこいくん?」
私たちに背を向けた一誠くんを慌てて引きとめるはやてちゃん。
「どこにって……。トレーを返してくるだけだよ」
そう言う一誠くんの手には先ほどまで食事に使っていたトレーが握られている。
「それはこちらで戻しておこう。おまえは主と共に一緒に行っていろ」
そう言って一誠くんからトレーを取るシグナムさん。
「わかったよ。そんじゃ、案内してよ。はやて」
一誠くんがそう言うとはやてちゃんが嬉しそうに頷く。
「うん。ほんなら行こうか」
そう言ってまた手を差し伸べるがまた無視される。はやてちゃんはそのまま手を差し伸べ続ける。
「さっさと行こうよ」
一誠くんが面倒くさそうにそう言うとはやてちゃんは手を差し伸べたまましゃがむ。
「ほんなら手、繋いでほしいな」
はやてちゃんが笑顔でそう言うと一誠くんは呆れたようにため息を出す。そしてほんの少ししてから諦めたようにはやてちゃんの手を握る。
「ほな行こうか? なのはちゃんたちも一緒やで」
そう言って一誠くんの手を掴み歩き始めるはやてちゃん。私とフェイトちゃんも一緒にはやてちゃんのあとを追い、歩き始めた。
一誠は戦術で感情の揺らぎとか見て、なのはが身内を失うのを恐れていると推測しました。(ご都合主義っぽくてもうしわけない)
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