末期がんなどに侵され、回復の見込みがない患者の意思により延命措置を施さない「尊厳死」を法制化しようと、与野党の有志が動きだしている。来年の通常国会への関連法案提出を目指しており、これを受けて自民党は党内議論を開始した。ただ、法制化には慎重論も根強く、提出にこぎ着けられるかは不透明だ。

 活動しているのは自民、公明、民主、日本維新の会、みんな5党などの有志でつくる「尊厳死法制化を考える議員連盟」(会長・増子輝彦民主党参院議員)。「延命治療を望まない患者が、尊厳を保ちながら死を迎えられるようにすべきだ」との声を受けたものだ。

 厚生労働省によると、現状では、患者の意思を受けて医師が延命治療を施さずに死に至った場合、「殺人罪に問われるケースもある」という。

 このため議連が既にまとめた法案は、患者が書面などで意思表示していることを条件に、回復の可能性がなく死期が間近だと2人以上の医師が判断し、延命措置を開始しないか中止した場合、医師は刑事、民事、行政上の責任を免れると定めた。対象は15歳以上の患者に限定し、意思表示の撤回はいつでも可能とした。

 自民党は3日、法案を検討するプロジェクトチームの初会合を開催。民主党も、議連メンバーが法案の検討を執行部に求めた。

 脳死を一般に「人の死」と位置付け、臓器提供の年齢制限を撤廃した改正臓器移植法は、「議員個人の死生観に関わる問題」だけに、それぞれの党内で賛否が分かれ、成立まで曲折をたどった。尊厳死の法制化についても「人の死を法律で縛るべきではない」(自民党閣僚経験者)、「慎重な検討が必要だ」(民主党ベテラン)といった異論が少なくない。

 議連は、各党が党議拘束を外して自主投票とすることを前提に、法案提出に持ち込みたい考えだが、各党内の手続きは難航が予想される。 

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