朝日放送(ABC)からフジテレビに移り、「ペケポン」や「ほこ×たて」など新機軸のバラエティ番組を手掛けてきた石川綾一チーフ・プロデューサー。その番組づくりの原点は、ABC時代にかかわった「探偵!ナイトスクープ」にあるとのこと。はたして、そのココロは? 胸に抱いている思いを存分に語っていただきました。
テレコ!:「ほこ×たて」も単発番組時代から数えると2年目に入ったわけですが、鮮度を保つためにどんな工夫をされているのでしょうか?
石川:放送時間が23時台のレギュラーになる時に、軸となる「ほこ×たて対決」以外に、番組ファンの方々が納得したうえで楽しんでいただける骨太な新企画を打ち出していこう、ということを決めました。そこから「プロvsマニア」や「11 vs 55」や「絶対×可能・絶対×不可能」といったコーナーが続々と誕生していったんです。ゴールデンタイムに昇格してからは、前半に「ほこ×たて対決」、後半に別企画という基本フォーマットが固まったことで、さまざまな企画にチャレンジする地盤も出来上がり、毎回、何らかの新鮮味を足せているのではないか…と、思っています。
テレコ!:先日放送されていた「晴れ男晴れ女×雨男雨女」の対決もユニークでしたね!
石川:あの日はサッカーのワールドカップ予選という強力な裏番組があったのですが、そんな時だからこそ、よりコアでマニアックなネタを放送しよう、と。必ず楽しみにしてくださっている視聴者がいるはずなので、そういう方々の番組愛に応えるつもりで、ひときわマニアックな企画を用意しました。また、雨男や晴れ女という…本人の思い込みであったり、明確に証明されるものではない都市伝説的な事象を「ほこ×たて」流にアカデミックな見せ方をしていくと面白いんじゃないか、という思いもあります。
テレコ!:それから、藤田朋子さんのお父さんが撮った昔の8ミリフィルムを修復する企画がありましたが、思い出をよみがえらせるという意味でも、とても素敵だなと思いました。
石川:まさに「ほこ×たて」はそこがキモで、単なる対決や修復に終始せず、人の思いや気持ちが見える番組にしようという心意気でつくっています。ピースの綾部祐二さんが元カノから昔もらったTシャツを修復するという企画がありましたが、あれもバックグラウンドにある当時の彼女との甘酸っぱい思い出を浮き彫りにすることが、実は主軸になっていて…。藤田さんの8ミリフィルムも同様ですね。ですので、不可能と言われているものを修復する優れた技術力や扱う題材への興味というところも、もちろん大切に考えてはいますが、そこに人の思いが宿されているからこそ共感を得られるのだと、僕は思っています。そういう意味では、単なる「対決バラエティ」ではなく、実はある種の人間ドキュメントだったりするんですよね。
テレコ!:人の心を動かすバラエティという点において、石川さんのテレビマン人生の原点である「探偵!ナイトスクープ」(ABCほか)と通ずるものが、やはりあるんだなと思えてなりませんね。
石川:おっしゃる通りです。フジテレビのゴールデンタイムの番組なので、よりエンターテインメントに寄せた演出やキャスティングをしていますが、ベースにあるのは人間の素晴らしさをフィーチャーしたいという“思い”なんですよね。だから、対決に勝てなかった人へのフォローを忘れず、工場を挙げて応援してくださる人たちの厚意も大切にしたいんです。繰り返しになりますけど、実は勝負を超えたところに、僕たちの見せたいものがあるんです。
テレコ!:すなわち、時代を超えて長く老若男女の視聴者に愛される番組をつくり続ける、という解釈でよろしいでしょうか?
石川:僕は文学青年でも映画青年でもなく、たまたま朝日放送(ABC)に入ることができて、「探偵!ナイトスクープ」のADになったことでエンターテインメントの世界に興味を持ち始めました。でも、その巡り合わせがあったから、今の僕があります。関西地区とはいえ、深夜帯にも関わらず視聴率を毎週20%取る番組でありながら、誰かを傷つけることなく、家族揃って見ることができるということは本当にすごいことだし、理想的だなと思います。また、番組がヒットすることによって、出演者もスタッフも充実感を得られるわけで…一つの番組がたくさんの人を幸せにできるというお手本が自分の出発点になっているので、その軸はずっとブレないと思います。だから、番組に笑いが欲しいというだけの理由で暴力的な描写や下ネタを盛り込むといったことは、僕の企画した番組ではやりません。もちろん、センセーショナルなバラエティ番組の存在を否定するものではありませんし、さまざまな表現があって然るべきだとは思っています。ただ、僕はあくまで家族で楽しめる番組という、自分の得意分野で勝負していきたいです。でも、ABCにいたころやフジテレビに移ってきてすぐのころは、若者から圧倒的に支持されている“フジテレビ流バラエティ”への強い憧れはありました。けれども、ずっとフジテレビでバラエティ番組を制作してきた先輩プロデューサーや後輩ディレクターと同じことをしても、勝ち目は無いなって思ったんです。あまりにもみんな優秀すぎて(笑)。フジテレビのバラエティ制作センターは制作環境が整っていて“日本一快適な制作現場”だと思いますが、先輩・後輩もみな有能なので“日本一競争の厳しい制作現場”でもあります。この環境でどうやって自分なりの番組で勝負するか考えた結果、出てきた答えは原点回帰でした。若い人に支持されるという“フジテレビ流バラエティ”を基本軸に、僕が学んできた“家族そろって視聴できる”というスパイスを効かせることによって、新しいものを提示できるのではないかというふうに、考えがシフトしていきました。家族そろって見られる番組というのは普遍ですので、最近は、その精神を継ぐ次代のディレクターやプロデューサーが僕の番組から育ってくれたらいいなという思いも抱いています。
テレコ!:そういったところを踏まえて、どんな番組を手掛けていきたいと考えていらっしゃるのか…思いをお聞かせください。
石川:この4月から新しく「奥の深道~同類くんの旅~」という旅バラエティを手掛けていますが、これも家族で見られるという基軸に沿ってつくっています。個人的には、「ペケポン」や「ほこ×たて」でタカアンドトシさんが新たなテレビ界の司会者というポジションを確立されたのに続いて、ブラックマヨネーズさんが司会者としてステップアップされることへのお手伝いを出来ればと思っています。視聴者も新たなTV司会者を待ち望んでいる空気はひしひしと感じていますので。あと、テレビ界には新しいスターが必要なのではないかとも考えていまして…。新しいスターの発掘につながればという思いもあり、12年ぶりにフジテレビでものまねトーナメントを復活させる「ものまね王座決定戦SP」(7月6日放送)を制作しました。新人のものまね芸人がベテラン芸人を倒す展開などもあり、ものまねというエンターテインメントでありながら人間ドキュメントの要素も楽しめる番組になっていると思います。舞台裏のドキュメントにも力を入れていますので、芸人さんの素顔を見せるVTRが芸人さんファンを獲得することにつながり、ひいては新しいスターを発掘するきっかけになればいいなと考えています。
Photo=中越春樹
Interview=平田真人
石川チーフ・プロデューサーが、どんな番組を見ているのか、録画しているのか、その気になる頭の中(ハードディスク)を拝見します!
フジテレビ系 毎週土曜 午後7:57~午後8:54
実はヒューマンな番組であるところが好きです。初期の人気シリーズ「ヨモギダくん」の受験編などは、涙なくして見られませんでした。あと、岡村(隆史)さんの「オファーシリーズ」もそうですが、バラエティというよりもドキュメンタリーですよね。そんなふうに、きちんと人間にスポットを当てているところが好きなのかもしれません。AD時代から僕の番組作りのお手本にしていた番組です。
日本テレビ系 毎週日曜 午後7:58~午後8:54
「進め!電波少年」もずっと見ていましたが、その流れを汲んでいるのが「~イッテQ!」だと思います。総合演出の古立善之さんが大学の先輩なんですが、「~電波少年」にはADで参加されていて…。イモトアヤコさんというスターを生み出したパワーもさることながら、日曜夜8時という放送枠で「~電波少年」のテイストを現代風にアレンジした演出力が、たまらなく好きです。
テレビ朝日系 毎週火曜 午後9:00~午後9:54
ABCにいた時、「志村&所の戦うお正月」という特番を担当していたのですが、当時はテレ朝の「ロンハー」チームとABCの「ナイトスクープ」チームが合同でつくっていました。そういう縁もあって、勝手にシンパシーを感じています(笑)。
日本テレビ系 毎週月~木曜 午後10:54~午後11:58/毎週金曜 午後11:58~深夜0:58
報道番組であれほどのパッケージ感があることが、すごいなと思います。嵐の櫻井翔さんをはじめ、キャスターに新しい人材を起用するという姿勢にも共感しますね。ブランディングもできていますし、視聴者の興味を引く世界観が確立されているところに、惹かれます。
これまでに数々の名勝負を生み出してきた当番組。
両者、一歩も譲らない白熱した戦いに興奮!
フジテレビ系 毎週日曜 午後7:00~午後7:58
故事成語の“矛盾”にちなみ、相反しているものを対決させるバラエティ番組。これまで、「絶対に穴が開かない金属vsどんな金属にも穴を開けられるドリル」「どんなものでも吹き飛ばす風力マシンvsどんな強風にでも耐えられる傘」など、数々の対決を展開。また、これらのほかに、「プロvsマニア」「11vs55」など別コーナーで行われる対決も見もの。番組の司会はタカアンドトシが務める。(7月1日、8日の放送は休止)
小学生時代から番組制作に携わるまで、石川チーフ・プロデューサーがこれまで歩んできた「テレビの歴史」を伺いました。バラエティやスポーツ、ドラマのほか、テレビマン人生の原点となったあの番組も登場します!
| 年代 | 見ていたテレビ番組 | その頃、私は… | 時代背景 |
|---|---|---|---|
| 1975年 | 石川綾一、誕生 |
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| 小学生時代 | 高校野球中継 (1957年~) |
生まれが大阪で育ちが徳島なんですが、僕が子どものころはちょうど池田高校(徳島県)とPL学園(大阪府)の全盛期だったんです。池田の蔦文也監督に水野雄仁投手、江上光治選手…そんなすごいメンバーを、1年生ながら破ったPLの桑田(真澄)・清原(和博)コンビの登場に、胸が躍ったことを思い出しますね。それこそ次から次へと新しいスターが出てくる状況に、ときめいていたのだと思います。 |
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| がんばれ!ベアーズ (1979~1980年) |
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| 中学~ 高校生時代 |
4時ですよーだ (1987~1989年) |
中学校で部活をやっていたので、雨が降って練習が休みになり家で「4時ですよーだ」を見るのが楽しみでした。ここでも、ダウンタウンさんという新しいスターが出てきたことに、ときめいていましたね(笑)。番組が終了して、ダウンタウンさんが東京に進出していく時はどことなく淋しさを感じましたが、全国ネットの番組で活躍する姿を誇らしく見ていたことを思い出します。 |
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| とんねるずのみなさんのおかげです (1986~1997年) |
世代的にとんねるずさんが僕らのスターなんです。ですので、「~みなさんのおかげです」をゴールデンタイムのレギュラーで始めるという時も、すごくテンションが上がりました。余談ですが、とんねるずさんが当時から石田弘さん(現フジテレビ、エグゼクティブプロデューサー)や港浩一さん(取締役バラエティ制作センター担当局長)を番組内でフィーチャーしていたこともあって、フジテレビに移ってきてお二方と対面した時、にわかに感動してしまいました(笑)。いまだに局内で会うと、なんかスターという感じで緊張します。 | ||
| 高校教師 (1993年) |
ドラマはそんなに見ていた方ではありませんでしたが、企画性の強いこの作品は好きでしたね。野島伸司さんの脚本は一歩間違えるとキワモノ的な展開になりますが、その境界線をうまく漂っている感じが強く印象に残っています。 | ||
| 大学生時代 | HEY!HEY!HEY! (1994年~) |
ダウンタウンさんが音楽番組を始めるということで、これは面白そうだと。福山雅治さんやMr.Childrenを招いてトークするというのは、フジテレビならではの華やかさだなぁという感想を学生ながらにして持ちましたね。 |
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| 朝日放送時代 | 探偵!ナイトスクープ (1988年~) |
ABCに入局してすぐにADを担当しました。毎週、視聴率20%を超え、誰からも愛されている番組。こんな素敵な番組はありませんよね。僕のテレビマン人生の原点です。一生感謝です! |
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| 力の限りゴーゴゴー!! (1999~2002年) |
「~ナイトスクープ」のAD時代に、「力の限りゴーゴゴー!!」やTBSの「学校へ行こう!」のような青春ロケバラエティを手掛けてみたいな、と思ってよく見ていました。番組づくりの手本として見ていたのが「めちゃイケ」なら、「力の限りゴーゴゴー!!」は憧れで見ていたというスタンスですね。 | ||
| フジテレビ入局 ~作り手として |
めざましテレビ (1994年~) とくダネ! (1999年~) |
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1975年徳島県出身。1998年朝日放送入社。「探偵!ナイトスクープ」のAD、ディレクターを担当。その後、2003年にフジテレビに転職。情報制作局に配属され、「めざましテレビ」「とくダネ!」のディレクターを務める。バラエティ制作センターに異動後、「ほこ×たて」「ペケポン」「奥の深道~同類くんの旅~」「HEY!HEY!HEY!」「フジテレビに出たい人TV」「ものまね王座・歌がうまい王座」「芸能界特技王決定戦TEPPEN」など数多くのバラエティ番組を手掛けている。現在、フジテレビの編成制作局バラエティ制作センターのチーフ・プロデューサー。