秘密保護法公布:森氏裁量に疑問符 制度設計の課題山積
毎日新聞 2013年12月14日 07時45分
国家機密の漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法が13日に公布され、政府は1年以内の施行に向けた作業を本格化させる。安倍晋三首相は同日の閣議で「施行準備は引き続き、森雅子特定秘密保護法担当相にお願いする」と表明した。ただ、秘密指定の検証方法をはじめ同法の課題は山積。先の臨時国会で答弁の不安定さを露呈した森氏が、具体的な制度設計で主体性を発揮できるかは未知数だ。【木下訓明】
菅義偉官房長官は13日の記者会見で「森氏を委員長として、情報の保護、監視の準備も含めてしっかり対応する体制を作っていきたい」と明らかにした。近く、杉田和博官房副長官、北村滋内閣情報官、関係省庁の事務次官級による「準備委員会」を設置し、委員長に森氏を起用する方針だ。
同委員会は法律施行後、秘密の指定や解除の妥当性をチェックする「保全監視委員会」(仮称)に移行する予定。閣僚をトップに置くことで「官僚が指定した秘密を官僚がチェックする」という批判をかわす狙いがあるとみられる。
ただ、森氏自身は13日の会見で、委員長就任には全く触れなかった。そればかりか、内閣官房に同日設置された施行準備室の室長に能化(のうけ)正樹内閣情報調査室次長を充てる人事について、森氏が「予定している」と説明したのに対し、事務方が「(既に)任命された」と助け舟を出す一幕も。内閣府の閣僚である森氏に同室長の人事権はないものの、準備作業を主体的に指揮するという点では、頼りなさは否めない。
同法成立後、報道各社の世論調査で内閣支持率は軒並み下がっており、菅氏は会見で「法律の趣旨を国民にしっかり説明し、理解を求めていく」と改めて強調した。この日、施行準備室では「看板かけ」などのセレモニーは一切なく、批判を避けるかのようにひっそりと滑り出した。ある官僚は「特定秘密という名前が悪い」とこぼした。