原発秘密指定:監査なし…第三者機関、未設置

毎日新聞 2013年12月12日 12時27分(最終更新 12月12日 13時34分)

 国と原子力事業者が決めた原発関連の秘密指定の妥当性をチェックする第三者機関が、原子力規制委員会発足に伴い廃止されたまま、1年3カ月近くたった今も新たな機関が設けられず放置されていることが分かった。原発関連の秘密が国と事業者の密室で決められ、チェック機能が働かない状況が続いている。特定秘密保護法で秘密指定のあり方が問題となる中、第三者機関に対する国の姿勢が問われそうだ。【関谷俊介】

 国際的なテロ脅威の高まりを受けた2005年の原子炉等規制法改正で、電力会社は原発の核物質に関する防護規定を設け、安全に関わる情報を「秘密」に指定することが義務付けられた。施設への攻撃や核物質の盗難を防ぐための設備、連絡体制、出入りの管理などの情報が対象。国は年1回の検査で適否を確認し、秘密情報は情報開示の対象外となる。事業者や行政職員が漏らした場合は1年以下の懲役や100万円以下の罰金が科される。

 一方、規制委事務局の原子力規制庁によると、当時の原子力安全・保安院は、法律の定めにない大学教授や弁護士による第三者機関「核物質防護秘密監査委員会」を設置した。これは国会審議で「国と事業者への白紙委任となり、何が秘密かも分からない」などと懸念されたためで、監査委は05年度以降、ほぼ毎年1回開かれ、必要以上に秘密が指定されていないかチェックしていた。

 しかし震災後の12年9月、保安院から規制委への移行に伴い、監査委も廃止され、新たな第三者機関のあり方は規制委に委ねられた状態で議論はストップ。このため12年度、保安院と規制委は計60の原子力関連施設で事業者の秘密指定を確認したが、第三者のチェックは受けていないという。秘密情報の件数も、規制庁は「数えていない」と明らかにしていない。

 監査委が過去に不適とした秘密指定はないが、最後に開かれた12年3月の会合では380件の秘密情報を審査したという。

 規制庁核物質防護室は「第三者のチェックの必要性は認識している。(内閣からの独立性が高い)規制委の検査でチェックは足り、第三者機関を設ける必要がないと判断される可能性もあるが、他の業務で手が回らず規制委で議論がなされていない」としている。

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