福島原発事故時:原子炉、冷却水足りず 他の配管に流れる

毎日新聞 2013年12月13日 20時55分(最終更新 12月13日 23時38分)

福島第1原発1〜3号機での消防車からの冷却水のルート
福島第1原発1〜3号機での消防車からの冷却水のルート

 東京電力は13日、福島第1原発事故の発生直後に、消防車による1〜3号機の原子炉を冷却するための注水は、弁を閉めなかったために他の配管に流れ込み、十分供給できなかったとの報告書を発表した。冷却の遅れが、事故の進展を早めた可能性はあるが、東電は、周辺の放射線量は高く弁を閉めるのは困難だったとしている。

 東日本大震災に伴う津波で、同原発は外部電源を失い、原子炉内では核燃料の出す熱で冷却用の水が蒸発した。緊急手段として原子炉建屋の外部にある配管に消防車のホースをつないで注水した。各号機には蒸発した水の5倍以上の毎時75トン以上が注水されていたとみられていたが、冷却は思うように進まず、炉心溶融(メルトダウン)が起きた。

 東電は2011年3月下旬、原子炉建屋に隣接するタービン建屋内の機器で大量のたまり水を発見。この機器から延びる「分岐配管」は原子炉建屋内で消防車で注水した配管とつながっていたほか、タービン建屋に注水していないのに水がたまっていることに着目し、配管図を確認した。

 その結果、1号機タービン建屋内の機器につながる分岐配管は10本、2、3号機では各4本あることが分かった。分岐配管には弁が取り付けられているが、いずれも機器に流れ込む「開」の状態だった。このため、東電は、消防車からの水は分岐配管を通じて機器に流れ込み、炉心に到達した水量が減少したと推計した。分岐配管に流れた水量は分析中という。

 弁が閉じられていれば想定通りの注水量を確保できた可能性はあるが、東電の姉川尚史常務は記者会見で「1号機の水素爆発(大震災翌日の3月12日に発生)で敷地内の放射線量が上がった。その後の消防車による注水は過酷事故の手順書になく、弁の開閉を操作することは難しかった」と説明した。柏崎刈羽原発(新潟県)では、この教訓を生かし、配管に電動弁を設置したという。

 一方、事故時の3号機原子炉内の水位や圧力のデータも詳細に解析。既設の冷却装置による注水が不十分な上に、消防車による注水も不足したため、炉心溶融の程度は従来の63%より大きく、圧力容器から格納容器に溶け落ちた燃料も増えると修正した。姉川常務は「仮に注水がうまくいっても、当時の状況から考えるとメルトダウンを止めるのは難しかった」とした。

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