■漫画家・里中満智子さん

 こんな形で与党が数の力で強引に法律を作ったのは近年まれにみる出来事でした。しかし、私たちが選んだ政府がやったことです。冷静になってこれからどうしていくかを考えていきたいと思います。

 短期的な課題は、秘密をチェックする第三者機関をどう作るかです。政府内に作る「身内」の第三者機関では絶対にダメ。秘密の指定が妥当だったかを将来検証できるよう、情報公開の仕組みを作ることも不可欠です。

 日本を取り巻く国際情勢の厳しさや警視庁の国際テロ情報の流出事件を見ていると、法律の必要性を訴える気持ちは分かります。何でもオープンにしろとも思いません。

 ただ、国民とのコンセンサス(合意)がどれだけとれていたでしょうか。しかも、できあがった法律は、何が秘密にあたるのか拡大解釈の余地があり、不当な逮捕につながる危険性がぬぐえません。

 私たちが、漫画の児童ポルノなどを規制しようとした東京都の青少年健全育成条例の改正案に反対したときのことです。利害のない一般の方々がどんどん声をあげてくれ、背中を押してくれました。冷静に耳を傾けてくれる政治家もいて、私たちの意見を聞く場を設けてくれました。

 政府は民の声を完全に無視はできません。法律の賛否をめぐり「許す」「許さない」と感情をぶつけ合うのではなく、どうすれば乱用を防げるか、具体的な運用のあり方を一緒に考えていきませんか。