【香取啓介】熊本県の蒲島郁夫知事は12日、環境省を訪れて谷津龍太郎事務次官と面会し、水俣病の認定基準に関し、国の公害健康被害補償不服審査会が示した認定のあり方と考え方を統一するよう求めた。

 蒲島知事は、同省の現在の基準に従って県が水俣病と認めなかった男性について、国の不服審査会が10月、認定すべきだとして県の処分を取り消す逆転裁決を出したことに触れ、「国として二つの違った判断をされた。認定基準に従って県として責任ある認定業務を続けることは大変難しくなった。認定業務を返上する覚悟で国の考え方を確認したい」と述べた。

 蒲島知事によると、谷津事務次官は「真摯(しんし)に取り組むべきことと思う」と答えたが、新たな考え方を示す時期には言及しなかったという。

 現在の水俣病の認定基準は、申請者に複数の症状があることを事実上の条件としている。しかし最高裁は今年4月、手足の感覚障害だけでも総合的に検討して認定できるとする判決を出した。判決を受け、国と県が認定基準の運用を協議している中で不服審査会の逆転裁決が出た。