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消防団兼務、宮城最下位 震災経験「両立に疑問」
 | 消防団員を兼職する宮城県内の自治体職員の割合 |
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宮城県は、消防団に入団している自治体職員が極端に少なく、団員に占める割合は47都道府県の中で最も低い。消防団員全体のうち、団員を兼職する県と市町村の職員は4月1日現在で1.0%にとどまる。国は南海トラフ巨大地震などに備えて自治体職員に消防団入りを強く促すが、東日本大震災を経験した各自治体は「大規模災害時に職員の業務と消防団活動を両立できるのか」と疑問視している。(亀山貴裕)
<10町村はゼロ>
消防庁によると、団員を兼職する都道府県・市町村職員は全国で約6万人(12年4月現在)。約87万人に上る団員全体の6.9%に達する。
宮城県内ではことし4月現在、35市町村の各消防団に2万720人の団員がおり、うち兼職者は209人にすぎず、団員数でも全国最低だ。
消防団員を兼職する県内の自治体職員の割合は表の通り。七ケ宿、色麻両町を除き全国平均を下回り、10市町は兼職者ゼロ。その一つ、気仙沼市は「市内の団員充足率は9割を超え、市職員らに入団を促すほどの緊急性はない」と語る。
「震災クラスの大規模災害が起きれば、職員は被災者対応や復旧事業に追われる」と話すのは石巻市の担当者。
岩手・宮城内陸地震を経験した栗原市も兼職者の割合は0.2%と低い。担当者は「一般の火災ならともかく、行政の業務に当たりつつ団員としても住民の期待に応えられる職員は少ないだろう」と懐疑的だ。
<待遇再検討も>
公務員は兼職が制限され、消防団活動の正当な対価を受け取りづらいことから積極的に勧誘しなかった市町村もある。
これまで県は県職員の兼職者には、報酬や勤務時間内の出動手当を受け取らないよう指導してきた。岩沼市は「県職員が受け取らない報酬を、市職員に出していいか独自には判断がつかなかった」と明かす。
減少傾向にある消防団員確保のため、地域防災力充実強化法が5日、参院本会議で可決、成立した。強化法はこれまで自治体の裁量に委ねてきた職員の入団を、職務に支障がない限り認めるよう義務付けた。
宮城県は「法律を踏まえた国の対応を見極め、県としての見解を出す」(消防課)と言う。各自治体も今後、兼職者の待遇などについて再検討を迫られる見通しだ。
消防団のあり方を考える国の検討会議でワーキングチームのメンバー後藤一蔵東北福祉大兼任講師(地域防災)は「自治体職員の兼職は加重負担につながりかねない。部署によっては、大規模災害時は消防団活動をさせないなどの配慮が必要だ」とみる。
さらに「兼職は一時的な数合わせで、団員不足の根本解決にはつながらない。個々の団員の実践的な技術習得により力を注ぐ必要がある」と指摘した。
[消防団]消防本部や消防署と同様、消防組織法に基づき各市町村に設置される。消防団員は特別職の非常勤地方公務員で、条例で定められた年間報酬などが支給される。団員の多くは別の仕事を持ち、火災や災害時に自宅や職場から現場に駆け付ける。公務員は所属長の許可があれば入団できる。
被災地で行方不明者を捜索する消防団員ら。大規模災害時に行政職員の公務と消防団活動がぶつかりかねない=2011年3月、仙台市若林区
2013年12月15日日曜日
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