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【福井】小浜藩士「上沼田下沼田沼田」 日本最長の名字?◆漢字研究者が謎追う
日本一長い名字は、幕末の小浜藩士「上沼田下沼田沼田」さんだった?−こんな昭和初期の情報が事実なのか、漢字研究者の笹原宏之・早稲田大社会科学総合学術院教授(48)=東京都杉並区在住=が調査に乗りだした。「小浜市に子孫がいるかもしれない」と、地元からの情報に期待を寄せている。 この名字が記録されているのは、姓名研究の大家、荒木良造がまとめた一九二九(昭和四)年発行『姓名の研究』の中の「奇姓珍名集」。 「長い姓名」の項目に「上沼田下沼田沼田 又一又右衛門」とあり、「若狭小浜の藩士で明治へかけて居られた方である。沼田までが姓で又一からが名である。明治になってから余り長いので沼田又一と改名された」との説明が添えられている。 読み方は「かみぬまたしもぬまたぬまた またいちまたうえもん」だと考えられる。姓名の世界では誤伝も多いため、笹原教授は学生時代にこの本を読んで以来「確証を得たい」と考えていた。 教授は漢字研究者として国の常用漢字、人名用漢字、JIS漢字の改定に携わった。大修館書店のインターネットサイトの「WEB国語教室」で世界の名字と名前にまつわる連載も担当する。 長い名字で知られるのは、教え子にもいた「勘解由小路(かでのこうじ)」や、廃姓になった「正親町三条(おおぎまちさんじょう)」など。上沼田〜の名字を笹原教授は「実在したなら、現代につながる江戸時代以降の名字では最長だろう」とみる。 今年、県の白川静漢字教育賞の選考委員になったのを機に、笹原教授は積年の疑問を解決しようと、若狭歴史民俗資料館に調査を依頼した。学芸員の有馬香織さん(39)は小浜藩の資料を調べ、安永三(一七七四)年の家臣団の由来書で、もともと「沼田」で三代目以降「下沼田」になった藩士の存在を突き止めた。 載っていたこの家系の六人のうち三人の名前の中に「又市(またいち)」が入りこんでいることから、笹原教授は「この下沼田さんが幕末までの百年ほどでさらに改名して上沼田下沼田沼田になったか、これらの人名が交ざって誤伝されたか、どちらかだろう」と推測する。 笹原教授は「それにしても、なぜ姓名でここまで『ぬまた』『また』を繰り返す必要があったのか」と首をひねり、安永三年の由来書から幕末までの「間を埋める古文書が見つかれば面白い」と期待している。 情報は、県生涯学習・文化財課=電0776(20)0559=へ。 (林朋実) PR情報
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