北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党第1書記が、義理の叔父に当たる張成沢(チャン・ソンテク)元国防委員会副委員長を処刑するという血の大粛清を始めたことに伴い、北朝鮮で事態が急変する恐れが高まっている。当面は金正恩第1書記の恐怖政治によって、表面的に安定した姿を見せることもあり得るが、中・長期的には政権基盤が弱体化し、事態急変を招く可能性が高まっている。
■事態急変の可能性、短期的には低い
専門家らはおおむね「短期的には、事態急変の可能性は低い」という見方を示した。韓国の北韓大学院大学の梁茂進(ヤン・ムジン)教授は「北朝鮮が張成沢事件を『速戦即決』で処理したのは、それだけ金正恩体制が安定していないという側面もあるだろうが、逆に金正恩第1書記の権力掌握力が強いことも示した。短期的には、事態が急変する可能性は極めて低いと思う」と語った。西江大学の金英秀(キム・ヨンス)教授も「今後は、事態の急変よりもエリートの交代が頻繁に行われ、忠誠競争が起きるだろう」と語った。
しかし、中・長期的には金正恩第1書記に対する忠誠心が弱まり、政権基盤の弱体化につながる可能性が高い、という分析もある。北朝鮮向けラジオ放送を行う脱北者団体「北韓改革放送」のキム・スンチョル代表は「きょう発表された張成沢氏に対する判決文の内容は、北朝鮮の全ての党・軍幹部に該当し得るため、多くの幹部が不安を感じ、金正恩第1書記に背を向けるだろう」と語った。また、韓国政府の当局者は「金正恩第1書記は今、墓穴を掘っている。張成沢氏の粛清と処刑は、中・長期的な金正恩政権崩壊が始まったことを告げる序曲」と語った。韓東大学のパク・ウォンゴン教授は「北朝鮮が今回、張成沢氏を『派党』と呼んだのは、唯一統治体制に反対する勢力が存在することを自ら認めたようなもの。北朝鮮の事態急変は一層速まることもあり得る」と語った。