展示情報
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佐賀ノ異端児、日本ヲ動カス
18世紀後半、医学書『解体新書』の翻訳という偉業が達成されました。それ以来、医師を中心に蘭学(オランダ語文献=「蘭書」による近代ヨーロッパの科学・学問)が普及し、文化8年(1811)に江戸幕府は蘭学を公認。さらに外国船の長崎来航事件の続発をうけ、九州諸藩の大名が蘭学を積極的に受容しました。名君として知られる佐賀藩主鍋島直正(なべしまなおまさ)(1814〜71)もその一人ですが、実は直正に先駆けて蘭学を奨励した”異端児”が佐賀藩内にいたのです。
その名は鍋島茂義(なべしましげよし)(1800〜62)。藩主直正の義兄で、武雄領の支配を委任された人物です。天保年間(1830〜45)に佐賀本藩・他藩に先駆けて蘭学を奨励し、みずから植物学を実践しただけでなく、武雄領内の近代化事業を推進しました。理化学工業を創業したほか、みずから西洋砲術家高島秋帆(たかしましゅうはん)に入門し、砲術研究と洋式調練を実施。こうした武雄蘭学の発展は、佐賀本藩の近代化事業に影響をおよぼし、戊辰戦争(1868)では、茂義の遺産ともいうべき武雄領の近代式軍隊が明治新政府に高く評価されました。
本展覧会は、九州国立博物館と武雄市教育委員会の共同で開催するもので、武雄市図書館・歴史資料館が所蔵する武雄鍋島家伝来の蘭学資料の数々を一挙公開し、鍋島茂義が主導した武雄蘭学の軌跡をたどります。
エレキテル 江戸時代・19世紀 エレキテルは、摩擦で静電気を発生させる装置です。 ガラス製の円板を使用するのはオランダ式エレキテルの特徴で、有名な平賀源内のエレキテルよりも強力な起電能力をもっています。 本品は、嘉永6年(1853)頃、長崎の蘭学者上野俊之丞(写真家として有名な上野彦馬の父)が、オランダ製のガラス円板を利用して製作したものと考えられます。 |
武雄市重要文化財 モルチール砲 江戸時代・天保6年(1835) モルチール砲は、近代西洋式大砲の一種で、重い砲弾を放物線状に発射して城郭などを破壊するために使用されました。 本品は、天保6年(1835)、長崎の西洋砲術家高島秋帆がオランダ製のモルチール砲を手本に日本で初めて製造に成功し、門弟の鍋島茂義に譲渡したものです。砲身に付された銀製の意匠は、武雄鍋島家の家紋(抱銀杏紋)です。 |
関連講演会「武雄蘭学の世界」
鈴木一義氏(国立科学博物館科学技術史研究グループ長)
岡部幹彦氏(文化庁主任文化財調査官)
川副義敦氏(武雄市図書館・歴史資料館学芸員)
ミュージアムトーク
15:00〜(30分程度)
関連ミュージアム講座