北朝鮮「ナンバー２」張成沢氏処刑　全役職解任４日で

２０１２年２月、軍事パレードを観閲した張成沢氏（左）。右は退席する金正恩氏（共同）

　北朝鮮の治安機関、国家安全保衛部は１２日、「ナンバー２」として権勢を誇った張成沢（チャン・ソンテク）元国防副委員長（６７）に対して特別軍事裁判で死刑判決を下し、張氏はただちに処刑された。朝鮮中央通信が１３日、伝えた。８日の全役職解任からわずか４日後の執行。北朝鮮が軍事裁判の実施や死刑執行を公にするのは極めて異例だ。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」電子版は、金正恩（キム・ジョンウン）第１書記の叔父に当たる張氏を「犬にも劣る醜悪な人間のくず」とこき下ろした。

　最高指導者・正恩氏の後見人だった張氏が、あっさりと処刑された。金正日総書記の死去から１７日で２年となるのを前に、実力者とされた張氏の影響力を消し去り、体制強化を図ったとみられる。

　労働新聞は「公告」として処刑を公表。１面で張氏を「犬にも劣る醜悪な人間のくず。張成沢は天人共に激怒する反逆行為を敢行した」と断罪。２面には軍事法廷とみられる場で２人の兵士に抱えられてうなだれる張氏の写真を掲載した。

　北朝鮮での粛清は珍しくないが、公表は異例。国営メディアを通じた「公告」は１９５５年以来５８年ぶりとみられる。国内外に張氏の処刑を知らしめたいとの思いが強いようだ。

　朝鮮中央通信によると、張氏は自ら政権を担う野心を抱き、２０１１年１２月、金総書記死去を契機に工作を本格化。側近グループを要職に引き入れ、自ら「神聖不可侵な存在」として君臨した。軍にも働きかけ、最終的に金第１書記を排除し、国を乗っ取ることをたくらんだとされている。同通信は、張氏が審理で「クーデター」画策を認めたとした。

　張氏はその過程で、経済運営や貿易・外資導入の実権を手中に収め、国民生活を破綻に追い込むことで国を混乱させようと計画。首都平壌の都市開発を妨害したり、地下資源の不適当な売却を強行したりしたほか、北東部の経済特区、羅先で土地を海外の提携先に長期貸与したことも「売国行為」とされた。

　さらに、０９年のデノミネーション（通貨呼称単位の変更）実施をめぐる混乱と好転しない経済の責任を張氏に負わせたほか、私生活の乱れも問題視された。

　張氏については８日、自ら派閥をつくる「分派」活動など「反党・反革命的行為」を理由に、党が全役職からの解任と党からの除名を決定。複数の女性との不適切な関係や麻薬の使用、高級レストランでの飲食など「資本主義に染まり不正腐敗行為を行った」とも指摘されていた。今後、張氏周辺に対する粛清は厳しくなると予想される。

　韓国与党セヌリ党の徐相箕国会情報委員長は、情報機関、国家情報院の報告を受けて「最近処刑された張氏の側近２人が機関銃で射殺された」ことから、張氏の死刑も「同じ方法で行われたと推定される」と述べた。

（2013年12月14日06時03分スポーツ報知）