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性別変更の夫婦の子で初判断
12月11日 17時54分

性別変更の夫婦の子で初判断
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第三者から精子の提供を受けて産まれた子どもについて、「性同一性障害」で戸籍の性別を変えた夫が自分の子と認めるよう訴えたのに対し、最高裁判所は「血縁関係がなくても父親と認めるべきだ」という初めての判断を示して訴えを認める決定を出しました。
家族の形が多様化するなかで、決定は生殖補助医療を巡る国の法整備の議論にも影響を与えそうです。

兵庫県の31歳の男性は、女性として生まれましたが、心と体の性が一致しない「性同一性障害」と診断され、5年前に戸籍の性別を男性に変えました。
その後結婚し、妻が第三者から精子の提供を受けて長男を産みましたが、法律上の子どもである「嫡出子」と認められなかったため、裁判所に訴えていました。
最高裁判所第3小法廷の大谷剛彦裁判長は、「現在は性別を変えることができるようになったうえ、性別変更後に結婚することも認められている。結婚できる以上、血縁関係がなくても子どもの父親と認めるべきだ」という初めての判断を示し、「嫡出子」と認める決定を出しました。
一方で、5人の裁判官のうち2人は、「制度上は結婚できても遺伝的には子どもを作ることができず父親と認めることはできない」などとする反対意見を述べています。
「性同一性障害」の夫婦の子どもについては、法務省の見解に従ってこれまで「嫡出子」と認められてきませんでしたが、決定によって国は今後、対応の見直しを求められることになります。
また、生殖補助医療の技術が進み家族の形が多様化するなかで、人工授精などについて、法律の整備を求める意見は国の審議会でも上がっており、最高裁の決定は今後の国の議論にも影響を与えそうです。

裁判官も意見別れる

今回の決定には5人の裁判官のうち2人が反対していて、最高裁の裁判官の中でも「結婚しているかどうか」と「血縁関係」のどちらをより重視するかで意見が分かれる結果となりました。
このうち嫡出子と認める立場の寺田逸郎裁判官は、「結婚制度は夫婦の関係を認めただけでなく子どもを嫡出子と認めることと強く結びついている。性別を変更して結婚を認めた以上は、血縁がなくても嫡出子とする可能性を排除していない」と述べています。
これに対して反対意見を述べた岡部喜代子裁判官は、「嫡出子とは本来、夫婦の間にできた子どものことだ。制度上は結婚できても遺伝的に子どもを作ることができなければ父親と認めることはできない」と述べ、血縁関係を重視するべきだという考えを示しました。
また大谷剛彦裁判官は、「親子関係をどういった場合に認めるかは、本来、立法によって解決されるべきだ」と指摘し、国に法律の整備を求める意見を述べています。

家族に対する法整備を急ぐべき

最高裁の決定について、家族に関する法律に詳しい早稲田大学大学院法務研究科の榊原富士子教授は、「生殖補助医療の進歩で家族の形が多様化しているのに法律の整備が追いついていない。国は家族に対する法律の整備に慎重になっているが、法整備を急ぐべきだ。今回の決定はその後押しになるのではないか」と話しています。

現状と今後の対応は

「性同一性障害」を巡っては、9年前から性別の変更や結婚ができるようになりましたが、子どもについてはこれまで法的な夫婦の子である「嫡出子」とは認められてきませんでした。
心と体の性が一致しない「性同一性障害」の人については新たに法律が整備され、平成16年から性別を変更できるようになり、この結果、結婚もできるようになりました。
最高裁によりますと、平成16年から去年までに「性同一性障害」のために性別を変更した人は合わせて3500人余りに上っています。
また、法務省によりますと、性別変更した男性と結婚した妻が産んだ子どもの出生届はこれまでに39件出されているということです。
しかし、戸籍には性別を変更したことが記録されているため「夫との間に血縁関係がないことは明らかだ」とする法務省の見解に従って、これまで「嫡出子」とは認められてきませんでした。
今回、訴えを起こした男性の場合も父親とは認められず、これまで戸籍上、子どもの父親の欄は空欄になっています。
また、3年前には当時の法務大臣がこうしたケースを「嫡出子」と認めるかどうか検討する考えを示しましたが議論は進みませんでした。
しかし、今回、最高裁が男性を父親と認め「嫡出子」としたことで、国は今後、対応の見直しを求められることになります。

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