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<インタビュー>逆風はねのけ韓国で「堂島ロール」大人気 金美花社長

【ソウル聯合ニュース】ソウルの高級住宅地、江南地区の百貨店で、大阪生まれのロールケーキ「堂島ロール」を買い求める客の列が途切れることがない。

 洋菓子を製造・販売する「モンシェール」(大阪市)が8月末に現代百貨店狎鴎亭本店と新世界百貨店江南店に出店してから約3カ月。1本1万8000ウォン(約1700円)の堂島ロールは1日に製造される1000本以上が閉店を待たずに完売する。

 金美花社長(41)は予想を上回る売れ行きに「期待に応えなければと緊張しています」と表情を引き締める。

 福島第1原発事故により日本の食品に対する放射能汚染の懸念が根強い上、日本と政治的な対立が続いている韓国への出店に、同業者からは懸念の声が上がっていた。

金美花社長=(聯合ニュース)

 生地にたっぷりと巻き込まれた、甘さ控えめで軽い口当たりの新鮮な生クリームは北海道産を使用している。特に生クリームの安全性について客から質問を受けることがある。だが、店舗に設置している韓国の輸入畜産物に関する検査の合格証を見せながら説明すると納得して購入していくという。

 百貨店側の宣伝以外、同社自体は一切宣伝活動をしていない。実は出店前から韓国で堂島ロールは知られた存在だった。日本を旅行した韓国人の間で、口コミで人気が広がっており、大阪の本社には毎日必ず韓国人旅行者が訪れるという。

 韓国出店も5社以上から相次ぎオファーを受けたのがきっかけだった。日本全国に27店、中国・上海に4店と香港にも展開しているが、全てオファーを受けた中から厳選して出店しており、営業は一切していないという。金社長は「大事なのは出店してくださいと頼まれるようなお店の状態を日々つくること。お店が最高のショールームです」と笑顔を見せる。

 先に進出した上海では、東日本大震災が発生し売り上げが一時70%も低下。その後も領土問題をめぐり反日感情が高まるなど苦労が続いたことを受け「メード・イン・ジャパン」を前面に出すことをやめた。「どこの国のものかが重要なのではない。自分たち自身がブランドになることが大事なんだと気付きました」と語る。

 堂島ロールの賞味期限は約1日。新鮮な素材を生かし、添加物を使っていないため、一定の味を維持するのに細心の注意が必要だ。金社長は現地に工場を作って職人を育成し、製造・販売することにこだわる。日持ちのする商品を空輸して販売のみするメーカーは多いが「それでは近いうちに頭打ちになる。現地のお客様のニーズに合った独自のブランドを確立したいのです」と力を込める。

にぎわう新世界百貨店江南店の店舗で接客する金社長(左端)=(聯合ニュース)

 金社長は在日韓国人3世。韓国語を話せない在日も少なくないが、厳しい両親のもと幼い頃から韓国語や韓国文化を学んできた。それが今の両国をつなぐ仕事につながっていると実感し、一層やりがいを感じている。「韓国店の話をしているときが一番うれしそうな顔になると言われます」

 来年初めには人気ショップが立ち並ぶソウル・新沙洞の街路樹通り(カロスキル)近くにカフェ併設の韓国本店をオープンする。堂島ロール以外にもカットケーキの種類を増やすなど、「総合パティスリー」を目指す。

 日本に比べ韓国の洋菓子の値段は高いが、同社の値段設定は「ぎりぎり」に抑えている。「生活の中でケーキが身近な存在になってほしい。韓国の洋菓子業界の活性化に尽くしたいです」

(斎藤寿美子)

ikasumi@yna.co.kr