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防空識別圏、中国が犯した計算違い

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2013/12/13 7:00
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■過剰反応による失策だった可能性

 最も影響が大きいのが第3の点だ。中国は、鄧小平氏が35年前に採用した「戦略的忍耐」「韜光養晦(能力を隠して力を蓄える)」政策を維持してきた。力を振りかざす前に国内の経済発展に集中しようという意味だ。しかし、東シナ海に浮かぶ小さな島々に対する領有権にこだわる中国の主張は、この政策を台無しにするものだ。

 だが中国は今、以前にも増して安定した国際環境を必要としているはずだ。というのも11月上旬に開催した中国共産党中央委員会の全体会議(3中全会)で、野心的でリスクの高い一連の経済改革を目標に掲げたからだ。

 こうして見ると、中国の防空識別圏の宣言は、領空を侵犯した無人機を撃墜するとした日本の発言に対し、熟慮せずに過剰反応した失策であった可能性も考えられる。中国の外交政策は、内部の調整が取れていないように見えることが時折ある。ナショナリズムを主張した結果がどうなるかという部分について、奇妙に鈍感なのだ。

 だが今回の場合、共産党と政府の関係部門がすべて関わっていることは確かだ。3中全会でも、習主席は、内外の脅威への対応を管轄する国家安全委員会の新設を発表するなど、政策決定の権限を掌握しているように見えた。

 だとしても、中国はどこかで計算違いをしたかもしれない。防空識別圏に韓国が主張する領空を含めたこと。中国本土に近づいてくる航空機にとどまらず、ただ防空識別圏を通過するだけの航空機にも規制をかけたこと。そして、そもそもこのような空域の設定に強制力を持たせられると考えたことは、ミスだったかもしれない。

 それでも、防空識別圏の設定が、東シナ海の島々に対する中国の長期的戦略と密接に関わっていることは間違いない。

 日本政府が2012年9月に尖閣諸島の3つの島を「国有化(民間の所有者から買い取った)」して以来、中国は周辺の海域・空域への侵入活動を一段と強化してきた。中国は数十年前からこれらの島々に対する日本の主権(領有権)に異議を申し立てている。ここへきて日本の施政権を弱体化させようとしているわけで、中国にとって防空識別圏の設定はその延長線上にある。

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