(2013年11月30日付 英エコノミスト誌)
中国による防空識別圏の設定は、これまでの中国の外交政策の原則に反している。英エコノミスト誌は、一連の狙いは日米同盟に伴う米国の負担コストを高めることにあると見る。日中の緊張感を高めれば、米国が日本に折れるよう説得することを中国は期待している、と。
世界の舞台に新たな大国が台頭する時、戦争になることが多かった。中国の指導者は、そのことを強く意識している。だからこそ、「平和的発展」を遂げるための計画を重視している。
ただ、その表し方が奇妙なことがよくある。11月23日に中国政府が宣言した東シナ海の防空識別圏(ADIZ)の設定は一例だ。この防空識別圏は、中国が日本に対して領有権を主張している尖閣諸島(中国名:釣魚島)の上空を含む。
こんな行為は、近隣諸国の警戒を呼び覚まさずにはおかないし、現在の超大国、米国との関係も緊張させてしまう。そこで浮上してくるのが、中国は本当に平和の維持を優先しているのかという疑問だ。あるいは中国はあつれきを生まずに台頭していく術を持ち合わせているのか、というべきかもしれない。
■対米関係を危険にさらす
今回の防空識別圏の設定は、少なくとも3つの点で、中国が明らかにしてきた外交政策の方針に反しているように見える。
第1に、中国は米国とは「大国同士の新しい関係」を築きたいと主張してきた。しかし中国が、世界のほかの地域では既に冷戦時代の遺物となっている防空識別圏を引っ張り出してきた以上、米国がこれに対して軍事力の誇示という古くさい対応に出ることは、ほぼ避けられなかった。
米国は、尖閣諸島の領有権に関してはどちらの立場にも与しないとしているが、防空識別圏の設定を受け、即座に、尖閣諸島は日米安全保障条約の適用対象であると改めて明言した。
さらに米国は時を待たず、手続きを経ずに防空識別圏に進入した航空機に対しては何らかの措置を取るという中国の脅迫的文言を確かめる行動に出た。11月26日、米軍グアム基地所属のB52爆撃機2機に、中国への事前通告なしで新たな防空識別圏内を飛行させたのだ。
東シナ海の海域には、日本が攻撃された場合を想定した日米合同軍事演習のために、米軍の空母艦隊が既に展開していた。
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