:2013/12/14 (土) 08:45
今週も概ね流れに変化は無く、円安の動きは続いており、また、ユーロ買いも続いている。
ドル円は週末に年初来高値を更新し、一時103.90付近まで上昇した。根強い円売りの他に、今週発表になった米経済指標が好調だったこともサポートしている。10ー12月の米GDPは弱いのではとの見方が優勢となっているが、意外に良いのではとの期待感も高める内容ではあった。
一方、ユーロ買いも続いている。ファンダメンタルズからの追い風は無い状況とは思われるものの、ECBによる追加緩和も早期には無いとの見方が支援している他、年末に向けての資金需要ひっ迫感から、ユーロの短期金利上昇が続いており、ユーロをサポートしている。
短期金利が上昇している背景として来年にECBが実施するストレステストに向けた欧州銀からの需要が考えられる。ストレステストのスケジュールは、2014年第1四半期までに資産査定を終了し、第2四半期からテストを開始する。その資産査定の対象は今年12月31日時点のバランスシートとなっており、それに向けて欧州銀が手元資金を確保しておこうという動きが広がっているものと見られる。ECBが前回実施したLTROの早期返済が進む中、過剰流動性は低下しており、ドルやポンドの資産を一旦売って、ユーロを早めに手当てしようという動きがユーロを支えているものと思われる。
さて来週だが、何といっても今年最後のFOMCが最注目となろう。QE縮小開始を決める可能性は皆無とは言えない。先週の米雇用統計はもちろんのこと、今週発表になっていた米経済指標の好調さはその可能性を裏づける内容ではある。
ただ、いずれ縮小は開始するだろうが、来週というタイミングが適当なのかという問題もあるように考える。
FRBはこれ以上のバランスシート拡大は、得られる利益よりもリスクのほうが大きいと考えており、QEは早期に終了したいと考えているものと見られる。ただ、景気回復にまだ確信を持てないことから、長期金利は上昇させたくないというのが本音だろう。その場合、やはりQE縮小に伴う影響を軽減させるための施策が必要となろう。超過準備預金金利の引き下げなどが考えられるが、抵抗も多いようで、可能性としては、失業率基準の6.5%から6.0%への引き下げなどフォワードガイダンスの変更が最有力と思われる。ただ、現段階で、その辺の協議にコンセンサスを見出せているとも思われず、もう少し時間が必要なのではとも想像する。開始したとしてもどの程度縮小するのかとう問題もある。
よって、来週のFOMCでのQE縮小開始は皆無ではないが、可能性としては30%程度と見る。
その他、来週は上院でイエレン副議長の新議長就任への承認採決を実施の公算と伝わっており、18日以降になりそうだ。18日はFOMC結果発表日でもある。
余談だが、今週、バーナンキ議長が、イエレン氏の承認後、任期を待たずに辞任するとの怪情報が出回っていた。次の政策変更は出口戦略の方向に新しく舵を切る変更となる。バーナンキ議長からすれば、去る者あとを濁さずではないが、新たな局面は新議長のもとで開始するのがよいと思っても不思議はないだろう。そのタイミングが1月と考えれば、あながち可能性が無い話でもない。そういった意味でも来週のQE縮小は無いのかもしれない。
声明やバーナンキ議長の会見次第だが、もし、QE縮小の発表がなければ、株高・円安・ユーロ高という流れで変化はないものと思われる。
(Klugシニアアナリスト 野沢卓美)
()は前週
◆ドル円(USD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑)
◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑)
◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑(↑↑)
◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 →(→)
◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑(↑↑)
◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑(↑)
【概要】
幾つかのシグナルを合成し、各通貨ペアの中期と短期のトレンドを示しています。中期は先週末からのトレンドの変化を言葉で説明。短期は矢印でトレンドを表記、矢印の本数は強さを示します。強ければ最大3本の矢印が表示されます。期間は中期が2ヵ月程度、短期は2週間程度の傾向です。